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第二章 彩芽梓
第10話
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昨晩、姉が教育指導の先生に成りすまし、彩芽父をひれ伏せさせたことには、俺も梓ちゃん同様に恐れ入った。
しかし後から考えてみると、それ以上に俺の行き先を突きとめていた姉の嗅覚のほうが恐ろしく、震えが止まらなくなった。
最初から俺を尾けていたのかとも思ったが、そうではない真実を聞くと、尾行されていたほうが幾分マシだったとさえ思える始末だ。
「私がどうやって隼人の場所を突きとめたか? バカね。そんなことも分からないの? お母さんから聞いたのよ」
「でも俺、梓ちゃんの家に行くなんて、お母さんにも言ってなかったはずだよ」
「違うわよ。お母さんから聞いたのは、隼人が連絡網を見ていたということよ。さすがに連絡網だけでは手がかりが少ないけれど、問い詰めると、お母さんは隼人がいちばん左の列の上の方を見ていたと証言したわ。隼人、あんた、友達の家に行くって言って、お母さんがその友達の名前を訊いても誤魔化したそうじゃないの。だから友達というのは女子だと確信したわ。左の列の上半分に女子は一人だけ。それが彩芽梓だったってわけ」
彩芽さんの住所は俺と同じ方法で突きとめたらしい。
それにしても、なんて洞察力。恐るべし、染紅華絵、我が姉よ。
「さて、今日のお仕置きだけど……」
「え……、今日のお仕置きってなに⁉ お仕置きって、何か悪いことをしたらされるものなんじゃないの? 俺、今日は何もしてないよ!」
「ほら、口答えした」
「それってお姉ちゃんがお仕置きするって言った後じゃん! しかもいまので口答えになるの? たかが口答えでお仕置きされなきゃならないの?」
「あららぁ、いま、何回口答えした?」
「ごめんなさい。いまのは質問とみなしてください。お願いします」
今日も姉は絶好調のようだ。
「じゃあ、まずはゴミ箱舐めて。台所の」
本当に絶好調だぁあああ!
「まず⁉」
いま、「まず」って言ったか? 続きがあるってこと?
「ゴミ箱舐めて」もひどいけど、その「まず」ってのはそれすらも霞んでくるよ、お姉ちゃん。
しかも「台所の」って、それはどうか勘弁してください。
しかし後から考えてみると、それ以上に俺の行き先を突きとめていた姉の嗅覚のほうが恐ろしく、震えが止まらなくなった。
最初から俺を尾けていたのかとも思ったが、そうではない真実を聞くと、尾行されていたほうが幾分マシだったとさえ思える始末だ。
「私がどうやって隼人の場所を突きとめたか? バカね。そんなことも分からないの? お母さんから聞いたのよ」
「でも俺、梓ちゃんの家に行くなんて、お母さんにも言ってなかったはずだよ」
「違うわよ。お母さんから聞いたのは、隼人が連絡網を見ていたということよ。さすがに連絡網だけでは手がかりが少ないけれど、問い詰めると、お母さんは隼人がいちばん左の列の上の方を見ていたと証言したわ。隼人、あんた、友達の家に行くって言って、お母さんがその友達の名前を訊いても誤魔化したそうじゃないの。だから友達というのは女子だと確信したわ。左の列の上半分に女子は一人だけ。それが彩芽梓だったってわけ」
彩芽さんの住所は俺と同じ方法で突きとめたらしい。
それにしても、なんて洞察力。恐るべし、染紅華絵、我が姉よ。
「さて、今日のお仕置きだけど……」
「え……、今日のお仕置きってなに⁉ お仕置きって、何か悪いことをしたらされるものなんじゃないの? 俺、今日は何もしてないよ!」
「ほら、口答えした」
「それってお姉ちゃんがお仕置きするって言った後じゃん! しかもいまので口答えになるの? たかが口答えでお仕置きされなきゃならないの?」
「あららぁ、いま、何回口答えした?」
「ごめんなさい。いまのは質問とみなしてください。お願いします」
今日も姉は絶好調のようだ。
「じゃあ、まずはゴミ箱舐めて。台所の」
本当に絶好調だぁあああ!
「まず⁉」
いま、「まず」って言ったか? 続きがあるってこと?
「ゴミ箱舐めて」もひどいけど、その「まず」ってのはそれすらも霞んでくるよ、お姉ちゃん。
しかも「台所の」って、それはどうか勘弁してください。
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