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5章.憧れと、「憎い」
3.表と裏
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「君は、日本政府とこの里は対立している存在だと思うかい? 」
この質問に、正しい答えはあるのだろうか?
一瞬そんな考えが頭をよぎったけど、正しい答えがあろうとも、僕は「分からない」んだから、僕は正直に
「分からない」
としか言えない。
僕が神妙な顔で答えると、おじ様は苦笑いして。
「ああ、そうだね。分かる分からないかって質問だと、答えは分からない‥だね。
もう一度聞きなおすね。
君はどう思う?
日本政府とこの里は対立している存在だと思う?
‥君は、日本政府は敵だとおもう? 」
って嫌に噛み砕いたような話し方をした。
でも、僕を馬鹿にしてるって感じじゃやない。「慎重に」言葉を選んだって感じだ。
「僕は‥僕はそうは‥敵だとは思わない。
今の日本政府の‥「富田の」考え方は受け入れられないし、「富田が」僕らに‥里にちょっかいを出してきてるってのは、分かるけど‥。日本政府が昔からずっと僕らに悪意を持ってたって感じはないわけだし‥。
寧ろ‥以前の日本政府は、僕らとは明確に線を引いてたって感じだったような気がします。
こっちに危害を加えなければ、勝手にしろって感じで。
富田だけが‥僕が知ってる限りですが‥異質ですよね?
だから、そうだな‥「富田は受け入れられないけど、日本政府全体に対しては敵意は持ってない」って感じです」
僕がそう言うと、おじ様は「ふうん‥成る程ねえ」って呟いた。
「成程? 」
僕は首を傾げた。
成程ってなんだ? 別に僕は‥そんなに変わったことは言っていないと思うが‥?
首を傾げる僕をおじ様は「自分の意見が言えて偉いね」って褒めた。そして、直ぐに「ああ、子ども扱いは良くないね。もう鳴門君は大人なのだからね」って謝った。
そうなんだ‥確かにそうなんだけど‥寂しい気持ちになる。
僕は母さんも居なかったし、父さんもあんなだから‥今まで僕(や僕の義理の兄弟たち)の事を褒めたり構ったりしてくれた人は少なくって、10歳になったっていうのに、愛情に対して「飽和状態」になってない。だから‥
大人にならなければならないってのは分かってるけど、「大人扱い」される覚悟がまだできていないって感じ。
おじ様は「僕をよく見ているから」僕の気持ちは分かっただろう。だけど、おじ様はあえてそのことには触れないで、話し始めた時と同じ単調な口調で
「確かに、日本政府とこの里の「本当の関係」が前提にないと、そういう解釈はあるね」
って話を続けた。
僕は頭を振って、さっきまでの自分の「甘え」を振り払う。
そして、
「本当の関係って何ですか? 」
分からないことを質問した。
おじ様は満足そうにまた軽く頷いた。そして、怖い程真剣な表情で‥
「日本政府は表で、里は影だ」
って言った。
僕は目を見開いた。
心臓がばくんとはねて‥目の前が真っ暗になった気がした。
日本政府は表で、里は影だ‥?
おじ様は僕に重々しく頷くと、また話を続ける。
「大昔、我々の祖先は日本政府と話し合い、影になることを選んだ。
‥政治はクリーンでないといけないが、政治をしていくうえではどうしてもクリーンだけではやっていけないことが出て来る。‥昔は今以上にそういうのがあった。
そういう‥「クリーンな政治」の邪魔になる者や消さないといけない情報‥そういうのを片付ける‥影の仕事を我々は引き受けて来た」
それがつまり、「日本政府は表で、里は影」ってこと‥。
ゴクリと唾を飲み込んで、僕は浅く頷いた。
「だけど‥富田は‥」
僕はその続きをどうしても言えなかった。
だけど、富田は僕らの事「政府に仇なす犯罪者集団」だって言ってるじゃないか‥。富田は日本政府の代表なのに、それ‥「日本政府は表で、里は影」を知らないの?
(おそらく血の気が引いて)真っ白な顔でおじ様を見た僕に、おじ様が頷く。
そして、ふうと深いため息をついて
「知ってるだろう。就任した際、重々言い聞かされただろうと思う。否、そう聞いても‥彼はそう認めたくなかったのだろう。頭が固いんだな。あの‥一番「大変だった頃」のことを知らない「甘ちゃん」だから‥その話を聞いても、我々のことをただのゴロツキにしかみることが出来なかった。我々のことを‥共同治世者だと認めることは出来なかった。
それどころか‥もしかしたら重々話して聞かせた「爺さんたち」のことも「ゴロツキと癒着した汚らしい政治家」だって思ったかもな! 」
と‥まるで吐き捨てるように言った。
いつも上品なおじ様がそんな風に誰かのことを言うのを聞いたのは初めてで、僕は心臓が痛くなった。
と、急に
「喉元過ぎればなんとやらで、奴らは自分たちだけで政治をして来たような気になってるんだ。自分たちの都合のいい様にしか物事を考えられない阿呆ってのはいつの時代にでもいるって話だ。
今の日本政府が光の中だけを歩いて‥ここまできたような気になってやがるんだ」
って横から口を挟んだのは、さっきまで黙って僕の横に座ってお茶を飲んでいた上杉のオッサンだ。
いつも通りの仏頂面。
だけど、この表情は‥怒ってるというより、むしろ「呆れてる」って顔。
上杉のオッサンは富田総理に対して「呆れてる」んだ。
富田総理と歴代の総理たちは「違う」。
僕らは、今まで日本政府と敵対関係にあったわけでは無い‥。
「僕らと「今までの日本政府の関係」を教えてください。
僕らの先祖と日本政府は一体、どんな約束をし、‥どんな関係だったのですか? 」
僕は、上杉のオッサンとおじ様に聞いた。
この質問に、正しい答えはあるのだろうか?
