村娘Aに転生しました

大和

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ちょっとかなりシリアスですが

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最後に見た光景はそれは凄惨なものだった。




その日は天気もよく仕事も休みだった私は、バスに乗り、1人、遠方にピクニックに出かけていた。え?寂しいって?彼氏いない歴=年齢の私が今更1人ピクニックとか寂しく感じたりするわけ…するわけ…ぐすん。
とにかく、その日はお弁当を朝から作って適当に敷物持って飲みもの買って楽しくピクニックに勤しんでいたわけだが。
帰り道の事だ。突然の嵐にあい、バスが煽られ、あげくスリップ、横転、国道沿いでの乗用車やトラックなどを含む車10台以上を巻き込んだ玉突き事故となってしまった。私は、横転した衝撃で殆ど満員状態だったバスの乗客に押し潰されるような形で意識を失ってしまった。どれ位意識が無かったか分からない。意識が浮上した時に見えたものは…ガラスの破片や形が変形した窓枠に突き刺さった人や後ろから突っ込んできた車の衝撃で潰されてしまった人の手や足、ガソリンの臭いと救急車や消防車の音、泣き叫ぶ声、避難支持をする救助隊の声。私の周囲に聴こえるうめき声。
苦しい、痛い、死にたくない、言葉や悲鳴が聴こえる、けれど、私自身声も出ないし、自分の手足の感覚すら既になく、遠のく意識をただひたすらに聴こえてくる音や声を頼りにして繋いでいるのが現実だった。

「すぐに助けますから!」

と声がかかった時には既にうめき声の半分は消えてしまっていて、正直、私自身ももう限界だった。死にたくない、まだやり残した事は沢山ある。彼氏も欲しい、子供だって欲しい…けれど、もう、私の目には光が視えず、音すら遠くなってきた。




ああ、死ぬのかな…。





生まれ変わるなら…生まれ変わるなら…











そこで私の意識はぷつりと途切れた。















目が覚めた時、私の視界はぼやけていた。音もまだよく聴こえない、けれど、助かったのかと私は安堵した。
手足がうまく使えないのはこの際仕方ない、命があるだけ儲けものだ。そう思ってゆっくり口を開く、何とか動かせそうだと開口して、力を振り絞った言葉が「あうー」しか話せなかったびっくりした。渾身の力で動かした手が頬に触れた時にようやく自分の異変に気がついた。


…私は赤ん坊の中にいるのだと。


というより私が赤ん坊なんですかね、乗り移ったとかじゃなくて?いや、乗り移るのも気持ち悪いし変な話なんだけど、でも、それよりも深刻で…これって…生まれ変わったって事になるんすかね…


…ほんとにあるんだなこんな事…



そんなわけで、生まれ変わった私は、新たな両親にユエルと名付けられ、女の子として新たな生を受けた。生前は日本人、高橋桜という名前だったが、今度はユエルという名前を頂いた私。
は?海外?!海外なの!?私英語とか無理無理!とか思っていた時期もありました。でもよくよく話している言葉を聴いていると言葉は日本語でも英語でもないようだったんだよ、でも何となく理解出来たよ、まあ、もちろん何となくで、赤ちゃんに全部理解しろとかまず無理な話である。
新しい母、マリは肝っ玉母さんタイプのお母さんで父はがっちりした体格の背の高い子煩悩愛妻家の細マッチョ系パパンだった。兄妹は年の離れた12歳マリエッタと15歳リリアーナという2人の姉と7歳の兄トーマがいた。ていうか待って、両親いくつよ、と思った私は日本人としてはおかしくないと思う。パパンママン…まだ現役なんだな、あなた方…

それから、視界がはっきりしてくるようになって気づいた事が他にもある。
まず、外に出てみて気づいた事。ここは私が生前育った場所とは世界観からして違うという事だ。両親は農業で生計を立てており、主な作物はピラーというピーマンのような野菜と米と麦だ。産後の母の体調が良くなってから一緒に畑に行ってはお兄さんのトーマが揺りかごを揺らしながら面倒を見てくれてその間に畑をやるのが日課だった。そこで初めて外にでて驚いた。空の向こうには半透明の膜のようなものに覆われていた。その向こう側は見えないが、膜にはヒビが入っておりヒビの真ん中にあるのが太陽だった。太陽が次第に沈むのではなく、太陽が欠けていくのがこの世界の常識で、欠けた太陽と比例して反対側に月が現れる仕組みになっていた。時間の経過も太陽と月の満ち欠けで判断される。でも不思議なのは太陽は完全に満ちた状態からでないと明るさを発揮しないという事だ。謎すぎる…。
それからこの世界では魔獣というものがいるという事。
私がいた村では比較的大きなものはいなかった。兎に牙がついたのとか、スライムみたいに跳ね回るのとか、作物を食い荒らす土竜みたいなのとかが主らしい。小さな私の前に跳ね回るスライムが来た時にはびっくりして泣いたわ、目一杯。赤ちゃんだもの!意識はアラサーだろうが肉体赤ちゃん、生後数ヶ月たたない赤ちゃんだもの!怖いよ!そんなものを見ちゃったものだから、これはもうファンタジー世界に私は入り込んだんだって思うしかなかったのですよ。
それでも、同じものもあった、例えば紙やナイフフォーク、離乳食が始まった頃に気がついて嬉しくなって握ったまま感動した。だから同じようなものを探すのに幼少期は凝っていた。
例えば家具や食器、それ以外だとお金。
この世界では金貨、銀貨、銅貨、銭と四つのコインで支払いをするようになっているが、日本円に変えると金貨が万札、銀貨が千円札、銅貨が百円玉、銭が十円玉のように使う。計算方式も十進法で分かりやすい。しかも物価は日本より安く、金貨は庶民には出回らないようだ。
あとは水。私が住むラーニャ村は山からの湧き水があり、軟水でかなり水は美味しい。その湧き水がすごく美味しくて感動した。日本は軟水の国だから硬水が口に合わなかったらどうしようかと思っていた。
他にもあるが、そうやって同じ所違う所を探したり、毎日考えたり見たり聞いたりが楽しくて、あっという間に私は月日がすぎていた。




