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第六章 試練編
第218話 神器・藍玉
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俺とエアは大部屋で少しだけ休憩してから、新しく開いた通路へと向かった。
通路の中はこれまでのカラシ色ではなく、上下左右に白光する白いパネルが張り巡らされている。
通路の先には白い通路と同じパネルが全面に張り巡らされた小さな部屋があった。その中央に銀色の台座があり、窪みには半透明な藍色の玉がはめ込まれている。
俺がエアの方を見ると、エアは俺に頷いてみせた。
俺は藍色の玉にそっと手を触れた。
その時点では特に何も起こらなかったが、藍玉を台座から引き抜くと、俺の体に電気のような何かが走りぬけ、藍玉という神器をすべて理解した。
「エア、これはすごいぞ」
俺はエアを連れてさっきの大部屋に戻った。
藍玉を掲げて念を送ると、藍玉は藍色の光を放つ玉となって前方へと飛んでいき、巨大な物体へと変貌した。
「これは、機工巨人!」
「こいつはもう俺たちのガーディアンだ。俺の思い描いたとおりに動く」
俺は警戒心を示すエアを落ち着かせ、機工巨人がいまや俺の力となったことを説明した。
藍玉は機工巨人を召喚できる神器だった。
機工巨人は《機械工業という分野を概念兵器化した巨大人形》であり、何でも圧縮して押し潰すプレス機械のような工業機械の絶対的威圧感を神器として具現化した存在である。
もちろん、実際に機械構造になっているわけではない。
召喚した機工巨人は、俺が念じるとおり右ストレート、左フック、右アッパーとシャドーボクシングをしてみせた。
目からレーザー光線を放つこともできる。
「この機工巨人はどんな魔法も効かないし、どんな物理干渉も受けつけない。おまけに中に入って鎧にすることもできる」
まあ、魔法が効かず物理干渉もされないために、空気で浮かすこともできないのだが。
機工巨人は空を飛ぶことができないので、空中戦には使えない。
「鎧として着るには大きすぎない?」
「サイズを変更できるんだ。中に入っている間は目からレーザーは撃てないが、ここのブラックホールさえなければ絶対無敵の鎧になる」
「そう聞くと、これがあれば絶対に誰にも負けない気がするわね。でも、その「誰にも」に紅い狂気を入れられるかっていうと、途端に機工巨人が無力なものに思えてくる」
「そうだな。それについては俺も同感だ」
この機工巨人の力一つあれば世界を支配するのも簡単だろう。全魔導師を一度に相手にしたって負ける気がしない。
ただ、いまの俺たちが打倒する紅い狂気だけは、これでも届く気がしない。紅い狂気からすれば、俺を操れば機工巨人すら乗っ取ることもできるのだ。
一人だと絶対に勝てない。だからこそ、たくさんの強い仲間を集結させていっせいに立ち向かわなければならない。
「エア、そろそろ脱出しよう」
そう言いつつ、いちおうほかに何もないか先ほどの小部屋に確認しに戻った。
小部屋には中央の銀色の台座のほかには、小さなコンソールが設置されていた。奥の壁際にポツンと艶消しされたような銀色の台があり、その中央にタッチパネルがある。
コンソールといっても、押せるボタンは一つしかない。「EXIT」と表記されている。
そのボタンを押すと、俺たちは遺跡の外へと瞬間移動した。急に空中に放り出されたので、慌てて執行モードで自分の体を包み込む。
「あっぶねーなぁ」
「ちゃんと休んでいてよかったわね」
機工巨人と戦った直後は魔法もまともに使えないくらい疲弊していた。休憩を挟まずに藍玉を回収して脱出していたら、海へと真っ逆さまに落下して墜落死していただろう。
下が海といっても高すぎる。ここの高度が三万キロ程度だとすると、飛行機が飛ぶ高度の三倍の高さなのだ。
もっとも、七十五メートル以上から落下した時点でまず助からないのだから、この遺跡がどれほどの高さにあるかを論じるのは無意味というものではあるが。
「エア、ワープできるか? いったん学院の寮へ戻ろう。二日以上は休息が必要だ」
二十四時間が経過すれば、天使のミトンの効果が回復する。それを使って二人とも全快し、さらに二十四時間待って天使のミトンの効果も回復させる。
それがちょうど今から四十八時間後だとしても、もう陽が暮れかけになっているので、第二の試練に挑むのはさらに翌日に持ち越すことになる。
「はい。ワープゲート作ったよ」
「おう、ありがとな」
