残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

文字の大きさ
219 / 302
第六章 試練編

第218話 神器・藍玉

しおりを挟む
 俺とエアは大部屋で少しだけ休憩してから、新しく開いた通路へと向かった。
 通路の中はこれまでのカラシ色ではなく、上下左右に白光する白いパネルが張り巡らされている。
 通路の先には白い通路と同じパネルが全面に張り巡らされた小さな部屋があった。その中央に銀色の台座があり、くぼみには半透明な藍色の玉がはめ込まれている。

 俺がエアの方を見ると、エアは俺にうなずいてみせた。

 俺は藍色の玉にそっと手を触れた。
 その時点では特に何も起こらなかったが、藍玉を台座から引き抜くと、俺の体に電気のような何かが走りぬけ、藍玉という神器をすべて理解した。

「エア、これはすごいぞ」

 俺はエアを連れてさっきの大部屋に戻った。
 藍玉を掲げて念を送ると、藍玉は藍色の光を放つ玉となって前方へと飛んでいき、巨大な物体へと変貌へんぼうした。

「これは、機工巨人!」

「こいつはもう俺たちのガーディアンだ。俺の思い描いたとおりに動く」

 俺は警戒心を示すエアを落ち着かせ、機工巨人がいまや俺の力となったことを説明した。

 藍玉は機工巨人を召喚できる神器だった。
 機工巨人は《機械工業という分野を概念兵器化した巨大人形》であり、何でも圧縮して押し潰すプレス機械のような工業機械の絶対的威圧感を神器として具現化した存在である。
 もちろん、実際に機械構造になっているわけではない。

 召喚した機工巨人は、俺が念じるとおり右ストレート、左フック、右アッパーとシャドーボクシングをしてみせた。
 目からレーザー光線を放つこともできる。

「この機工巨人はどんな魔法も効かないし、どんな物理干渉も受けつけない。おまけに中に入って鎧にすることもできる」

 まあ、魔法が効かず物理干渉もされないために、空気で浮かすこともできないのだが。
 機工巨人は空を飛ぶことができないので、空中戦には使えない。

「鎧として着るには大きすぎない?」

「サイズを変更できるんだ。中に入っている間は目からレーザーは撃てないが、ここのブラックホールさえなければ絶対無敵の鎧になる」

「そう聞くと、これがあれば絶対に誰にも負けない気がするわね。でも、その「誰にも」に紅い狂気を入れられるかっていうと、途端とたんに機工巨人が無力なものに思えてくる」

「そうだな。それについては俺も同感だ」

 この機工巨人の力一つあれば世界を支配するのも簡単だろう。全魔導師を一度に相手にしたって負ける気がしない。
 ただ、いまの俺たちが打倒する紅い狂気だけは、これでも届く気がしない。紅い狂気からすれば、俺を操れば機工巨人すら乗っ取ることもできるのだ。
 一人だと絶対に勝てない。だからこそ、たくさんの強い仲間を集結させていっせいに立ち向かわなければならない。

「エア、そろそろ脱出しよう」

 そう言いつつ、いちおうほかに何もないか先ほどの小部屋に確認しに戻った。
 小部屋には中央の銀色の台座のほかには、小さなコンソールが設置されていた。奥の壁際にポツンとつや消しされたような銀色の台があり、その中央にタッチパネルがある。
 コンソールといっても、押せるボタンは一つしかない。「EXIT」と表記されている。

 そのボタンを押すと、俺たちは遺跡の外へと瞬間移動した。急に空中に放り出されたので、慌てて執行モードで自分の体を包み込む。

「あっぶねーなぁ」

「ちゃんと休んでいてよかったわね」

 機工巨人と戦った直後は魔法もまともに使えないくらい疲弊ひへいしていた。休憩を挟まずに藍玉を回収して脱出していたら、海へと真っ逆さまに落下して墜落死していただろう。
 下が海といっても高すぎる。ここの高度が三万キロ程度だとすると、飛行機が飛ぶ高度の三倍の高さなのだ。
 もっとも、七十五メートル以上から落下した時点でまず助からないのだから、この遺跡がどれほどの高さにあるかを論じるのは無意味というものではあるが。

「エア、ワープできるか? いったん学院の寮へ戻ろう。二日以上は休息が必要だ」

 二十四時間が経過すれば、天使のミトンの効果が回復する。それを使って二人とも全快し、さらに二十四時間待って天使のミトンの効果も回復させる。
 それがちょうど今から四十八時間後だとしても、もう陽が暮れかけになっているので、第二の試練に挑むのはさらに翌日に持ち越すことになる。

「はい。ワープゲート作ったよ」

「おう、ありがとな」

 寮に戻ると、エアはすぐさまベッドに向かい、うつ伏せに倒れ込んでそのまま寝入ってしまった。

「王国のほうも見ておくか……」

 俺は壁に背をもたせかけて床に座った。
 立てた膝の上に腕を載せ、その上にひたいを載せて目を閉じた。

 校長やネアは新しい仲間を用意するからむやみに人を潰すなと言った。
 そんなことするわけがない。むしろ手助けが必要だろう。
 校長やネアの話しぶりだとまだ即戦力ではないが、そのうち十分な戦力になるようだ。
 新しい仲間というのが魔導師なのか魔術師なのか知らないが、いずれにしろ精霊を人成させなければならないはず。

「新しい仲間、か……」

 第一の試練を通して思ったのは、俺たちは多くの人数で戦うので、その連携力を高められる能力を持った仲間がほしいということだ。

 俺はエアみたいに休みたい欲求を我慢して、空気のリンクを王国の方までつなげていった。
 手助けするといっても、しばらくはただ静観するだけになるだろう。いまの俺には状況を見守るだけで精一杯だ。

「それにしても、第一の試練は辛かったな……」

 だからこその試練ともいえるが。

 俺は今回の試練で、自分が生きた人間なのだと認識することができた。
 ネアからは、俺という存在が神によって創造され、記憶も体も単なる創造物だと知らされた。
 それが俺にとってはとてつもないコンプレックスとなったが、本当の死の恐怖に直面した今回の試練によって、それも吹っ切れた気がする。

 間接的にだが、紅い狂気の恐ろしさも再認識した。

 これまでは、紅い狂気が死よりも恐ろしいものを与えてくるという話のせいで、死が恐ろしくないものだと錯覚していた。
 いざ死の危機に直面してみると、死ぬことはこんなにも恐ろしいのだと思い知った。その上で紅い狂気がそれ以上に恐ろしいものだと理解した。

 試練を乗り越えた報酬として神器・藍玉、すなわち機工巨人というガーディアンを入手したのは大きいが、それ以上に精神的な成長が成果として大きい。

 ただ、こんな試練があと二つもあると思うと、どうしても憂鬱ゆううつにならざるを得なかった。

「……。スゥー……」

 エアの寝息が聞こえてきた。目を開けてエアの方をチラと見る。

『調子出てきたじゃないの』

 俺は第一の試練でのエアの言葉を思い出した。
 俺は終始必死で余裕がなかったが、エアのその言葉は俺を少し勇気づけた。

「やってやるさ。次も、その次も」

 エアにあんまり格好悪いところは見せられない。
 何より、紅い狂気に勝って彼女との約束を守らなければならない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...