41 / 56
Chapter 4 一般の場合
4.5 Graham's number
しおりを挟む
現在の10↑10階層は100億階層だ。今の状態で階段を用いると、10↑10↑10階層に行くことになる。これは、1の後ろに0が100億個つながった数に値する。
「このままいくと次は10↑10↑10階層。ランク3になるよ」
「消耗していないうちにランク8に潜り,上ってくる方がいいだろうな」
ランク8まで行くとなると、どういう操作を行えば良いか。
ランク3の10↑10↑10では、10の後ろに↑10が2つある。これを10個に増やしたものを10↑↑10と表記して、これがランク6。
10↑↑10を10個つなげたものを10↑↑↑10と表記して、これがランク7だ。
ただし、↑↑↑を↑↑↑↑にしてもランクは7のまま。↑の数を100億に増やしてもランクは7のままだ。
ランク8以上に行くには、もう少し複雑な操作が必要になる。
「定石通り、G数の定義を流用しよう」
例えば図のように、2次元や3次元の超立方体について、頂点を結んだ辺と対角線を2色で塗り分けることを考える。今のように次元が低い場合は、同じ平面にある□の中に、必ず2色が混ざるように塗り分けることができる。
ところが次元が大きくなると、線を結んでできる□の数がどんどん増えていくので、やがてどうやって塗り分けても、全ての線が1色になってしまう□が出てくるようになる。
ここで、いったい何次元になるまで、2色の塗り分けができるのか、というのが問題だ。
近年ではその次元は、少なくとも2↑↑↑6以下であると分かっている。一方で、初めにこの問題を考えた者は、G数という答えを提出していた。
G数は非常に大きい数だったので、歴史的な意味合いもあって、僕たちはランク8の目安にしている。G数は、以下のように作る。
初めに、3↑↑↑↑3を作る。次に、↑の数が3↑↑↑↑3個ある数を作る。
1番目:3↑↑↑↑3
2番目:3↑……(全部で3↑↑↑↑3個)↑3
そして3番目の数を作る場合には、↑を、2番目につくった数だけ並べる。
これを64番目まで繰り返したものがG数となる。
ここでの具体的操作としては、10↑↑↑↑10階層からスタートして、現在の階層分だけ↑の数を増やすことを64回行う操作を考える。このランクになってくると、3が10に変わったくらいでは大きさのランクは変わらない。
現在は既に10↑10階層だ。だから、まずはランク7の10↑↑↑↑10まで行って、そこを起点に64回再帰する操作に変更し、ランク8の階層まで飛ぶことにした。
僕が設定を終えると、エピックマンが雄々しく叫んだ。
「マイティ・マジカル・ジェットパック,起動!!!」
目的のランク8の階層に着いた僕達には、さっそく問題が生じていた。
【Failure: Using create_map】
ゴーレムの地図生成機能が強制終了した。何かが僕たちに介入しているのだ。
「クレイトン+かな?」
「奴だったら反応があるはずだが….ん,何かいるな」
エピックマンが部屋をキョロキョロと見渡す。
「何もなくない?」
「確かに何かいる.ワンダーランドの英雄,エピックマン=レジェンドハートは誤魔化されん」
少なくとも僕かエピックマンのどちらかの認識が間違っている。しかし現状では、中立なゴーレムの探知は阻害されていて頼れない。
まずは現在おかれている状況を確認するため、解析機器を立ち上げる。
はじめに、試料を何も入れずに3回測定した。
結果、それぞれ桁違いにでたらめな値が得られた。
「較正エラーだ。このままだと測定もできない」
「既報の準ダンジョンと同様の傾向だな」
術理は僕たちの住む世界を主体とした法則を利用する。超自然的魔力が介入すると、世界の法則が少し変わってしまうことがあり、術理が使いにくくなるのだ。
そして、最近報告され始めた準ダンジョンでは、通常と異なる法則が成立していることが多い。
こういった場合に、術理院会員としてどのような対策が考えられるか。
「任せろ.このエピックマンがいる」
その重鎧の胸部を叩いて地面に膝を付くと、どこからともなく、耳慣れない勇猛な音楽が鳴り渡り始める。弦楽隊のアンサンブルは徐々に壮大に響き、勇武に昂るホーンや戦う者達のコーラスが満ちていく。
