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第三章 イナズマ組
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しおりを挟む空にUFOが飛んでいるとでも言って、永戸の気を逸らしてその間に逃げるか? この高速化け物男を相手にそれじゃ駄目だ。きっと、直ぐに捕まるよ。
それに、怒らせたら何をされるか分からないし……それなら、僕は一体、どうしたらいいんだよー。うあーーーーっ!
永戸から逃れる方法を真剣に考えている飛華流を、永戸はひょいっと担ぎ上げる。
「……ほら、行くぞ」
「わあっ……あ、あの……どこへ?」
飛華流に返事せず、永戸は前へ少し歩いていくと、彼を放り投げた。地面へ尻もちをつく事を覚悟した飛華流だったが、そうはならず、何かの上へ乗っかった。
えっ、どうして? 近くに座れる様な物なんて、何も無かったはずなのに……って事は、僕は宙に浮いているのか?
飛華流が、強くつぶっていた両目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。見慣れないおかしな物体が存在し、飛華流はその上に乗っている。
な、何だこれ……でっかい生き物だな。そう思った飛華流だが、二輪のタイヤが付いている事から、それが生物ではないと分かる。
「うっ、うわーーーーっ! な、何っ! う、動いてる……お、お化けー?」
骸骨馬のバイクを目にし、飛華流は絶叫した。
「驚かせて悪い。こいつは、スケルトンホースバイク。俺のバイクだ」
「あ、あの……すみません。どう見ても、バイクには見えないんですけど……本当にそれはバイクですか? 急に出てきたし、やっぱりお化けなんじゃ……」
「バイクはバイクでも、これは魔女から貰った魔法のバイクだ。……こうやって呼べば、どこに居たって直ぐ来てくれる」
バイクにまたがり、永戸は飛華流に軽く説明した。
「魔女って……エミナーさんの事ですよね?」
「……振り落とされねーように、しっかり俺に掴まってろよ」
永戸の指示通り、飛華流は彼にギュッとくっついた。
「ヒッヒィーーーーンッ!」
馬の様な鳴き声を元気よく上げ、バイクが急発進する。あまりにも凄まじい速さに、飛華流は永戸を握る手に自然と力を入れた。
車や電車等とは比べ物にならないくらいの速度で、二人を乗せたバイクは凍える雪道を駆け抜けていく。
は、速い……速すぎるっ! 下手したら、新幹線……いや、それ以上の速度が出ているかもしれない。こんなスピードで事故でも起こしたら、僕らも被害者もあの世行き確定だぞおいっ!
そうやって怯えている飛華流に、容赦なくピンチが襲い掛かる。前方から、ベビーカーを引いた若い女性が現れた。
「うわあっ! ひ、人が居ますよ。止まって下さーいっ!」
危険な状況だと判断した飛華流は、急いで永戸に伝えた。しかし、永戸はブレーキをかける事なく、猛スピードで女性の方へとバイクを走らせていく。
こんな気味の悪いゴーストバイクが接近してきているというのに、女性はその存在に全く気づいていない様だ。
自分らを避けようとせず、のんびりと前進してくる女性に飛華流は違和感を抱いた。こっちに見向きもしないなんて、どう考えても不自然だろ。
まさか、この女の人……体のどこかが不自由なんじゃ?
このままでは、赤ん坊と女性をバイクではねてしまう。考える間も無いくらい一瞬で、子連れの女性と彼らの距離が縮まった。
恐怖で目を閉じ、飛華流は思う。初めから、永戸は二人をひき殺すつもりだったんだよきっと……そうだだってこいつは、凶悪集団イナズマ組のメンバーなんだから。
こんないい加減な人間の身勝手で、罪の無い人達の幸せが壊されていい訳が無いだろっ!
永戸に対し、怒りを感じる飛華流に成す術は無い。自分の無力さに耐えながら、飛華流は叫び声を上げる。
「うわぁーーーーっ! おい、ブレーーキッ! くっそ……止まれよ止まれってーーーーーーっ!」
「三島永戸……」
「あっ?」
「人の命を……何だと思ってるんだ」
「さっきから、うるせぇなお前……」
永戸にそう言われ、飛華流は我に返る。気づけば、飛華流は心の中の言葉を口にしてしまっていたのだ。
し、しまった……まったく、僕は何をやらかしちゃってるんだよ。無意識のうちに、永戸に向かってあんな事言っちゃうなんてさ。
自分の発言を深く後悔する飛華流だったが、ある事に気づく。いつになっても、あの子連れの女性と衝突しないのだ。
震えながらまぶたを上げる、飛華流の真正面に、瓦屋根の古びた家が建っていた。
このクソヤンキーッ! どうせ、無免許運転なんだろ? これで死んだら、あんたを恨むぞ僕は。
今度こそ、大変な事態になると覚悟した飛華流。しかし、訳も分からないうちに、さっきの家は消えており、別の建物が迫ってくる。
そんな不可解な現象が少しだけ続き、飛華流は何が起きているのかをなんとなく理解する。ぼ、僕ら……さっきから、物体をすり抜けてる?
ずっと、彼らは道を妨害する障害物を何度もすり抜けていた。だから、いつまでも真っ直ぐに突き進んでいったって、何にもぶつからないのだ。
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