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勇者キールの事
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キール・スタウト・ノック
2年程前にこの世界の人類と魔界との戦争を終わらせ、当時の魔王を廃位させたとされる勇者、当時はまだ15歳だったと噂で言われていた。
勇者様のおかげで救われたという村や街も数多く、茶髪に碧眼でかなり美少年らしいとは聞いていた。噂には聞いていた。
だが、しかーし!
「ん?どうかしたか?」
「近い!顔が近いです!」
「…キス、してもいい?」
「いいわけあるかぁ!!」
考え事してる間に間近に迫った勇者の顔をばしーんっと片手で反射的に叩いた。小気味いい音と共に勇者の頬には私の平手型がついたが、すぐに消えた。どうやら勇者であるこの美少年には精霊の加護やらなんやらついていて、簡単な傷はすぐに癒えるらしい。くっそう、チートかよぅ。
「キール、いい加減にしなよ、ユエル、困ってるだろ?」
「アデールこそ、邪魔だろ?」
「少なくともアデールさんは手伝ってくれてるのでキール様より全然助かってます」
「…む…」
作業していた私の傍に静かに温かなお茶を運んでくれて、且つ私の作業を手伝ってくれるために向かい側に座った綺麗なお姉さんが呆れたように呟きながらぐいっと勇者の襟首を掴み私から引き離してくれた。
彼女はアデール、魔族らしいけど、勇者のパーティに入っているらしい。
狼の耳に尻尾があってもふもふで、ふかふかの尻尾に触りたくなる私がいます。銀の髪と毛づやが綺麗なスレンダー系お姉さんである。パーティでは最年長らしい、お姉さんお幾つ…?
「キール、ユエルの気が引きたいならまずは手伝いな」
「いや、気は引かなくていいんですが」
「ユエル、キールには凄いハッキリいうよね…」
「曖昧に答えるの良くないと身にしみてますから」
「キールあんた何したの…?」
「まだ何もしてないし、させて貰ってないさ、夜も一緒には寝てくれないし」
「気がついたら寝室にいてびっくりしました」
「まだ手を繋がせても貰えないし」
「勝手に触っては魔法で離れなくしてくるじゃないですか」
「キスだってしてないよ?」
「そんな関係じゃないですからね」
竹かごを編みながらアデールさんの質問に答える勇者に私が突っ込みを入れた。
そんな私のツッコミに頭を抱えるアデールさんが「お前は…」と勇者の頭を叩いた。
「バカか?それはまるっきりストーカーではないか、変質者と何ら変わらんだろう、全く…、お前の教育を間違えたか…?」
「そもそもアデールに育てられた覚えないけどね」
ムスッとしながらアデールさんに怒られる勇者。そうしていると年相応なんだけど、見た目に騙されてはいけない。見た目は美少年だが中身は核兵器だから!歩く兵器だから!!
「ユエル、今日は私も泊まらせてもらってもいいかな、今日はこいつが入ってこないように見張るよ」
「えっ!いらないよ!そんな事したら僕が夜ユエルに夜這い出来ないじゃん」
「その為に泊まるんだバカ!」
ゴインと小気味いい音がしてめいっぱい殴られた勇者はアデールさんに部屋から外に放り出された。
ピシャリと締め出すと勇者が入ってこないように魔法までかけた。
「付け焼き刃だろうけどねあいつには」
と言いながらやれやれと椅子に座る。
仲良しというか、気兼ねない仲間な感じがして不思議といい兄弟のように見えた。
「アデールさん、勇者様と仲良しなんですね」
「まあ、な、あいつの親には世話になってるしな、あいつ自身も放っておけなくてつい世話を焼いちまうんだ」
悪いな、と私の頭に手を伸ばしくしゃりと撫でた。
「キールは、…あんな能力持っちまっただろ?昔は家族以外からは大分手酷い扱いを受けててな、身分はあるけど貧乏で没落寸前の貴族だったんだけど、あそこの両親は楽天家で底なしに明るくてな、最後には女神様の思し召しだ、きっとお前に力があるのには訳があるはずだって言い聞かせてたんだけど、ある時神殿で本当に加護を受けてる事がわかって、家族だけじゃなく、今まで手酷い扱いしてた奴らまで手のひら返しだ、人間不信にならないわけないさ、みーんな、勇者勇者って持て囃す、でも、あいつは知ってる。勇者って言いながら神殿はアイツを研究対象にしか見てないし、周囲の人間は畏怖してるか、モノにしようとするか…大体どっちかだからさ」
「子供なのに、壮絶というか…」
「まるで寝物語の本の主人公のような人生だなって、昔本人も笑ってたさ、でも、だから甘えられる人間は少なかったんだ、すだからかな…あーんなに歪んだのは」
歪んだって言ったね?今歪んだって言いましたね??シリアスどこいったの?アデールさん!ていうかそんな重い内容話していいわけ?!
