MARVELOUS ACCIDENT

荻野亜莉紗

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第四章 闇に包まれた謎

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 エミナーに直ぐには返答できず、飛華流は黙り込んでしまった。どうしよう。中学生の僕は、まだバイトなんてした事がない。

 だけど、他に支払いの手段は無さそうだ。僕に向いていそうな作業ではあるから、思い切って挑戦してみようかな。勇気を出し、飛華流はエミナーに尋ねる。

「あの……やってみようと思います。どうやって、やるんですか?」

「このお仕事に、ペンや紙は必要ございません。必要なのは、発想力です。……飛華流さんは、趣味で漫画を描いていますね?」

「あ、はい……どうして、それを知っているんですか?」

「……それは、飛華流さんのお部屋を見ればわかります。私は魔法が使えますが、物語を作る才能はありません。なので、この作業にかなり苦悩していました。ですから、飛華流さんにお手伝いをして頂けると、とても助かると思います。ありがとうございます」
 
 エミナーは、優しい笑顔を飛華流に見せた。いやいや、いつ僕の部屋を覗いたんだよ。プライバシーも、クソも無いな。彼女の過度な期待に、飛華流はプレッシャーを感じていた。

「飛華流さんに、夢製造機をお渡しします。こちらの装置を頭に付けて頂き、シナリオを考えて下さい。そうする事で、夢を作る事が出来ます」
 
 ヘルメットの様な謎の道具を、飛華流はエミナーから受け取った。本当にこんな物で、僕の頭の中の世界を読み取る事が可能なのかと、飛華流は半信半疑だった。

「……分かりました。それで、夢を作り終えたら、どうすれば良いですか?」

「夢の完成が確認できましたら、こちらで勝手に頂き、お客様の元へ届けますのでご安心下さい。……それと、お客様の声を脳内に送りますので、そちらをよく聞いて、仕事に取り組んで下さい」
 
 エミナーの説明を聞き、飛華流は驚いた。今の時代、そんな事が実現可能なのか。いや、魔女にだから出来る事なのだろうな。

「……えっと、お客様の声って……何ですか?」

「どんな夢を希望するのかという、詳しい依頼内容や、夢を体験しての感想等……お客様の率直な思いが、ダイレクトに貴方に聞こえますよという事です」
 
 夢を気に入ってもらえなければ、文句を言われる可能性も十分にある。その仕事に対し、飛華流は恐怖心を持った。

「……それでは、間もなく朝がやってきます。ですので、私はここで失礼します。本日から、お仕事を宜しくお願いしますね。さようなら」
 
 エミナーがそう言い終えると、飛華流は布団の中で目を覚ました。

「ゆ、夢か……そうだきっと」
 
 さっきのは、夢に違いない。まさか、自分には支払えない程の金を、いきなり請求されるはずがない。飛華流は、そう信じたかった。

 しかし、枕元に目をやると、あの謎の道具がしっかりと置かれていた。あれは、夢であり現実だったのだ。 

 ボーッと夢製造機を眺めていると、若い少年の声が飛華流の脳内へ流れてくる。

「僕は毎日、とても辛い日々を過ごしています。だから、夢の中でくらい、自分の好きな場所へ行きたいです。僕に、宇宙旅行へ行く夢を見せて下さい。宇宙人にも、会いたいです」
 
 突然、知らない人間の声が聞こえてくるというホラー展開に、飛華流の体は猫の様にビックと跳ね上がった。

 どうやら、この声の主が、最初の依頼人のようだ。初めての仕事は不安だらけだけど、さっそく頑張るか。気合を入れ、飛華流は装置を頭に装着した。そして、少年が宇宙へ行くシナリオを考え始める。

 七色に輝く宇宙船に一人で乗り込んだ少年は、青い地球から飛び出した。星の海へと飛び込み、存分に無数の星を眺め、宇宙を満喫する。
 
 地球から遠ざかってしばらくすると、少し離れた所に無数の謎の飛行物体を発見。謎の飛行物体は、少年の方へ接近していく。あれは、UFOだ! 

 持っていたカメラで、少年はすかさずUFOを捉える。すると、UFOは一斉に、少年の乗っている宇宙船にビームを放ち、攻撃してきた。

 攻撃を素早くかわし、少年は追ってくるUFOから逃げ出す。しかし、ビームを何発も食らってしまい、宇宙船は制御不能になってしまった。そして、そのまま墜落していき、とある惑星に到着する。
 
 少年は、運良く助かった。その惑星では文明が発達しており、地球人によく似た宇宙人が住んでいた。

 宇宙人達は、「お帰りなさいませ」と、少年を大歓迎する。そう、少年は記憶を失っていた、この惑星の王だったのだ。

 飛華流は装置を外し、仕事を終えた。こんな感じで良いのかな? 正しく夢を作れているのかも分からず、飛華流は毎日、十人以上のシナリオを考えていく。
 
 そんなある日――飛華流が自室で漫画を描いていたら、いきなり客の少年の声が聞こえてくる。

「こんな、滅茶苦茶な夢を提供されたのは初めてです。いつも、楽しく利用させて頂いていたのに、残念です。僕は、宇宙旅行を楽しみ、宇宙人と友達になる夢が見たかったのに……それなのに、途中で危険な目に遭い、終いには人外扱いされました。なんだか、残念です」
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