そして、なんと地面から大剣が自生してきた。
エピックマンは立ち上がりながら大剣を引き抜くと、宙を斬るように回転させて持ち替え、煌めく腕甲から伸びる剣先を斜め前方に掲げた。
「これより,エピック・ワールドが幕を開ける!」
雄渾なる宣言と共に、妥当な測定結果が得られるようになった。
「すごい。通常通りに検出可能になった」
「測定が困難ならば,測定が可能な系を構築すればいい」
各地に出現していた準ダンジョンからは、特殊な法則を反映した準結晶がいくつか採掘された。これらは術理院に送られて研究が進んでいる。
最近では準安定構造についての知見も増え、超自然的魔力が介入しても、ある程度測定ができる系が構築できることも分かってきているようだ。
「この系なら僕にも見える。さすが、エピックマンだ」
「さて,神秘な方のお出ましだ」
僕たちの後ろからゆったりとした拍手が聞こえてくる。
パチ、パチ、パチ。
「驚いた、驚いた。來たよ。ワンダーランドの英雄が、術理院會員がやってきたよ。」
振り返ると、顔の片側を龍の仮面で隠した何かが立っていた。
純白と漆黒の折り重なった衣を纏う5体は、仄かに青白い光を発している。そしてその裏に、引き裂かれたように風穴が空いた片翼と、鎖に巻かれた刺々しい尾が見えた。
それは僕たちに2足歩行で近寄ってくる。古びた仮面の眼からひとすじの青い残像を残し、鎖に縛られた龍尾を酷く重そうに引き摺りながら。
「エピックマン君に、そちらの君は初めましてだ。マリノフ君に封印されたイズマルダが初めまして。」
「冒険の神に封印って、神話時代の半神がなんでこんな階層に」
「半神の実在可能階層はランク21のはずだが,ランク8で遭遇とは…!」
神話時代には様々な種族が2陣営に別れての、大きな戦争があった。
勝った種族たちは僕たちの住む世界の神を成し、負けた方は半神として世界から追い出されたと伝えられている。
「敗北は半神、勝利が冒險神か。くくく、良いね、大戰は良いものだね。」
黒爪を有する方の片手で龍の仮面を押さえた奇妙な笑い方は、何故だか闘争心の高さが表れているように感じられる。
「神話時代の大戦を再現するのであれば、僕たちのいない領域でお願いします」
「駄目だ、ははははは。それは駄目だよ。」
仮面に隠されていない片目の瞳孔が縦に開いた。
後ずさる僕を庇うように、エピックマンが不可視の盾を構える。
イズマルダ半神は5本の指がある方の手を開いた瞳にかざすと、瞳孔は元に戻った。
「大戰は初めてかい。始まっているよ、大戰は。もう遲い、おそかったよ。イズマルダ達は待ち草臥れた。混沌を。この混沌を。くく、はははは。」
「俺はワンダーランドの英雄,エピックマン=レジェンドハート! まだ遅れは取り戻せるはずだ!」
「術理院會員のエピックマン君。大戰は變えられない。過去から現在に続く一條の道はかえられないよ。」
時間の道筋を示すように、左の黒爪が真っすぐ僕たちに向けられる。
「イズマルダよ.空間的な長さでは少なくとも横,縦,奥行きの3次元を認識するのに対し,時間的な長さが過去から未来への1次元のみに留まるというのなら…」
エピックマンは不可視の盾を降ろし、右の剛腕を真横に広げた。
「新たな1歩を踏み出すため,俺が時を切り拓く!!!」
「ははは。過去、現在、未來とは違う時間軸か。面白い。面白い術理があるものだね。」
躯体に灯る青白い光が、徐々に小さくなっていき、ゆったりと言葉が紡がれていく。
「術理院會員はどうして術理を使えるんだろうね。誰が決めたのかな。術理院會員だけが術理を使えるなんてね。」
術理院会員だけが術理を使えるとは、誰も決めていない。術理は、理解すれば誰でも使えるようになる。
誰でも。何であっても。理解さえすれば。
「ぜひ術理を見せて貰いたいね。それを學び今を大戰にするよ。この混沌に乘じるイズマルダ達は。」
「術理を学習した上で大戦を起こすか.考えを改める気は…ないようだな」
神話時代の半神たちが好戦的な状態で《魔王城》の外に出て行けば、非常に大きい被害が出る。好ましくは勇者たちがいる階層にさえ行ってほしくない。
