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伯爵令嬢、エマ・ケリー
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途中、後ろから鈴を転がすような声がかかる。
「エマ様ではなくて?」
立ち止まり身体ごと向けると、相手の令嬢が深く礼をしてその綺麗な顔を上げた。
「ご機嫌よう、先日はとても素敵な贈り物を感謝申し上げます。素敵な婚約者様とご参加なさると思っておりましたから、お会い出来ることを楽しみにしてましたのよ」
「まあ、ウィロウ様ではないの。こちらこそ先日のお茶会では素敵な手土産を戴きまして感謝しております。麗しのご令嬢と名高い貴女のこと、必ずお会い出来ると思っておりました。嬉しいですわ」
互いに好戦的な視線を交わすが、もちろんパートナーは会釈するだけで気付いていない。
するとウィロウが口角を更に上げ言う。
「そうそう、先ほど夕暮れに染まるシクラメンを馬車の中から見かけましたの。それは懸命に咲こうと可愛らしい花でしたわ」
「……そうでしたの。ウィロウ様は目が良いのね。ありがとう、私も後で拝見してみますわ」
「ええ、でもお気をつけて? 道端の花って。毒が伝染っているものも一緒かもしれませんでしょう?」
ウィロウが得意の言い回しで告げている。
子爵令嬢のリリィと手を組んでいる人間がいるかもしれないと言うのだ。
「そうね、その通りですわ。安易に手を伸ばさないようにしなければね……」
「あらあら私ったら、申し訳ございません。お二方の足をお止めしてしまいましたわね。それではエマ様、ダンスとても楽しみにしておりますわ。賞賛の嵐でございましょうね……くれぐれも人の目に酔って溺れませんことを」
「肝に銘じておきますわ」
にっこり互いに微笑み合い、膝を折って顔を反らしてまた歩き出した。
(どうせ得意のダンスで酔いしれて調子に乗っている間に、何か起こることを楽しみにしているのでしょうね)
相変わらず下衆な楽しみ方をするものだと、表情を変えずに胸中やきもきしていれば、アランが一言、
「なあ、ここに来る時にそのような花など見たか?」
と呑気に耳打ちするので、エマは満面の笑みで「貴方は気にしなくていいのよ」と続けた。
「私と踊るダンスのことだけを考えていて?」
「それは、エマだけを見ていろってことか?」
はっ、と恥ずかしいことを言ってしまったと口ごもったが。まあ、それも悪くはないと頷いた。
「そういうことよ」
「それなら言われるまでもないな」
そんな風に返されてしまえば、心配事など吹き飛んでしまうと思いながら。
何を心配しているのだろうと頭の片隅に疑問が浮かぶ。
(まあ……もう何だっていいわ)
「仕方のない人ね」
「お互い様だろ」
アランが笑うので、確かにそうか、と釣られてしまう。きっと今日このパーティーで何か起きても、何だかんだ上手くことを終えるのではないかと思うくらいには、今の関係が悪くないと安心してしまった。
「エマ様ではなくて?」
立ち止まり身体ごと向けると、相手の令嬢が深く礼をしてその綺麗な顔を上げた。
「ご機嫌よう、先日はとても素敵な贈り物を感謝申し上げます。素敵な婚約者様とご参加なさると思っておりましたから、お会い出来ることを楽しみにしてましたのよ」
「まあ、ウィロウ様ではないの。こちらこそ先日のお茶会では素敵な手土産を戴きまして感謝しております。麗しのご令嬢と名高い貴女のこと、必ずお会い出来ると思っておりました。嬉しいですわ」
互いに好戦的な視線を交わすが、もちろんパートナーは会釈するだけで気付いていない。
するとウィロウが口角を更に上げ言う。
「そうそう、先ほど夕暮れに染まるシクラメンを馬車の中から見かけましたの。それは懸命に咲こうと可愛らしい花でしたわ」
「……そうでしたの。ウィロウ様は目が良いのね。ありがとう、私も後で拝見してみますわ」
「ええ、でもお気をつけて? 道端の花って。毒が伝染っているものも一緒かもしれませんでしょう?」
ウィロウが得意の言い回しで告げている。
子爵令嬢のリリィと手を組んでいる人間がいるかもしれないと言うのだ。
「そうね、その通りですわ。安易に手を伸ばさないようにしなければね……」
「あらあら私ったら、申し訳ございません。お二方の足をお止めしてしまいましたわね。それではエマ様、ダンスとても楽しみにしておりますわ。賞賛の嵐でございましょうね……くれぐれも人の目に酔って溺れませんことを」
「肝に銘じておきますわ」
にっこり互いに微笑み合い、膝を折って顔を反らしてまた歩き出した。
(どうせ得意のダンスで酔いしれて調子に乗っている間に、何か起こることを楽しみにしているのでしょうね)
相変わらず下衆な楽しみ方をするものだと、表情を変えずに胸中やきもきしていれば、アランが一言、
「なあ、ここに来る時にそのような花など見たか?」
と呑気に耳打ちするので、エマは満面の笑みで「貴方は気にしなくていいのよ」と続けた。
「私と踊るダンスのことだけを考えていて?」
「それは、エマだけを見ていろってことか?」
はっ、と恥ずかしいことを言ってしまったと口ごもったが。まあ、それも悪くはないと頷いた。
「そういうことよ」
「それなら言われるまでもないな」
そんな風に返されてしまえば、心配事など吹き飛んでしまうと思いながら。
何を心配しているのだろうと頭の片隅に疑問が浮かぶ。
(まあ……もう何だっていいわ)
「仕方のない人ね」
「お互い様だろ」
アランが笑うので、確かにそうか、と釣られてしまう。きっと今日このパーティーで何か起きても、何だかんだ上手くことを終えるのではないかと思うくらいには、今の関係が悪くないと安心してしまった。
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