一瞬そんな考えが頭をよぎったけど、正しい答えがあろうとも、僕は「分からない」んだから、僕は正直に
「分からない」
としか言えない。
僕が神妙な顔で答えると、おじ様は苦笑いして。
「ああ、そうだね。分かる分からないかって質問だと、答えは分からない‥だね。
もう一度聞きなおすね。
君はどう思う?
日本政府とこの里は対立している存在だと思う?
‥君は、日本政府は敵だとおもう? 」
って嫌に噛み砕いたような話し方をした。
でも、僕を馬鹿にしてるって感じじゃやない。「慎重に」言葉を選んだって感じだ。
「僕は‥僕はそうは‥敵だとは思わない。
今の日本政府の‥「富田の」考え方は受け入れられないし、「富田が」僕らに‥里にちょっかいを出してきてるってのは、分かるけど‥。日本政府が昔からずっと僕らに悪意を持ってたって感じはないわけだし‥。
寧ろ‥以前の日本政府は、僕らとは明確に線を引いてたって感じだったような気がします。
こっちに危害を加えなければ、勝手にしろって感じで。
富田だけが‥僕が知ってる限りですが‥異質ですよね?
だから、そうだな‥「富田は受け入れられないけど、日本政府全体に対しては敵意は持ってない」って感じです」
僕がそう言うと、おじ様は「ふうん‥成る程ねえ」って呟いた。
「成程? 」
僕は首を傾げた。
成程ってなんだ? 別に僕は‥そんなに変わったことは言っていないと思うが‥?
首を傾げる僕をおじ様は「自分の意見が言えて偉いね」って褒めた。そして、直ぐに「ああ、子ども扱いは良くないね。もう鳴門君は大人なのだからね」って謝った。
そうなんだ‥確かにそうなんだけど‥寂しい気持ちになる。
僕は母さんも居なかったし、父さんもあんなだから‥今まで僕(や僕の義理の兄弟たち)の事を褒めたり構ったりしてくれた人は少なくって、10歳になったっていうのに、愛情に対して「飽和状態」になってない。だから‥
大人にならなければならないってのは分かってるけど、「大人扱い」される覚悟がまだできていないって感じ。
おじ様は「僕をよく見ているから」僕の気持ちは分かっただろう。だけど、おじ様はあえてそのことには触れないで、話し始めた時と同じ単調な口調で
「確かに、日本政府とこの里の「本当の関係」が前提にないと、そういう解釈はあるね」
って話を続けた。
僕は頭を振って、さっきまでの自分の「甘え」を振り払う。
そして、
「本当の関係って何ですか? 」
分からないことを質問した。
おじ様は満足そうにまた軽く頷いた。そして、怖い程真剣な表情で‥
「日本政府は表で、里は影だ」
って言った。
僕は目を見開いた。
心臓がばくんとはねて‥目の前が真っ暗になった気がした。
日本政府は表で、里は影だ‥?
おじ様は僕に重々しく頷くと、また話を続ける。
「大昔、我々の祖先は日本政府と話し合い、影になることを選んだ。
‥政治はクリーンでないといけないが、政治をしていくうえではどうしてもクリーンだけではやっていけないことが出て来る。‥昔は今以上にそういうのがあった。
そういう‥「クリーンな政治」の邪魔になる者や消さないといけない情報‥そういうのを片付ける‥影の仕事を我々は引き受けて来た」
それがつまり、「日本政府は表で、里は影」ってこと‥。
ゴクリと唾を飲み込んで、僕は浅く頷いた。
「だけど‥富田は‥」
僕はその続きをどうしても言えなかった。
だけど、富田は僕らの事「政府に仇なす犯罪者集団」だって言ってるじゃないか‥。富田は日本政府の代表なのに、それ‥「日本政府は表で、里は影」を知らないの?
(おそらく血の気が引いて)真っ白な顔でおじ様を見た僕に、おじ様が頷く。
そして、ふうと深いため息をついて
「知ってるだろう。就任した際、重々言い聞かされただろうと思う。否、そう聞いても‥彼はそう認めたくなかったのだろう。頭が固いんだな。あの‥一番「大変だった頃」のことを知らない「甘ちゃん」だから‥その話を聞いても、我々のことをただのゴロツキにしかみることが出来なかった。我々のことを‥共同治世者だと認めることは出来なかった。
それどころか‥もしかしたら重々話して聞かせた「爺さんたち」のことも「ゴロツキと癒着した汚らしい政治家」だって思ったかもな! 」
と‥まるで吐き捨てるように言った。
いつも上品なおじ様がそんな風に誰かのことを言うのを聞いたのは初めてで、僕は心臓が痛くなった。
と、急に
「喉元過ぎればなんとやらで、奴らは自分たちだけで政治をして来たような気になってるんだ。自分たちの都合のいい様にしか物事を考えられない阿呆ってのはいつの時代にでもいるって話だ。
今の日本政府が光の中だけを歩いて‥ここまできたような気になってやがるんだ」
って横から口を挟んだのは、さっきまで黙って僕の横に座ってお茶を飲んでいた上杉のオッサンだ。
いつも通りの仏頂面。
だけど、この表情は‥怒ってるというより、むしろ「呆れてる」って顔。
上杉のオッサンは富田総理に対して「呆れてる」んだ。
富田総理と歴代の総理たちは「違う」。
僕らは、今まで日本政府と敵対関係にあったわけでは無い‥。
「僕らと「今までの日本政府の関係」を教えてください。
僕らの先祖と日本政府は一体、どんな約束をし、‥どんな関係だったのですか? 」
僕は、上杉のオッサンとおじ様に聞いた。
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