しかし、本当に術理を使う半神ならば、僕たちが対策するのは難しい。
同じ原理の術理を同時に用いるとき、多くの場合に魔力の強い方が優先される。僕たちと半神では、まともには勝負はできない。
「ただし、ああ、殘念だね。未だ戰力のないイズマルダは去るしかないとは。ああ、さらなる混沌の果てにまた再会したいね。お互いに殺されないといいね。」
鬱陶しげに鎖の巻かれた龍尾を震わせると、イズマルダ半神は片手の爪で鱗を1枚剥ぎ取り、空中へ展開した。
「盟友よ顯在れ、陽狩りに墮ちた眩止みよ。」
【Caution: Magion Detected】
圧倒的な魔力放射で歪む風景に消えていくイズマルダ半神。
「とりわけ、エピックマン君。惰弱なる竜共を討てたエピックマン君。いつか封印の解かれたイズマルダは、とりわけ君との戰鬪に焦がれるよ。」
龍の仮面を不気味に歪ませた去り際を見届けたエピックマンが、堅牢な緑兜をおさえた。
「術理を使う半神と戦闘うことになるとは…」
「ドラゴン狩りなんかしたから、龍の半神に目を付けられたんじゃないの」
「そういうことは,担当エリアに《ドラゴンケイブ》が出現してから言え」
渋い雰囲気のエピックマンを尻目に、僕は魔力応答を確認する。
「これは召喚魔法の応答に近いな。何かがやって来るみたい」
「ルークンの専門か.ならばここは任せるぞ」
僕が返事をする前より早くエピックマンは動いた。まるでマントを翻したかのように。すると何も着けていない緑鎧の背部から、なんと赤いマントが出現してはためき出した。
「俺はマイティ・ガジェットと共に追跡を行い,半神が封印されている間にどうにかしてこよう」
「ちょっと。エピックマンがゴーレム持ってったら、合流はどうするのさ」
「これから考えれば良い!」
ゴーレムを小脇に抱えたエピックマンの剛毅な返答と共に、勇ましい音楽が鳴り響く。
「さあエピックマン,ワンダーランドの英雄よ! 永遠の地平線を超えていけ!」
そしてエピックマン=レジェンドハートは虚空へ飛び立っていった。
僕の目の前には、半神の召喚魔法に伴って放射される魔力で歪曲する情景だけが残された。
「このままいくと次は10↑10↑10階層。ランク3になるよ」
「消耗していないうちにランク8に潜り,上ってくる方がいいだろうな」
ランク8まで行くとなると、どういう操作を行えば良いか。
ランク3の10↑10↑10では、10の後ろに↑10が2つある。これを10個に増やしたものを10↑↑10と表記して、これがランク6。
10↑↑10を10個つなげたものを10↑↑↑10と表記して、これがランク7だ。
ただし、↑↑↑を↑↑↑↑にしてもランクは7のまま。↑の数を100億に増やしてもランクは7のままだ。
ランク8以上に行くには、もう少し複雑な操作が必要になる。
「定石通り、G数の定義を流用しよう」
例えば図のように、2次元や3次元の超立方体について、頂点を結んだ辺と対角線を2色で塗り分けることを考える。今のように次元が低い場合は、同じ平面にある□の中に、必ず2色が混ざるように塗り分けることができる。
ところが次元が大きくなると、線を結んでできる□の数がどんどん増えていくので、やがてどうやって塗り分けても、全ての線が1色になってしまう□が出てくるようになる。
ここで、いったい何次元になるまで、2色の塗り分けができるのか、というのが問題だ。
近年ではその次元は、少なくとも2↑↑↑6以下であると分かっている。一方で、初めにこの問題を考えた者は、G数という答えを提出していた。
G数は非常に大きい数だったので、歴史的な意味合いもあって、僕たちはランク8の目安にしている。G数は、以下のように作る。
初めに、3↑↑↑↑3を作る。次に、↑の数が3↑↑↑↑3個ある数を作る。
1番目:3↑↑↑↑3
2番目:3↑……(全部で3↑↑↑↑3個)↑3
そして3番目の数を作る場合には、↑を、2番目につくった数だけ並べる。
これを64番目まで繰り返したものがG数となる。
ここでの具体的操作としては、10↑↑↑↑10階層からスタートして、現在の階層分だけ↑の数を増やすことを64回行う操作を考える。このランクになってくると、3が10に変わったくらいでは大きさのランクは変わらない。