「今まで興味ないものには去るものは追わず、だったのに、アンタに凄い懐いたろ?びっくりしてるんだ私達みんな」
「私もびっくりです、おかしいです私何もしてないし」
好かれるような行動をとった覚えありませんが!?
「大体、贅沢ですよ…あんな能力持って生まれて、そりゃあ苦労も沢山あるでしょうけど?苦労しないで生きる人間なんていやしないんですからと、思う自分もいるんですよ?だから、なんて言うか…周りのやつらなんか利用しちゃえばいいんですよ、離れたいやつは無視しちゃえばいい」
「凄いこというね」
「私は基本的に好きな人さえ幸せだったら他割とどうでもいいんで、狭く深いお付き合いで生きていきたいんです、だからキール様に懐かれると正直周りがうざくて…」
「あー…それはごめん、ホントにごめん」
「アデールさんのせいじゃないですから」
「とりあえず、キールが何かしてきたら全力で止めたげるから許して!」
「よろしくお願いします!」
がっちり硬い握手を交わすと私達は残りのかごを編み終わる。
明日はこれを納品するために出かけなきゃ。
今日はアデールさんと一緒に寝た。
案の定勇者は夜這いとやらに来て3回ほどアデールさんにどつかれて追い出された。
今日は安心して眠れる。ありがたい。
おやすみなさい。
2年程前にこの世界の人類と魔界との戦争を終わらせ、当時の魔王を廃位させたとされる勇者、当時はまだ15歳だったと噂で言われていた。
勇者様のおかげで救われたという村や街も数多く、茶髪に碧眼でかなり美少年らしいとは聞いていた。噂には聞いていた。
だが、しかーし!
「ん?どうかしたか?」
「近い!顔が近いです!」
「…キス、してもいい?」
「いいわけあるかぁ!!」
考え事してる間に間近に迫った勇者の顔をばしーんっと片手で反射的に叩いた。小気味いい音と共に勇者の頬には私の平手型がついたが、すぐに消えた。どうやら勇者であるこの美少年には精霊の加護やらなんやらついていて、簡単な傷はすぐに癒えるらしい。くっそう、チートかよぅ。
「キール、いい加減にしなよ、ユエル、困ってるだろ?」
「アデールこそ、邪魔だろ?」
「少なくともアデールさんは手伝ってくれてるのでキール様より全然助かってます」
「…む…」
作業していた私の傍に静かに温かなお茶を運んでくれて、且つ私の作業を手伝ってくれるために向かい側に座った綺麗なお姉さんが呆れたように呟きながらぐいっと勇者の襟首を掴み私から引き離してくれた。
彼女はアデール、魔族らしいけど、勇者のパーティに入っているらしい。
狼の耳に尻尾があってもふもふで、ふかふかの尻尾に触りたくなる私がいます。銀の髪と毛づやが綺麗なスレンダー系お姉さんである。パーティでは最年長らしい、お姉さんお幾つ…?
