5 / 18
2章.生きていく手段としてそれは別に間違っていない(豊臣隆文)
1.相互扶助な「助け合い保険」
しおりを挟む
「お嬢様には、このアプリをお勧めします」
隆文が父親にタブレットを見せながら説明を始めた。
父親といって、隆文の父親ではない。先ほど隆文の所属する保険会社で保険契約を結んだ顧客で、被保険者であるお嬢様の父親である。
さっき父親から保険‥契約書のサインをもらった営業は、その書類を持って既にこの場から立ち去った後で、今ここに居るのは、子供向けサポートアプリのセールスマンである豊臣隆文だけだった。
このアプリは、一般の契約書とは違い、毎日契約内容が「視覚で確認できる」というのが売りだった。
この保険は普通の保険とは違う。
普通の保険契約は対保険会社だから、被保険者が契約するのは勿論保険会社だ。
だけど、この保険の場合、被保険者が契約するのは保険会社が仲介した契約者なのだ。
保険会社に被保険者(この場合保護者)は、月々保険料を支払う、そして保険会社は被保険者から支払われた保険料から(勿論間を取って)雇用した「契約者」に契約料を月々支払う。
つまり、被保険者は間接的に契約者に契約料を支払い雇用しているということになる。
それは、部位によって値段が違うが、例えば心臓やら‥重要な内臓器官である場合は、下手したら契約者の父親の給料より高いってことがあり得る。だから、経済的理由で雇用契約を決めた子供にとってはそれは養育費の様なもので、実際雇用契約者(子供)が契約主(被保険者)のことを父親もしくは母親だと呼んでることも多々ある。
お互い会ったことはないが、お互いがお互いの利益‥利害が一致して契約している。
それは、一見、相互扶助の美しい関係にも見える。(実際はそんなにいい物でもないけどね)
(雇用)契約者が生きているか、元気か。それは、被保険者にとっては重要なことである。
(こんな非人道的な保険に入る位)健康に関心がある人だから、雇用契約者の健康状況が「常に気になる」という人も多いという。
自分が金を払っているものに、果たしてその価値があるか否か。
金を無駄に払っていることにならないか‥という心配。
健康かどうか気になる、心配するとかいう感情ではない。
金を貰っている以上、雇用契約者は健康に気を遣うべきだ。遣うのが当たり前だという感情だ。
雇用契約者の健康状況をより分かりやすい状態で知りたい。
このアプリ「アバターde管理」はそういう希望から生まれた「定期レポート報告サービス(雇用契約者の健康状況(但し契約している箇所に限る)を契約者に報告するサービス)」のバージョンアップ企画で、子供向けに「視覚で確認できる」アバター育成型アプリなのだ。
この目的は、視覚で分かりやすいともう一つ、情操教育の為だ。
自分が契約者を扶養している事実を知らせ、(ペットを飼育する感覚で‥)その健康状態を管理し、生命の大切さについて学ぶ機会を与えたい‥といったものだ。
まったく、情操教育が聞いて笑える。‥金持ち至高主義の‥選民思想がにじみ出たくそみたいな考え方だよ‥
隆文は常日頃からそう思ってるわけだけど、‥勿論そんな考えは顔には出さない。
「これは? 」
そこには、小さなウサギの子供が映っていた。
「このキャラクターが『(雇用)契約者』のアバターです。これを見れば『(雇用)契約者』の健康状況が一目でわかります」
首を傾げそのウサギに見入る父親に、隆文が微笑む。
父親は小さく目を見開く。
契約者と連動している‥と聞かされると、今までただの3Dの作り物にしか見えていなかったウサギが何か生々しい物に見えて来て、‥思わずゾクリと来る。
父親に隆文は小さく頷いて
「このアバターの元気がなければ、適正な指示を出したり‥病院に連絡したり、治療を養成したりすることが出来ます。お嬢様にはこのアバターの育成を通して、生命の大切さを学んでもらうことが出来る‥というのがこのアプリの狙いですね。
そして、お嬢様が理解できるようになれば、このアバターが実は本当の人間に連動しているってことを説明してあげることもいいかもしれませんね。
雇用する人間と雇用される人間が共に支え合う素晴しさに気付けるでしょう。
誰かが自分の為に犠牲になり、‥自分に何かがあったらその誰かが‥最悪命を差し出すことになるって思ったら‥より自分の事を大事に思えるようになるでしょう。
だけど‥(その事実に)罪悪感を感じ生きていくのが怖くなるようなお優しい方でしたら‥教えられない方がいいかもしれませんね」
父親は暫くそのタブレットを神妙な顔で見つめて‥考え込むような素振りを見せ、
「‥それは、その時になって考えることにします」
重々しい口調で言い、もう一度、暗い顔でそのウサギを見つめた。
‥本当はこんな保険入りたくもない。
婿養子である自分には、そんなことを義父に言えない。
自分の娘は確かに大切だが、自分の娘の為に「他の誰かの命」を‥もしもの時には犠牲になってもらう命を育てるなんて‥そんな非人道的な保険‥絶対に自分には認められない。