現在は既に10↑10階層だ。だから、まずはランク7の10↑↑↑↑10まで行って、そこを起点に64回再帰する操作に変更し、ランク8の階層まで飛ぶことにした。
僕が設定を終えると、エピックマンが雄々しく叫んだ。
「マイティ・マジカル・ジェットパック,起動!!!」
目的のランク8の階層に着いた僕達には、さっそく問題が生じていた。
【Failure: Using create_map】
ゴーレムの地図生成機能が強制終了した。何かが僕たちに介入しているのだ。
「クレイトン+かな?」
「奴だったら反応があるはずだが….ん,何かいるな」
エピックマンが部屋をキョロキョロと見渡す。
「何もなくない?」
「確かに何かいる.ワンダーランドの英雄,エピックマン=レジェンドハートは誤魔化されん」
少なくとも僕かエピックマンのどちらかの認識が間違っている。しかし現状では、中立なゴーレムの探知は阻害されていて頼れない。
まずは現在おかれている状況を確認するため、解析機器を立ち上げる。
はじめに、試料を何も入れずに3回測定した。
結果、それぞれ桁違いにでたらめな値が得られた。
「較正エラーだ。このままだと測定もできない」
「既報の準ダンジョンと同様の傾向だな」
術理は僕たちの住む世界を主体とした法則を利用する。超自然的魔力が介入すると、世界の法則が少し変わってしまうことがあり、術理が使いにくくなるのだ。
そして、最近報告され始めた準ダンジョンでは、通常と異なる法則が成立していることが多い。
こういった場合に、術理院会員としてどのような対策が考えられるか。
「任せろ.このエピックマンがいる」
その重鎧の胸部を叩いて地面に膝を付くと、どこからともなく、耳慣れない勇猛な音楽が鳴り渡り始める。弦楽隊のアンサンブルは徐々に壮大に響き、勇武に昂るホーンや戦う者達のコーラスが満ちていく。
そして、なんと地面から大剣が自生してきた。
エピックマンは立ち上がりながら大剣を引き抜くと、宙を斬るように回転させて持ち替え、煌めく腕甲から伸びる剣先を斜め前方に掲げた。
「これより,エピック・ワールドが幕を開ける!」
雄渾なる宣言と共に、妥当な測定結果が得られるようになった。
「すごい。通常通りに検出可能になった」
「測定が困難ならば,測定が可能な系を構築すればいい」
各地に出現していた準ダンジョンからは、特殊な法則を反映した準結晶がいくつか採掘された。これらは術理院に送られて研究が進んでいる。
最近では準安定構造についての知見も増え、超自然的魔力が介入しても、ある程度測定ができる系が構築できることも分かってきているようだ。
「この系なら僕にも見える。さすが、エピックマンだ」
「さて,神秘な方のお出ましだ」
僕たちの後ろからゆったりとした拍手が聞こえてくる。
パチ、パチ、パチ。
「驚いた、驚いた。來たよ。ワンダーランドの英雄が、術理院會員がやってきたよ。」
振り返ると、顔の片側を龍の仮面で隠した何かが立っていた。
純白と漆黒の折り重なった衣を纏う5体は、仄かに青白い光を発している。そしてその裏に、引き裂かれたように風穴が空いた片翼と、鎖に巻かれた刺々しい尾が見えた。
それは僕たちに2足歩行で近寄ってくる。古びた仮面の眼からひとすじの青い残像を残し、鎖に縛られた龍尾を酷く重そうに引き摺りながら。
「エピックマン君に、そちらの君は初めましてだ。マリノフ君に封印されたイズマルダが初めまして。」
「冒険の神に封印って、神話時代の半神がなんでこんな階層に」
「半神の実在可能階層はランク21のはずだが,ランク8で遭遇とは…!」
神話時代には様々な種族が2陣営に別れての、大きな戦争があった。
勝った種族たちは僕たちの住む世界の神を成し、負けた方は半神として世界から追い出されたと伝えられている。
「敗北は半神、勝利が冒險神か。くくく、良いね、大戰は良いものだね。」
黒爪を有する方の片手で龍の仮面を押さえた奇妙な笑い方は、何故だか闘争心の高さが表れているように感じられる。
「神話時代の大戦を再現するのであれば、僕たちのいない領域でお願いします」
