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Chapter 4 一般の場合
4.2 Cracking
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翌朝に《魔王城》の近くで待っていると、エピックマンが重鎧を鳴らしてやってきた。
「定刻だ」
「クレイトン+は連絡ないままだけれど、仕方ないね」
「数10名規模の集団召喚がまた観測されたとなってはな」
「僕の担当が王都じゃなくて本当に良かったよ」
異世界からの召喚者は、僕の担当エリアでは1度の召喚でひとりだけが来ていた。けれども、もちろん1度に複数名が召喚される事例もある。
例えば王都では、異世界で学校のクラスと呼ばれる、術理院でいう中等部や高等部の学級のような集団、すなわち20~40名規模の召喚が、1年以内に4回観測されていた。
なお、現在の王都担当者はクレイトン+だけである。
昨晩の5回目の集団召喚を受けて、僕にメッセージが届いていた。
【にゃーん】
末期だ。
「激務により限界を迎える時,猫になると捗るとクレイトン+は言っていたな」
「みんな別のエリアに異動したのに、クレイトン+だけよく頑張るよね」
「恐らく稼ぎが良いからだろう.俺は御免だ」
今回は、来られないクレイトン+の代わりとして、事前に制作していたゴーレムをサポートに充てる。
非力な僕が両手で持ち運べる程度の2足歩行型のゴーレムで、クレイトン+はこういう事態になった場合の備えとして、以前から少しずつ部品を送っていた。
いくつか届かなかった材料は僕やエピックマンが調達し、既に組み上げと簡単な動作確認までを終えている。
最終調整を行うエピックマンが、ゴーレムを見つめて悲しげにため息を吐いた。
「外骨格のカラーリングだけが間に合わなかったか…」
「緑の染料なら在庫あるから売るよ」
「構造色が欲しいと前にも言っただろう.色素による染色では満足できない」
こだわりを物語る緑の全身鎧は放置してよい。
【Hello, World!】
「システム連携完了。そっちはどう?」
「こちらも正常だ」
《魔王城》はどこにでも生成し得るダンジョンと異なり、ダンジョンマスターとして魔王が実在している。
ダンジョンマスターはダンジョンの内で従うべき規定をある程度自由に決めることができる。そして僕たちは、攻略の際にその規定の中で振る舞うよう要請される。
「勇者には管理外の召喚者もいるんでしょ。規定外で大変な事になりそうだ」
「覚悟の上だろう.ただ,コアの分析くらいはできると良いが」
ダンジョンの入口では、この世界と異なるダンジョンの中に移動するために、変換魔法が作用する。
この際に、勇者パーティか、あるいはモンスターのみを選択的に移動させるような制約を持つダンジョンを《魔王城》と呼ぶ。
でも、魔王が侵入者を勇者であるか毎回判定しているわけではない。
これまでの知見から、自動的に勇者を判別する仕組みがあることが分かっている。
そして、こういった仕組み全体を制御する構造をダンジョンのコアという。
《魔王城》を管理するコアがあるならば、コアのデータを取得することで、地形やモンスター分布、上手くいけばダンジョン内の規定までを明らかにできるのだ。
ダンジョンコアに介入する作業はクラッキングと呼び、これは、冒険規定からは完全に逸脱した行為である。
しかもかなりの計算能力が必要で、術理員会員のなかでも専門家でないと難しい。
いまは肝心のクレイトン+がいないので、持ち込んだゴーレムに計算を任せている。
しばらくの間、《魔王城》に入ろうとしたり、入口に魔力光をあてたりした際の魔力応答をゴーレムに送っていると、エピックマンが声を上げた。
「ルークン,入ってみないと無理そうだ」
「やっぱりか。少しは分かった?」
「今回は大がかりな作戦になるだろう」
エピックマンから解析結果が送られてくる。
【魔王城_29】
【階層: ω₀】
【空間群: -】
【モンスターランク: 21】
【CENSORED】
【CENSORED】
【CENSORED】
⁞
あとは同じ表示が続いている。
「ω₀の無限階層で、モンスターランク21。ランク21か…。こんなの入りたくないな」
「しかし, さらなるクラッキングは我々には困難だ.他の勇者のためにも現地調査は急務だろう」
空間群の分類がない、これは階段の模様や産出する結晶の周期性が乏しいことと同じだ。つまりは、超然現象が影響した、準安定構造のダンジョンと言える。おそらく産出する結晶には準結晶が含まれるだろう。
また、コアの情報にセキュリティが掛かっていることから、ダンジョンマスターすなわち魔王は、コアの情報を検閲できるような明確な知性を有する可能性が高い。
超然現象の影響と、知性を有する魔王の出現。
近ごろの経験から、素直な類推が生まれる。
「今代魔王は、異世界からの召喚者かもしれないな」
「魔王が何者であろうとも,如何なる強大な敵が立ちふさがろうとも,勝利の構造は不変だ!」
緑の全身鎧が天に咆哮し、《魔王城》へ確固たる歩みを踏みしめる。
「これより第29代《魔王城》に侵入する.ルークン,魔力の出力は任せたぞ」
「ゴーレムがいると簡単にできて良いね。僕も欲しいな、これ」
既報より、これまでの《魔王城》入口には、勇者に特有の魔力応答を検出して変換魔法が作用する仕組みがあることが明らかになっている。
さらに、勇者に特有の魔力応答は解析されており、同じ魔力応答を再現する方法が確立されている。
術理員会員であれば、勇者でなくても《魔王城》へ侵入することが可能なのだ。