「月日って早い…」

ぼそっと呟きながら私は目の前の竹かごを編んでいた。内職だ。
私は現在24歳になっていた。
いきなり幼少期から飛びすぎだろうとか思った方もいるだろうが許して欲しい。この24年を語るには長く長い道のりがあるのである。
それはさておき、今の私は一人暮らしである。ラーニャ村に在住なのは変わらない。両親が少し前にある事件で亡くなってしまい、兄トーマは何年か前に自警団に入り王都に、姉2人は離れた街に嫁に行っていた為に現在1人で身辺整理の真っ最中だ。亡くなった母達が残した仕事をやりながら思い出の品と売りに出す品を分け、更には旅支度までしている。商家に嫁いだ姉リリアーナの家に来ないかと誘われた為だ。
畑の収穫期も終わり、周囲の協力もあって、村の全ての収穫も無事に終えた。あとはこの内職を納品したら終わりだというのに……。

「今日も可愛いなユエル」
「それはどうも」

私のあまり長くない髪を右手で触り、ながら私の横でニコニコと頬杖をつく美少年が邪魔をしては私に可愛いとか囁いたりするんで進まない、いくら美少年だったとしても!1人静かに黙々と作業したいのに私の手を止めさせては手を握ってきたり(振り払うけど)手にキスしようとしたり(させないけど)するんですよ!仕事!仕事させて!!

「勇者様…邪魔しないで下さいって私言いましたよね?既に3回くらい」
「キールって呼べって言っただろ?」
「…キール様、邪魔しないで下さい」
「つい可愛くて触りたくなるんだよ仕方ない」
「いや、全然仕方なくなんかないですから、これっぽっちも仕方なくないですから!」
「仕方ないだって可愛いんだから」

このやり取りも果たして何回目だろうか。事の発端は、先日、両親が亡くなった日に遡る。
私は両親とその日山菜採りに山に行っていた。
ラーニャ村の裏に聳えるアスカーナ山は野草や山菜も豊富で竹籠の材料から食材まで手に入る恵みが豊かな山だ。この世界には各地域各国に神様が祀られていて、祀られていてる神様の特色が=その地の加護に直結している。私達が暮らすラーニャ村はセレスティア王国と呼ばれる国で神様は大地の女神アストリア。だから緑と農業が発達した国で作物に困ることがないのだとか。今晩の食材を探す為に山へ入った私達は、母と私で山の幸を集め、父は川魚を採るため罠を作っていた時だ。山の上から大きな地響きと共に巨大な猪のような赤黒いラバンという魔獣がとんでもない速度で木々を薙ぎ倒しながら走ってきたのだ。しかも群れで。私達はもちろん逃げた、が、追いかけられた。村にこれらを連れていくわけにはいかないと村とは反対に走った。けれど、倒れた木々に両親は下敷きになり、私はといえば両親が突き飛ばし助けてくれた勢いで木に脚を挟まれ動けなくなってしまった。
直ぐそこまできたラバンに私は死を覚悟した。


また…



そうまた…だ。



生前、いや、前世、バスの事故で私は死んだ。両親が木の下敷きでピクリともしなくなってあの時の事がまざまざと蘇る。何も出来ない無力さと、恐怖と、焦燥で涙が溢れて前が見えなくなる、叫びたくても怖くて怖くて声すら出てこない、また、私は死ぬのか。いやだいやだいやだいやだ!!誰か、助けてっと、必死に祈った。神様がいるなら助けてくれと。その時だ、目の前に風が、突風が吹いた。刹那、凄い勢いで直進してきていたラバン達の体が宙に浮き上がり、風に巻き込まれて消えた。

「大丈夫か」

背後から声が聴こえ、恐る恐る顔を向けると、ラバンのいた方に向けて手をかざしている少年がいた。年の頃は17、8位、まだ幼い顔立ちの美少年だった。
近づき、跪き、私の足に手をかざす。ぶわりと周りに風がおき、風が私の足を挟んでいた木を退けてくれた。私は助かったのかと呆然となって、彼を見上げる。

「もう、大丈夫だ」

そういって頭を撫でた。両親が…と指を指した先を見て直ぐに後ろにいた仲間の人が助けようと木々を動かしてくれた。だが、息のない両親に仲間の人は「残念だが…」と首を振る。
涙が止まらなかった。そんな私を慰め助けてくれたのが彼、キール・スタウト・ノックその人だった。

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