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第四章 闇に包まれた謎
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しおりを挟む「……えっ? あの、何を言ってるんですか?」
ハンバーグをナイフで切りながら、優は眉をひそめる飛華流に冗談交じりに言う。
「俺にも、永戸の彼女みたいな可愛い恋人が欲しいんだー。絶対に幸せにするから、頼むぜ飛華流―」
「いや、それはちょっと……」
優の問題発言を聞き、飛華流はかなり迷惑そうにしていた。
「俺、物……違う。俺、あげない」
ムッとして、ワンダが可愛らしい言葉を発した。飛華流にとって、ワンダは妹みたいな存在だ。その為、彼は大切なワンダを、こんないかれた人間に渡す気は無かった。
「……暇だ。出るぞ」
退屈そうにしていた永戸が、席を立つ。すると、皆も腰を上げた。
「ああ、そうだなー。じゃあ、ここからは駆け抜けるぜー。……永戸、お前は飛華流を頼む」
飛華流には、優が何を言っているのか全く意味が分からなかった。この人達は一体、今から何をするつもりなのだろうか。
なんだか、嫌な予感がするな。そわそわしている飛華流へ、いきなり永戸が接近する。そして、軽々と飛華流を持ち上げると、永戸は勢いよく走り出した。彼を背を追い、ワンダを担いだ優もスピードを上げる。
「ちょ、ちょっと……あの、どういう事ですか? ぼ、僕を下ろして下さい」
「……お前だけ、捕まりたいか? 黙ってじっとしてろ」
永戸からの返答で、飛華流は彼らがどんな事を行おうとしているのかを、なんとなく察した。突然、異常な行動を取り出した僕らに、人々の視線が集中している。
そんな軽蔑した様な目を、僕に向けないでくれ。ヒソヒソ笑うんじゃない。周囲の目が、飛華流は気になって仕方がなかった。
レジを通り過ぎ、彼らはお会計を済ませる事なく店を出てしまった。食い逃げか――最初から、このつもりだったんだろうな。飛華流の予想は的中した。
「こらー、金を払わんかーーっ! この泥棒猿――っ! 誰か、そいつらを捕まえろー」
鬼の様な形相をした中年男性が、彼らを追いかける。中年男性に加わり、数人の通行人が彼らに迫っていく。
これは、まずい。僕、警察のお世話になんかなりたくないよ。自分の将来を案じ、飛華流は怯えた。しかし、風の様な速さで進んでいく彼らと、中年男性達の距離が離れていく。
みるみるうちに、中年男性達は自分らから遠のいた。それから数分も経たないうちに、彼らは逃げ切る事に成功したのだった。
凄いな。軽々と負っ手をまいたぞ。流石、イナズマ組だ。イナズマ組の力を、飛華流は改めて実感した。
雲一つ無い空を眩しそうに見上げ、優が呟く。
「あの人達には悪いけど……これも、生きていく為なんだよなー」
いや、働けよ! 優に対し、飛華流は呆れながら心の中でそう突っ込んだ。
「うっ、ううう……」
苦しそうにうめき声を上げ、永戸は突然、その場で蹲ってしまった。どうしたのだろう。体調でも悪いのかなと、飛華流は体調を悪化させた永戸に驚いていた。
「永戸……永戸? ……やべーな。おい、頼むしっかりしてくれ永戸――っ!」
優は慌てて永戸に駆け寄り、彼の背中を必死にさする。すると、その直後、永戸がいきなり優を殴り飛ばした。飛華流は一瞬、自分の目を疑った。何が起きているんだ。
どうして、永戸は急に優を攻撃した。喧嘩だろうか――いや、永戸が機嫌を損ねてしまう様なタイミングは、どこにも無かったはずだ。
彼が究極の変人でない限り、あり得ないだろう。この状況を、飛華流は一ミリも理解できないでいた。
後姿では、永戸がどんな状態なのかが飛華流には分からない。表情が確認できないが、今の永戸が正常ではない事だけは確かだ。アスファルトに転がる優を気にもせず、永戸は物凄い速度でどこかへと去っていった。
「うっわ……また、やべー事になったなー」
口から血を垂らし、よろりと立ち上がると、優は酷く動転した様子で永戸の後を追う。何もかもが意味不明な飛華流だったが、良くない事が起きているに違いないと、得体の知れない危機を感じた。
「か、帰ろう……ワンダ」
見て見ぬ振りをし、このまま逃げ帰ろうとする飛華流だったが、それも上手くはいかない。
「駄目だ。気になる……俺、行く。お前も」
そう言って、ワンダが飛華流の言葉に、首を大きく横に振ったのだ。結局、ワンダに手を引かれ、飛華流は二人を尾行する事になってしまった。
住宅街で、永戸と優が向かい合っていた。二人の足元に、血塗れの男性が倒れている。出血多量で、その男性は恐らく亡くなっているだろう。
体内から流れ出る血液で、真っ赤な水たまりを作っていく男性の遺体に優は哀れみの目を向けていた。
「ああ……本当に申し訳ねーよこの人には。間に合わなかった……また、永戸を止められなかった。どうしたらいいんだ? こいつの背負う十字架が、増えていくだけだ」
「きゃーーーー! 誰か、助けてー」
通行人の中年女性が、永戸の顔を見るなり、青ざめた顔をして悲鳴を上げながら、彼から離れていく。彼女は、永戸にかなり怯えている様だった。
そう、永戸の姿は別人でしかなかった。悪魔の様に不気味な顔に、気狂った表情。狂気じみた姿で、赤色の眼光をギラギラさせている。永戸の形をしているが、それは彼ではない。人外の類とされ、世の人々から恐れられている、レッドアイだった。
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