入口にゴーレムを運んで魔力を入力すると、既報通りに調整された魔力が出力され、僕たちは《魔王城》への侵入に成功した。
「定刻だ」
「クレイトン+は連絡ないままだけれど、仕方ないね」
「数10名規模の集団召喚がまた観測されたとなってはな」
「僕の担当が王都じゃなくて本当に良かったよ」
異世界からの召喚者は、僕の担当エリアでは1度の召喚でひとりだけが来ていた。けれども、もちろん1度に複数名が召喚される事例もある。
例えば王都では、異世界で学校のクラスと呼ばれる、術理院でいう中等部や高等部の学級のような集団、すなわち20~40名規模の召喚が、1年以内に4回観測されていた。
なお、現在の王都担当者はクレイトン+だけである。
昨晩の5回目の集団召喚を受けて、僕にメッセージが届いていた。
【にゃーん】
末期だ。
「激務により限界を迎える時,猫になると捗るとクレイトン+は言っていたな」
「みんな別のエリアに異動したのに、クレイトン+だけよく頑張るよね」
「恐らく稼ぎが良いからだろう.俺は御免だ」
今回は、来られないクレイトン+の代わりとして、事前に制作していたゴーレムをサポートに充てる。
非力な僕が両手で持ち運べる程度の2足歩行型のゴーレムで、クレイトン+はこういう事態になった場合の備えとして、以前から少しずつ部品を送っていた。
いくつか届かなかった材料は僕やエピックマンが調達し、既に組み上げと簡単な動作確認までを終えている。
最終調整を行うエピックマンが、ゴーレムを見つめて悲しげにため息を吐いた。
「外骨格のカラーリングだけが間に合わなかったか…」
「緑の染料なら在庫あるから売るよ」
「構造色が欲しいと前にも言っただろう.色素による染色では満足できない」
こだわりを物語る緑の全身鎧は放置してよい。
【Hello, World!】
「システム連携完了。そっちはどう?」
「こちらも正常だ」
《魔王城》はどこにでも生成し得るダンジョンと異なり、ダンジョンマスターとして魔王が実在している。
ダンジョンマスターはダンジョンの内で従うべき規定をある程度自由に決めることができる。そして僕たちは、攻略の際にその規定の中で振る舞うよう要請される。
「勇者には管理外の召喚者もいるんでしょ。規定外で大変な事になりそうだ」
「覚悟の上だろう.ただ,コアの分析くらいはできると良いが」
ダンジョンの入口では、この世界と異なるダンジョンの中に移動するために、変換魔法が作用する。
この際に、勇者パーティか、あるいはモンスターのみを選択的に移動させるような制約を持つダンジョンを《魔王城》と呼ぶ。
でも、魔王が侵入者を勇者であるか毎回判定しているわけではない。
これまでの知見から、自動的に勇者を判別する仕組みがあることが分かっている。
そして、こういった仕組み全体を制御する構造をダンジョンのコアという。
《魔王城》を管理するコアがあるならば、コアのデータを取得することで、地形やモンスター分布、上手くいけばダンジョン内の規定までを明らかにできるのだ。
ダンジョンコアに介入する作業はクラッキングと呼び、これは、冒険規定からは完全に逸脱した行為である。
しかもかなりの計算能力が必要で、術理員会員のなかでも専門家でないと難しい。
いまは肝心のクレイトン+がいないので、持ち込んだゴーレムに計算を任せている。
しばらくの間、《魔王城》に入ろうとしたり、入口に魔力光をあてたりした際の魔力応答をゴーレムに送っていると、エピックマンが声を上げた。
「ルークン,入ってみないと無理そうだ」
「やっぱりか。少しは分かった?」
「今回は大がかりな作戦になるだろう」
エピックマンから解析結果が送られてくる。
【魔王城_29】
【階層: ω₀】
【空間群: -】
【モンスターランク: 21】
【CENSORED】
【CENSORED】
【CENSORED】
⁞
あとは同じ表示が続いている。
「ω₀の無限階層で、モンスターランク21。ランク21か…。こんなの入りたくないな」
「しかし, さらなるクラッキングは我々には困難だ.他の勇者のためにも現地調査は急務だろう」
空間群の分類がない、これは階段の模様や産出する結晶の周期性が乏しいことと同じだ。つまりは、超然現象が影響した、準安定構造のダンジョンと言える。おそらく産出する結晶には準結晶が含まれるだろう。
また、コアの情報にセキュリティが掛かっていることから、ダンジョンマスターすなわち魔王は、コアの情報を検閲できるような明確な知性を有する可能性が高い。
超然現象の影響と、知性を有する魔王の出現。
近ごろの経験から、素直な類推が生まれる。
「今代魔王は、異世界からの召喚者かもしれないな」
「魔王が何者であろうとも,如何なる強大な敵が立ちふさがろうとも,勝利の構造は不変だ!」
緑の全身鎧が天に咆哮し、《魔王城》へ確固たる歩みを踏みしめる。
「これより第29代《魔王城》に侵入する.ルークン,魔力の出力は任せたぞ」
「ゴーレムがいると簡単にできて良いね。僕も欲しいな、これ」
既報より、これまでの《魔王城》入口には、勇者に特有の魔力応答を検出して変換魔法が作用する仕組みがあることが明らかになっている。
さらに、勇者に特有の魔力応答は解析されており、同じ魔力応答を再現する方法が確立されている。
術理員会員であれば、勇者でなくても《魔王城》へ侵入することが可能なのだ。
入口にゴーレムを運んで魔力を入力すると、既報通りに調整された魔力が出力され、僕たちは《魔王城》への侵入に成功した。
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