寮に戻ると、エアはすぐさまベッドに向かい、うつ伏せに倒れ込んでそのまま寝入ってしまった。
「王国のほうも見ておくか……」
俺は壁に背をもたせかけて床に座った。
立てた膝の上に腕を載せ、その上に額を載せて目を閉じた。
校長やネアは新しい仲間を用意するからむやみに人を潰すなと言った。
そんなことするわけがない。むしろ手助けが必要だろう。
校長やネアの話しぶりだとまだ即戦力ではないが、そのうち十分な戦力になるようだ。
新しい仲間というのが魔導師なのか魔術師なのか知らないが、いずれにしろ精霊を人成させなければならないはず。
「新しい仲間、か……」
第一の試練を通して思ったのは、俺たちは多くの人数で戦うので、その連携力を高められる能力を持った仲間がほしいということだ。
俺はエアみたいに休みたい欲求を我慢して、空気のリンクを王国の方までつなげていった。
手助けするといっても、しばらくはただ静観するだけになるだろう。いまの俺には状況を見守るだけで精一杯だ。
「それにしても、第一の試練は辛かったな……」
だからこその試練ともいえるが。
俺は今回の試練で、自分が生きた人間なのだと認識することができた。
ネアからは、俺という存在が神によって創造され、記憶も体も単なる創造物だと知らされた。
それが俺にとってはとてつもないコンプレックスとなったが、本当の死の恐怖に直面した今回の試練によって、それも吹っ切れた気がする。
間接的にだが、紅い狂気の恐ろしさも再認識した。
これまでは、紅い狂気が死よりも恐ろしいものを与えてくるという話のせいで、死が恐ろしくないものだと錯覚していた。
いざ死の危機に直面してみると、死ぬことはこんなにも恐ろしいのだと思い知った。その上で紅い狂気がそれ以上に恐ろしいものだと理解した。
試練を乗り越えた報酬として神器・藍玉、すなわち機工巨人というガーディアンを入手したのは大きいが、それ以上に精神的な成長が成果として大きい。
ただ、こんな試練があと二つもあると思うと、どうしても憂鬱にならざるを得なかった。
「……。スゥー……」
エアの寝息が聞こえてきた。目を開けてエアの方をチラと見る。
『調子出てきたじゃないの』
俺は第一の試練でのエアの言葉を思い出した。
俺は終始必死で余裕がなかったが、エアのその言葉は俺を少し勇気づけた。
「やってやるさ。次も、その次も」
エアにあんまり格好悪いところは見せられない。
何より、紅い狂気に勝って彼女との約束を守らなければならない。
通路の中はこれまでのカラシ色ではなく、上下左右に白光する白いパネルが張り巡らされている。
通路の先には白い通路と同じパネルが全面に張り巡らされた小さな部屋があった。その中央に銀色の台座があり、窪みには半透明な藍色の玉がはめ込まれている。
俺がエアの方を見ると、エアは俺に頷いてみせた。
俺は藍色の玉にそっと手を触れた。
その時点では特に何も起こらなかったが、藍玉を台座から引き抜くと、俺の体に電気のような何かが走りぬけ、藍玉という神器をすべて理解した。
「エア、これはすごいぞ」
俺はエアを連れてさっきの大部屋に戻った。
藍玉を掲げて念を送ると、藍玉は藍色の光を放つ玉となって前方へと飛んでいき、巨大な物体へと変貌した。
「これは、機工巨人!」
「こいつはもう俺たちのガーディアンだ。俺の思い描いたとおりに動く」
俺は警戒心を示すエアを落ち着かせ、機工巨人がいまや俺の力となったことを説明した。
藍玉は機工巨人を召喚できる神器だった。
機工巨人は《機械工業という分野を概念兵器化した巨大人形》であり、何でも圧縮して押し潰すプレス機械のような工業機械の絶対的威圧感を神器として具現化した存在である。
もちろん、実際に機械構造になっているわけではない。
召喚した機工巨人は、俺が念じるとおり右ストレート、左フック、右アッパーとシャドーボクシングをしてみせた。
目からレーザー光線を放つこともできる。
「この機工巨人はどんな魔法も効かないし、どんな物理干渉も受けつけない。おまけに中に入って鎧にすることもできる」
まあ、魔法が効かず物理干渉もされないために、空気で浮かすこともできないのだが。
機工巨人は空を飛ぶことができないので、空中戦には使えない。
「鎧として着るには大きすぎない?」
「サイズを変更できるんだ。中に入っている間は目からレーザーは撃てないが、ここのブラックホールさえなければ絶対無敵の鎧になる」
「そう聞くと、これがあれば絶対に誰にも負けない気がするわね。でも、その「誰にも」に紅い狂気を入れられるかっていうと、途端に機工巨人が無力なものに思えてくる」