「キール、ユエルの気が引きたいならまずは手伝いな」
「いや、気は引かなくていいんですが」
「ユエル、キールには凄いハッキリいうよね…」
「曖昧に答えるの良くないと身にしみてますから」
「キールあんた何したの…?」
「まだ何もしてないし、させて貰ってないさ、夜も一緒には寝てくれないし」
「気がついたら寝室にいてびっくりしました」
「まだ手を繋がせても貰えないし」
「勝手に触っては魔法で離れなくしてくるじゃないですか」
「キスだってしてないよ?」
「そんな関係じゃないですからね」
竹かごを編みながらアデールさんの質問に答える勇者に私が突っ込みを入れた。
そんな私のツッコミに頭を抱えるアデールさんが「お前は…」と勇者の頭を叩いた。
「バカか?それはまるっきりストーカーではないか、変質者と何ら変わらんだろう、全く…、お前の教育を間違えたか…?」
「そもそもアデールに育てられた覚えないけどね」
ムスッとしながらアデールさんに怒られる勇者。そうしていると年相応なんだけど、見た目に騙されてはいけない。見た目は美少年だが中身は核兵器だから!歩く兵器だから!!
「ユエル、今日は私も泊まらせてもらってもいいかな、今日はこいつが入ってこないように見張るよ」
「えっ!いらないよ!そんな事したら僕が夜ユエルに夜這い出来ないじゃん」
「その為に泊まるんだバカ!」
ゴインと小気味いい音がしてめいっぱい殴られた勇者はアデールさんに部屋から外に放り出された。
ピシャリと締め出すと勇者が入ってこないように魔法までかけた。
「付け焼き刃だろうけどねあいつには」
と言いながらやれやれと椅子に座る。
仲良しというか、気兼ねない仲間な感じがして不思議といい兄弟のように見えた。
「アデールさん、勇者様と仲良しなんですね」
「まあ、な、あいつの親には世話になってるしな、あいつ自身も放っておけなくてつい世話を焼いちまうんだ」
悪いな、と私の頭に手を伸ばしくしゃりと撫でた。
「キールは、…あんな能力持っちまっただろ?昔は家族以外からは大分手酷い扱いを受けててな、身分はあるけど貧乏で没落寸前の貴族だったんだけど、あそこの両親は楽天家で底なしに明るくてな、最後には女神様の思し召しだ、きっとお前に力があるのには訳があるはずだって言い聞かせてたんだけど、ある時神殿で本当に加護を受けてる事がわかって、家族だけじゃなく、今まで手酷い扱いしてた奴らまで手のひら返しだ、人間不信にならないわけないさ、みーんな、勇者勇者って持て囃す、でも、あいつは知ってる。勇者って言いながら神殿はアイツを研究対象にしか見てないし、周囲の人間は畏怖してるか、モノにしようとするか…大体どっちかだからさ」
「子供なのに、壮絶というか…」
「まるで寝物語の本の主人公のような人生だなって、昔本人も笑ってたさ、でも、だから甘えられる人間は少なかったんだ、すだからかな…あーんなに歪んだのは」
歪んだって言ったね?今歪んだって言いましたね??シリアスどこいったの?アデールさん!ていうかそんな重い内容話していいわけ?!
「今まで興味ないものには去るものは追わず、だったのに、アンタに凄い懐いたろ?びっくりしてるんだ私達みんな」
「私もびっくりです、おかしいです私何もしてないし」
好かれるような行動をとった覚えありませんが!?
「大体、贅沢ですよ…あんな能力持って生まれて、そりゃあ苦労も沢山あるでしょうけど?苦労しないで生きる人間なんていやしないんですからと、思う自分もいるんですよ?だから、なんて言うか…周りのやつらなんか利用しちゃえばいいんですよ、離れたいやつは無視しちゃえばいい」
「凄いこというね」
「私は基本的に好きな人さえ幸せだったら他割とどうでもいいんで、狭く深いお付き合いで生きていきたいんです、だからキール様に懐かれると正直周りがうざくて…」
「あー…それはごめん、ホントにごめん」
「アデールさんのせいじゃないですから」
「とりあえず、キールが何かしてきたら全力で止めたげるから許して!」
「よろしくお願いします!」
がっちり硬い握手を交わすと私達は残りのかごを編み終わる。
明日はこれを納品するために出かけなきゃ。
今日はアデールさんと一緒に寝た。
案の定勇者は夜這いとやらに来て3回ほどアデールさんにどつかれて追い出された。
今日は安心して眠れる。ありがたい。
おやすみなさい。
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