「駄目だ、ははははは。それは駄目だよ。」
仮面に隠されていない片目の瞳孔が縦に開いた。
後ずさる僕を庇うように、エピックマンが不可視の盾を構える。
イズマルダ半神は5本の指がある方の手を開いた瞳にかざすと、瞳孔は元に戻った。
「大戰は初めてかい。始まっているよ、大戰は。もう遲い、おそかったよ。イズマルダ達は待ち草臥れた。混沌を。この混沌を。くく、はははは。」
「俺はワンダーランドの英雄,エピックマン=レジェンドハート! まだ遅れは取り戻せるはずだ!」
「術理院會員のエピックマン君。大戰は變えられない。過去から現在に続く一條の道はかえられないよ。」
時間の道筋を示すように、左の黒爪が真っすぐ僕たちに向けられる。
「イズマルダよ.空間的な長さでは少なくとも横,縦,奥行きの3次元を認識するのに対し,時間的な長さが過去から未来への1次元のみに留まるというのなら…」
エピックマンは不可視の盾を降ろし、右の剛腕を真横に広げた。
「新たな1歩を踏み出すため,俺が時を切り拓く!!!」
「ははは。過去、現在、未來とは違う時間軸か。面白い。面白い術理があるものだね。」
躯体に灯る青白い光が、徐々に小さくなっていき、ゆったりと言葉が紡がれていく。
「術理院會員はどうして術理を使えるんだろうね。誰が決めたのかな。術理院會員だけが術理を使えるなんてね。」
術理院会員だけが術理を使えるとは、誰も決めていない。術理は、理解すれば誰でも使えるようになる。
誰でも。何であっても。理解さえすれば。
「ぜひ術理を見せて貰いたいね。それを學び今を大戰にするよ。この混沌に乘じるイズマルダ達は。」
「術理を学習した上で大戦を起こすか.考えを改める気は…ないようだな」
神話時代の半神たちが好戦的な状態で《魔王城》の外に出て行けば、非常に大きい被害が出る。好ましくは勇者たちがいる階層にさえ行ってほしくない。
しかし、本当に術理を使う半神ならば、僕たちが対策するのは難しい。
同じ原理の術理を同時に用いるとき、多くの場合に魔力の強い方が優先される。僕たちと半神では、まともには勝負はできない。
「ただし、ああ、殘念だね。未だ戰力のないイズマルダは去るしかないとは。ああ、さらなる混沌の果てにまた再会したいね。お互いに殺されないといいね。」
鬱陶しげに鎖の巻かれた龍尾を震わせると、イズマルダ半神は片手の爪で鱗を1枚剥ぎ取り、空中へ展開した。
「盟友よ顯在れ、陽狩りに墮ちた眩止みよ。」
【Caution: Magion Detected】
圧倒的な魔力放射で歪む風景に消えていくイズマルダ半神。
「とりわけ、エピックマン君。惰弱なる竜共を討てたエピックマン君。いつか封印の解かれたイズマルダは、とりわけ君との戰鬪に焦がれるよ。」
龍の仮面を不気味に歪ませた去り際を見届けたエピックマンが、堅牢な緑兜をおさえた。
「術理を使う半神と戦闘うことになるとは…」
「ドラゴン狩りなんかしたから、龍の半神に目を付けられたんじゃないの」
「そういうことは,担当エリアに《ドラゴンケイブ》が出現してから言え」
渋い雰囲気のエピックマンを尻目に、僕は魔力応答を確認する。
「これは召喚魔法の応答に近いな。何かがやって来るみたい」
「ルークンの専門か.ならばここは任せるぞ」
僕が返事をする前より早くエピックマンは動いた。まるでマントを翻したかのように。すると何も着けていない緑鎧の背部から、なんと赤いマントが出現してはためき出した。
「俺はマイティ・ガジェットと共に追跡を行い,半神が封印されている間にどうにかしてこよう」
「ちょっと。エピックマンがゴーレム持ってったら、合流はどうするのさ」
「これから考えれば良い!」
ゴーレムを小脇に抱えたエピックマンの剛毅な返答と共に、勇ましい音楽が鳴り響く。
「さあエピックマン,ワンダーランドの英雄よ! 永遠の地平線を超えていけ!」
そしてエピックマン=レジェンドハートは虚空へ飛び立っていった。
僕の目の前には、半神の召喚魔法に伴って放射される魔力で歪曲する情景だけが残された。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