じくり‥と心臓が痛んだ。
隆文が父親にタブレットを見せながら説明を始めた。
父親といって、隆文の父親ではない。先ほど隆文の所属する保険会社で保険契約を結んだ顧客で、被保険者であるお嬢様の父親である。
さっき父親から保険‥契約書のサインをもらった営業は、その書類を持って既にこの場から立ち去った後で、今ここに居るのは、子供向けサポートアプリのセールスマンである豊臣隆文だけだった。
このアプリは、一般の契約書とは違い、毎日契約内容が「視覚で確認できる」というのが売りだった。
この保険は普通の保険とは違う。
普通の保険契約は対保険会社だから、被保険者が契約するのは勿論保険会社だ。
だけど、この保険の場合、被保険者が契約するのは保険会社が仲介した契約者なのだ。
保険会社に被保険者(この場合保護者)は、月々保険料を支払う、そして保険会社は被保険者から支払われた保険料から(勿論間を取って)雇用した「契約者」に契約料を月々支払う。
つまり、被保険者は間接的に契約者に契約料を支払い雇用しているということになる。
それは、部位によって値段が違うが、例えば心臓やら‥重要な内臓器官である場合は、下手したら契約者の父親の給料より高いってことがあり得る。だから、経済的理由で雇用契約を決めた子供にとってはそれは養育費の様なもので、実際雇用契約者(子供)が契約主(被保険者)のことを父親もしくは母親だと呼んでることも多々ある。
お互い会ったことはないが、お互いがお互いの利益‥利害が一致して契約している。
それは、一見、相互扶助の美しい関係にも見える。(実際はそんなにいい物でもないけどね)
(雇用)契約者が生きているか、元気か。それは、被保険者にとっては重要なことである。
(こんな非人道的な保険に入る位)健康に関心がある人だから、雇用契約者の健康状況が「常に気になる」という人も多いという。
自分が金を払っているものに、果たしてその価値があるか否か。
金を無駄に払っていることにならないか‥という心配。
健康かどうか気になる、心配するとかいう感情ではない。
金を貰っている以上、雇用契約者は健康に気を遣うべきだ。遣うのが当たり前だという感情だ。
雇用契約者の健康状況をより分かりやすい状態で知りたい。
このアプリ「アバターde管理」はそういう希望から生まれた「定期レポート報告サービス(雇用契約者の健康状況(但し契約している箇所に限る)を契約者に報告するサービス)」のバージョンアップ企画で、子供向けに「視覚で確認できる」アバター育成型アプリなのだ。
この目的は、視覚で分かりやすいともう一つ、情操教育の為だ。
自分が契約者を扶養している事実を知らせ、(ペットを飼育する感覚で‥)その健康状態を管理し、生命の大切さについて学ぶ機会を与えたい‥といったものだ。
まったく、情操教育が聞いて笑える。‥金持ち至高主義の‥選民思想がにじみ出たくそみたいな考え方だよ‥
隆文は常日頃からそう思ってるわけだけど、‥勿論そんな考えは顔には出さない。
「これは? 」
そこには、小さなウサギの子供が映っていた。
「このキャラクターが『(雇用)契約者』のアバターです。これを見れば『(雇用)契約者』の健康状況が一目でわかります」
首を傾げそのウサギに見入る父親に、隆文が微笑む。
父親は小さく目を見開く。
契約者と連動している‥と聞かされると、今までただの3Dの作り物にしか見えていなかったウサギが何か生々しい物に見えて来て、‥思わずゾクリと来る。
父親に隆文は小さく頷いて
「このアバターの元気がなければ、適正な指示を出したり‥病院に連絡したり、治療を養成したりすることが出来ます。お嬢様にはこのアバターの育成を通して、生命の大切さを学んでもらうことが出来る‥というのがこのアプリの狙いですね。
そして、お嬢様が理解できるようになれば、このアバターが実は本当の人間に連動しているってことを説明してあげることもいいかもしれませんね。
雇用する人間と雇用される人間が共に支え合う素晴しさに気付けるでしょう。
誰かが自分の為に犠牲になり、‥自分に何かがあったらその誰かが‥最悪命を差し出すことになるって思ったら‥より自分の事を大事に思えるようになるでしょう。
だけど‥(その事実に)罪悪感を感じ生きていくのが怖くなるようなお優しい方でしたら‥教えられない方がいいかもしれませんね」
父親は暫くそのタブレットを神妙な顔で見つめて‥考え込むような素振りを見せ、
「‥それは、その時になって考えることにします」
重々しい口調で言い、もう一度、暗い顔でそのウサギを見つめた。
‥本当はこんな保険入りたくもない。
婿養子である自分には、そんなことを義父に言えない。
自分の娘は確かに大切だが、自分の娘の為に「他の誰かの命」を‥もしもの時には犠牲になってもらう命を育てるなんて‥そんな非人道的な保険‥絶対に自分には認められない。
じくり‥と心臓が痛んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる