エマ・ケリーの手紙

山桜桃梅子

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タウンハウスの訪問者

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エマはただ呆然と部屋の景色を一点見つめていた。

(私が悪いわ……)

喜びで胸を満たすような素敵な台詞を、まるで懺悔するかのように伝えなければならなかったアランは、どれほど悩んで声に出したのだろう。
「早く気づいて欲しい」、「もう苦しい」と言われている気がした。
告白がこれほど寂しい気持ちにさせるのは何故だろうと涙が滲む。



そんな時ふと、幼なじみであるアメリアの言葉が今頃になって深く胸を抉る。
「アランはいつもエマを取られると思って焦っていたの。いつまでも幼なじみ気分で、父親同士が取り決めただけの婚約だと疑わないアナタには、到底理解出来ないでしょうけど」

父にまで言わせてしまった。
「もし本当に辛いのなら。婚約はなかったことにしていい」と。

友人のアイヴィーも、
「前でしたら婚約者様の話題を避けられているようでしたから」と、いつまでも自分本位で、彼自身を見つめようとせずに甘んじてきた証拠だと思う。

(それはお気の毒様と言われるわ。今更、意識してみようだなんて……遅すぎたのね)

エマが落ち着かせようと手を重ねる。


「アラン、こちらへ座って……」


長椅子に促し腰を下ろした相手を見つめると、叱られることを恐れる子供のような表情で言葉を待っていた。
今なら何となく理解出来る。

(たくさん我慢して、情緒が不安定なのね)

伝えるつもりはなかったとでも言いたそうに瞳が揺れる婚約者を見て、この場面を茶化してはならないと向き合い、本音を話すことにした。


「ねえアラン。私も同じ言葉を貴方へ持っているわ……ただそれが恋人としてなのか、幼なじみで友達としてなのかを問われると、まだきちんと整理がついていないの」

「分かっている」


思い返せば行動や仕草、表情を見ていれば、すぐに分かりそうなことならたくさんあったはず。
周りが諭すことも何度だってあった。
それを反発心や対抗心、そして自身が見て見ぬふりをして避けてきたのだ。
その結果がこれでは、あまりにも眼前の婚約者が可哀想で、いじらしいとさえ思う。


「でもね、何となく分かりそうな気がするの。この気持ちはきっとすぐに貴方と同じ方向を向くわ」

「ありがとうエマ。いつまでも待つよ」

「ええ、私の方こそ。気持ちを伝えてくれてありがとうアラン」

「……もう、戻ろう」


自然に手を取り合い応接間を出る。


「アラン。卒業パーティー、必ず行くわ」


安心させるよう微笑むと、そのエメラルドのような緑色の瞳が、嬉しそうに一つ瞬いた。


「ああ、またエマの綺麗に着飾った姿も、会えることも。本当に楽しみにしている」


そんな素直な言葉を聞いて、エマは今日誕生日パーティーでアランに会えたこと、こうしてきちんと話せたこと。恥ずかしく、また申し訳なく思いながらも本当に良かったと感じていたのだった。
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