「そうだな。それについては俺も同感だ」
この機工巨人の力一つあれば世界を支配するのも簡単だろう。全魔導師を一度に相手にしたって負ける気がしない。
ただ、いまの俺たちが打倒する紅い狂気だけは、これでも届く気がしない。紅い狂気からすれば、俺を操れば機工巨人すら乗っ取ることもできるのだ。
一人だと絶対に勝てない。だからこそ、たくさんの強い仲間を集結させていっせいに立ち向かわなければならない。
「エア、そろそろ脱出しよう」
そう言いつつ、いちおうほかに何もないか先ほどの小部屋に確認しに戻った。
小部屋には中央の銀色の台座のほかには、小さなコンソールが設置されていた。奥の壁際にポツンと艶消しされたような銀色の台があり、その中央にタッチパネルがある。
コンソールといっても、押せるボタンは一つしかない。「EXIT」と表記されている。
そのボタンを押すと、俺たちは遺跡の外へと瞬間移動した。急に空中に放り出されたので、慌てて執行モードで自分の体を包み込む。
「あっぶねーなぁ」
「ちゃんと休んでいてよかったわね」
機工巨人と戦った直後は魔法もまともに使えないくらい疲弊していた。休憩を挟まずに藍玉を回収して脱出していたら、海へと真っ逆さまに落下して墜落死していただろう。
下が海といっても高すぎる。ここの高度が三万キロ程度だとすると、飛行機が飛ぶ高度の三倍の高さなのだ。
もっとも、七十五メートル以上から落下した時点でまず助からないのだから、この遺跡がどれほどの高さにあるかを論じるのは無意味というものではあるが。
「エア、ワープできるか? いったん学院の寮へ戻ろう。二日以上は休息が必要だ」
二十四時間が経過すれば、天使のミトンの効果が回復する。それを使って二人とも全快し、さらに二十四時間待って天使のミトンの効果も回復させる。
それがちょうど今から四十八時間後だとしても、もう陽が暮れかけになっているので、第二の試練に挑むのはさらに翌日に持ち越すことになる。
「はい。ワープゲート作ったよ」
「おう、ありがとな」
寮に戻ると、エアはすぐさまベッドに向かい、うつ伏せに倒れ込んでそのまま寝入ってしまった。
「王国のほうも見ておくか……」
俺は壁に背をもたせかけて床に座った。
立てた膝の上に腕を載せ、その上に額を載せて目を閉じた。
校長やネアは新しい仲間を用意するからむやみに人を潰すなと言った。
そんなことするわけがない。むしろ手助けが必要だろう。
校長やネアの話しぶりだとまだ即戦力ではないが、そのうち十分な戦力になるようだ。
新しい仲間というのが魔導師なのか魔術師なのか知らないが、いずれにしろ精霊を人成させなければならないはず。
「新しい仲間、か……」
第一の試練を通して思ったのは、俺たちは多くの人数で戦うので、その連携力を高められる能力を持った仲間がほしいということだ。
俺はエアみたいに休みたい欲求を我慢して、空気のリンクを王国の方までつなげていった。
手助けするといっても、しばらくはただ静観するだけになるだろう。いまの俺には状況を見守るだけで精一杯だ。
「それにしても、第一の試練は辛かったな……」
だからこその試練ともいえるが。
俺は今回の試練で、自分が生きた人間なのだと認識することができた。
ネアからは、俺という存在が神によって創造され、記憶も体も単なる創造物だと知らされた。
それが俺にとってはとてつもないコンプレックスとなったが、本当の死の恐怖に直面した今回の試練によって、それも吹っ切れた気がする。
間接的にだが、紅い狂気の恐ろしさも再認識した。
これまでは、紅い狂気が死よりも恐ろしいものを与えてくるという話のせいで、死が恐ろしくないものだと錯覚していた。
いざ死の危機に直面してみると、死ぬことはこんなにも恐ろしいのだと思い知った。その上で紅い狂気がそれ以上に恐ろしいものだと理解した。
試練を乗り越えた報酬として神器・藍玉、すなわち機工巨人というガーディアンを入手したのは大きいが、それ以上に精神的な成長が成果として大きい。
ただ、こんな試練があと二つもあると思うと、どうしても憂鬱にならざるを得なかった。
「……。スゥー……」
エアの寝息が聞こえてきた。目を開けてエアの方をチラと見る。
『調子出てきたじゃないの』
俺は第一の試練でのエアの言葉を思い出した。
俺は終始必死で余裕がなかったが、エアのその言葉は俺を少し勇気づけた。
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