EX HUMAN

ゆんさん

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5章.憧れと、「憎い」

1.思い込みの強い幼馴染と、自分の意思がない僕

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「喜和ちゃんは‥賢いのに、頭が固いところが残念ですよね」
 上杉のオッサンを相手に、僕はため息をついた。

 今日は僕の10歳の誕生日だ。
 誕生日だからといって誕生パーティーをするわけではない。
 ‥どころか、晩御飯のおかずが一品増えるってことすらない。それは、僕が愛されてない子供だからじゃなく、‥父さんが「気が利かない」からだ。
 父さんがそんなだから、兄弟たちもそんなことに気が回らないし、お手伝いさんだってそういうことしにくい。ただそれだけのことだ。お祝いなら乳母がコッソリくれたし、喜和ちゃんも朝一番に言いに来てくれた。窓からコッソリ(驚いた僕に、「ホントは、12時になった瞬間言いたかったけど、寝てるかもしれないし‥起こしたら可哀そうでしょ」って言ってた。‥かなり引いた)。で‥「門から」来た喜和ちゃんのお兄さんたちに連れられて帰って行った。‥お兄さんたちの顔が怖かったからきっと今日は喜和ちゃんには会えないだろう。
 ‥お兄さんたち、喜和ちゃんの躾には厳しいから。
 だいたいいつも、そんな感じ。
 普通だったら何も特別なことはない日なんだけど、今日は違う。
 僕は、父さんに言われて、上杉のオッサンの家に来ている。

 僕らにとって10歳の誕生日というのは、特別意味があるんだ。
 10歳になると、里のことを説明されて、ちょっとした仕事を任される。
 お家が暗殺班である喜和ちゃんの「ちょっとした仕事」は身辺警護だった。
 初めっから依頼を受けて暗殺をするわけでは無い。
 段階を経て、暗殺者に育てていくのだ。
 どういう段階を経るのか僕は知らないし、喜和ちゃんも教えてくれないから知らないけど、暗殺班の一番初めの仕事は、非攻撃部門である情報部(軍師(司令部)、情報分析部、情報収集部)や世話方(物品調達部、調理部)の家を警護する仕事なんだ。
 保護対象を警護することによって、暗殺班としての責任感を育てる‥とかかな??

 喜和ちゃんの保護対象は我が家、足利家だったんだ。
 だから、喜和ちゃんが僕ん家にいることが多かったんだけど、別に喜和ちゃんだけが家を警護しているわけでは無い。他の家同様に、我が家が契約している警護班が常に警護している。喜和ちゃんは監督って感じかな。
 警護班は家を警護するのが仕事で、異常があれば暗殺班に知らせる。‥つまり、喜和ちゃんが不審者やなんかの処置を任されてたってわけなんだ。
 そういう報告は父さんにはいってたんだろうけど、僕には知らされていない。
 喜和ちゃんも言わない。
 いつもにこにこ僕の傍に居るだけだ。
 それはいまも続いている。

「もう僕の家の警護の担当者じゃないっていうのに‥今でも僕の家を気に掛けてくれるんですよ。多分、責任感みたいなもんでしょうね。
 だけど、‥身体を壊さないか心配じゃないですか。
 自分の仕事をしながら、でしょ? 
 休憩時間は身体を休めるとかした方がいいですよ。仕事で気を張り、休憩時間も気が休まるときがない‥とか絶対良くないですよ」
 僕がため息をつくと、上杉のオッサンは苦笑いして
「でも、気持ちはわかるな。
 初めて任された仕事って、やっぱり「特別」でいつまでも自分の仕事って感じするもんな」
 って言った。
 上杉のオッサンも喜和ちゃんも、根っからのワーカーホリックだから心配だ。
 だけど‥仕事に誇りをもって、自分の仕事に責任を持つ姿勢は見習わないとなって思う。

「僕も‥仕事に誇りを持たないとな‥」
 そう心に誓った10歳の鳴門だった。

 勿論喜和が鳴門の身辺に気をつけているのは、喜和にとって鳴門が大切な存在であるからで、初仕事だから今でも責任感を感じている‥とかじゃないんだけど、そんなことは恋愛感情に疎い鳴門や上杉のオッサンには分からないのだった。
 この話を横で聞いていた細川のダンディ・イケオジは
「何を言ってるんだ?? 」
 って呆れ顔をしていたのだが、そんなことには鳴門も上杉のオッサンも勿論気が付いていないのだった。
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