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伯爵令嬢、エマ・ケリー
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ホールに戻ったエマの視線の先には、いつも良くしてくれる公爵令嬢のエルシー。
まさに今、リリィの手を取り優しい雰囲気で声を掛けているではないか。
まったく、頭のキレる方、と苦笑した。
(公爵令嬢が大切なご友人のフォローに回ってあげているのか、憐れで可哀想な人間に手を貸してあげているのか……どちらにしろエルシー様は慈悲深い女性の印象よね)
絶対に敵には回したくないと思う。
何せ「病害虫だって、元々いた長閑な田舎の庭の方が、きっと居心地が良いでしょうから」などと世間話のようにする人間性も持ち合わせていることをエマは知っているのだから。
そんなこともつゆ知らず、リリィが嬉しそうに感極まった表情を浮かべている。
しかし噂が彼女の家に届くまでの間、話の種として遊んでやろうというのが本質なのだ。
周囲の心理として、関わりたくはないがその手の話は詳しく聞きたいと思うはず。
きっとエルシーにはこの先の茶会やパーティーの招待状が屋敷の天井に積み上がるほどに届くだろう。
そこでエマの醜聞は流れないよう手を回してくれる約束はしたが、今日この卒業パーティーで起こった出来事が漏れないことまでは含まれていない。
「皆様、これは秘密なのだけれど……」
こんな話の切り出し方をするエルシーに、令嬢たちが高ぶる様子がゆうに浮かぶ。
その頃には、元々病弱なことをこれ幸いと家長が領地のベッドの上に、またリリィを縛り付けることなど誰もが想像つく。
互いに愛し合っているご令嬢から婚約者を奪おうと、出鱈目な言いがかりをつけた非常識な女。
そんな話題で皆、紅茶をお代わりして盛り上がることだろう。
この先迎える成人の儀でもあからさまな視線を向けられ、縁を結ぼうなどという歳近い者も現れることはない。
まともな家ならば式典の出席は断り、婚期が過ぎる年齢まで領地に閉じ込めておくことを贖罪とするはずだ。
「アラン、もう失礼しましょうか」
「そうだな」
この場で許すつもりもないが、体裁から恩情として声をかけたところでもっと惨めにさせ追い込むことになる。
何よりエルシーの行動が無駄になってしまうし、逆上でもされたらそれこそ大事だと、この場を黙って先に去ることがリリィへの最大の恩情なのだとエマは思う。
ホールを出ようと扉を目指しアランと歩むと、ウィロウがこちらに向かってきて礼をする。
二人はまた立ち止まり、エマはあの時に頭を冷やしてくれてありがとう。と言うようにウィロウより頭を低く下げた。
「お帰りの道中お気をつけて……」
視線を上げるとウィロウが扉の近くに白けた目をやっている。
その先を追うと。最初にリリィと話をしていたあの公爵令嬢が、こちらに好奇な目を向けていたのだった。
「ありがとうございますウィロウ様」
どんな形であれあの時のお礼も含めて言えたことは嬉しく思う。
そうして二人は互いの方向へと足を進めた。
まさに今、リリィの手を取り優しい雰囲気で声を掛けているではないか。
まったく、頭のキレる方、と苦笑した。
(公爵令嬢が大切なご友人のフォローに回ってあげているのか、憐れで可哀想な人間に手を貸してあげているのか……どちらにしろエルシー様は慈悲深い女性の印象よね)
絶対に敵には回したくないと思う。
何せ「病害虫だって、元々いた長閑な田舎の庭の方が、きっと居心地が良いでしょうから」などと世間話のようにする人間性も持ち合わせていることをエマは知っているのだから。
そんなこともつゆ知らず、リリィが嬉しそうに感極まった表情を浮かべている。
しかし噂が彼女の家に届くまでの間、話の種として遊んでやろうというのが本質なのだ。
周囲の心理として、関わりたくはないがその手の話は詳しく聞きたいと思うはず。
きっとエルシーにはこの先の茶会やパーティーの招待状が屋敷の天井に積み上がるほどに届くだろう。
そこでエマの醜聞は流れないよう手を回してくれる約束はしたが、今日この卒業パーティーで起こった出来事が漏れないことまでは含まれていない。
「皆様、これは秘密なのだけれど……」
こんな話の切り出し方をするエルシーに、令嬢たちが高ぶる様子がゆうに浮かぶ。
その頃には、元々病弱なことをこれ幸いと家長が領地のベッドの上に、またリリィを縛り付けることなど誰もが想像つく。
互いに愛し合っているご令嬢から婚約者を奪おうと、出鱈目な言いがかりをつけた非常識な女。
そんな話題で皆、紅茶をお代わりして盛り上がることだろう。
この先迎える成人の儀でもあからさまな視線を向けられ、縁を結ぼうなどという歳近い者も現れることはない。
まともな家ならば式典の出席は断り、婚期が過ぎる年齢まで領地に閉じ込めておくことを贖罪とするはずだ。
「アラン、もう失礼しましょうか」
「そうだな」
この場で許すつもりもないが、体裁から恩情として声をかけたところでもっと惨めにさせ追い込むことになる。
何よりエルシーの行動が無駄になってしまうし、逆上でもされたらそれこそ大事だと、この場を黙って先に去ることがリリィへの最大の恩情なのだとエマは思う。
ホールを出ようと扉を目指しアランと歩むと、ウィロウがこちらに向かってきて礼をする。
二人はまた立ち止まり、エマはあの時に頭を冷やしてくれてありがとう。と言うようにウィロウより頭を低く下げた。
「お帰りの道中お気をつけて……」
視線を上げるとウィロウが扉の近くに白けた目をやっている。
その先を追うと。最初にリリィと話をしていたあの公爵令嬢が、こちらに好奇な目を向けていたのだった。
「ありがとうございますウィロウ様」
どんな形であれあの時のお礼も含めて言えたことは嬉しく思う。
そうして二人は互いの方向へと足を進めた。
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