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第五章 深い絆で守られし秘密
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しおりを挟むどうしよう。このままでは、殺されてしまう。これは、何の冗談なんだ。勘弁してくれ。
飛華流は逃げようと引き返すが、永戸が道を塞いでいるせいで外へ出られない。早くしないと、彼らに粉々にされてしまう。
「ご、ごめんなさい……許して下さい。お願いします」
「……せっかく、お前とは遊ぶ仲になったのに…………」
泣きながら謝る飛華流に、永戸は悲しみと怒りの混じった様な複雑な表情を見せる。
「どうしてだ……どうして見た。ふざけんな……ふざけんなよ。ウッ……ウウウッ……」
永戸は嘆きながら、苦しそうにその場にしゃがみ込み、うめき声を上げる。その様子はこの前、永戸がレッドアイへと変貌した時とよく似ていた。
この状況で永戸が気狂ってしまったら、飛華流がこの森から生還できる可能性は絶望的になる。
武器を振りかざしたメンバー達が、飛華流の直ぐ側まで迫ってきていた。このまま大人しく殺され、楽になるという選択肢もある。それでも良いんじゃないか?
だが――――死にたいという願望はあるけれど、飛華流の体は自分の命を守ろうとする。勝手に足が動き、気づけば飛華流は走り出していた。縮こまる永戸をまたぎ、彼は階段を駆け上がっていく。
「おらー、逃がさねーぞー」
「大人しく、俺らの腹に入ってもらうぜー」
彼らの声は、徐々に飛華流に近づいてくる。まずいな。このままでは、僕はこの人達に捕まってしまうよ。人一倍足が遅い飛華流は、大ピンチだ。
外へ出て飛華流なりに全力疾走するが、彼らとの距離はどんどん短くなる。この辺り一帯は枯れ木が生い茂っていて、どこも同じ様な景色が広がっている。
だから、飛華流には帰る方向も分からない。けれど、今はただ彼らから逃げる事だけを、飛華流は考えた。
急な下り坂で足が追いつかなくなりそうでも、飛華流は決して足を止めなかった。そんな、必死でイナズマ組から逃れようとする、彼の行く手を阻む者が秒速で現れた。
「フッハハハハハハハハー。面白いおもちゃ、みぃーつけたぁー」
聞き覚えのある気狂った不気味な声に、飛華流がひっそりと目を向けると、そこにはレッドアイの姿があった。
やはり、また永戸は気狂ってしまったか。前方にレッドアイ、そして後方にイナズマ組――これは、絶体絶命の大ピンチだ。空でも飛ばない限り、助からないぞ。
完全に彼らに包囲されてしまった飛華流は、まさに袋の中のネズミ状態となってしまった。
赤い眼光をギラギラとさせる、気味の悪い少年を前に、陽翔は珍しく真剣な顔つきをする。
「愛羅……菊谷さんに、永戸が気狂いしやがったって、伝えに行ってくれねーか? ここは、俺達で何とかするからよー」
「うん、分かったよ。陽翔君……皆も、気をつけてね」
愛羅はメンバーに背を向け、くるくるツインテールを靡かせ、洞窟へと急いだ。その華奢な背中を見送ると、陽翔はレッドアイの前へ複数のメンバー達を突き出す。
「よし、お前ら……永戸を押さえろー。頼むぜ。ここは、俺様の出る幕じゃーねーからよー」
レッドアイにメンバー達は怯えているが、陽翔の命令に従うしかない様子だった。
陽翔が彼らを仕切っているという事は、この中では彼が一番偉い立場の人間なんだろうと飛華流は認識した。自分だけが助かろうなんて、この人はなんて身勝手なんだろう。
レッドアイが現れた事で、彼らの中での僕という存在が薄れているはず。これは、逃げるチャンスかもしれない。
飛華流がそう思ったのも束の間、悪い笑みを浮かべた陽翔が彼に近づいていく。
「おいおい兄ちゃんよー。まさか、この隙にひっそり消えるつもりだったかー? 逃がさねーぞー」
「ああっ……」
謝罪しようと口を開く飛華流だが、恐怖のせいか声が上手く出せない。どうせ、謝っても殺されるだけだろうけど。
「何、ビビる事はねー。この優しい俺様が、直ぐにあの世へ送ってやるからよー」
「あっ……あの、この事は忘れますから……誰にも話しませんから、許して下さい」
「あーん? てめー何、舐めた事言ってんだー? そんな嘘に、俺様が騙されると思うなよ」
陽翔は、飛華流にハンマーを振り下ろす。駄目だ。これでお終いだ。飛華流が、目をギュッと閉じたその瞬間――一瞬にしてやって来た永戸が、陽翔の腕を掴んだ。
「ちょっと、待ってよー。その子を殺してもらったら困るねー」
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