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待ち侘びた時と純白の花嫁
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ついには体調を崩し、エマはベッドの中でたいして興味も無い物語のページをただ捲っている。
考えることはやはりアランのことで。
シャツに水を掛けたこと。あの時は「可愛げが無い」と言われ頭にきた。
またリリィの茶会に呼ばれ、アランが勘違いから嫉妬をして……初めてキスをしたこと。
その後の初めての手紙は色気も何もなかった。
クリスマス・イブに出掛けたこと、誕生日でされた告白、心が通じ合った卒業パーティー、デビューダンスのあの台詞。
他にもたくさんのことを思い出すたびに一喜一憂し、エマは「今度は私がいくらでも待つわ」などと言っておきながらこのような状態の自分に、愚かしく情けないと責めた。
ある日、侍女が「たまには気分転換に、まだ着ていないドレスを試してみては如何ですか?」などという。
全く気分が乗らないエマだったが、あまりにも熱心に言うので根負けしたように頷いた。
ドレスを着たのだからメイクを。
メイクをしたのだから髪も、「このドレスであれば菫色のバレッタがお似合いです」などと、あれよあれよという間に身綺麗にされてしまう。
すると、馬車の止まる音が窓の外から聞こえ、
「誰かいらっしゃったの?」
と覇気のないままエマが聞く。
一瞬、止まった侍女の手が何事もなかったようにまた動き言葉を返す。
「……何でも旦那様に急なご要件なのだとか」
「そう、ご挨拶に伺った方が良いかしら?」
「そのような言い付けはございませんので大丈夫かと」
綺麗に編まれアップにされた髪を見つめながら、何やら下は騒がしい様子だったが、興味もなさそうにまた「そう」とだけ呟いた。
(綺麗にして貰ってもね……意味がないわ)
暫く本を開いていると、何やら階段をかけ上がる音が聞こえる。
さすがに何事かとエマが立ち上がった時、勢い良く自室のドアが開けられ「不躾よ!」と声を張りあげようとした時。
手に持つ本が床へと落ちた。
力なく揺れ動きながら笑うエマが侍女に問う。
「ねえ……私、とうとう幻を見るくらいおかしくなってしまったようね……」
「お、お嬢様!」
ふらついた主人を支えようとした時、入口に立っていた人物が持っていた立派な布表紙のフォルダーを手から離して駆け寄った。
「エマ!」
「ア、アラン……アランよね、本当に?」
「エマ、やっと迎えに来れた。君を迎えに来たんだ!」
急に現れたアランがエマを掻き抱いた。
息苦しさと温もりにやっと実感すると大粒の涙を流しながら、その胸に頬を寄せる。
「私、ずっと貴方を待っていたの……っ」
「すまない」
「いいの、もういいの」
ぼやけた視界で卒業の証明書を捉えた。
きっと無理をしたに違いない。
会ったら文句の一つでも言ってやろうと何度も思ってきたが全部吹き飛んでしまった。
もうどうでも良い。
彼が迎えに来てくれたのだから……。
するとアランが、エマにしか聞こえない声量でそっと言葉を贈る。
「エマ、結婚しよう」
考えることはやはりアランのことで。
シャツに水を掛けたこと。あの時は「可愛げが無い」と言われ頭にきた。
またリリィの茶会に呼ばれ、アランが勘違いから嫉妬をして……初めてキスをしたこと。
その後の初めての手紙は色気も何もなかった。
クリスマス・イブに出掛けたこと、誕生日でされた告白、心が通じ合った卒業パーティー、デビューダンスのあの台詞。
他にもたくさんのことを思い出すたびに一喜一憂し、エマは「今度は私がいくらでも待つわ」などと言っておきながらこのような状態の自分に、愚かしく情けないと責めた。
ある日、侍女が「たまには気分転換に、まだ着ていないドレスを試してみては如何ですか?」などという。
全く気分が乗らないエマだったが、あまりにも熱心に言うので根負けしたように頷いた。
ドレスを着たのだからメイクを。
メイクをしたのだから髪も、「このドレスであれば菫色のバレッタがお似合いです」などと、あれよあれよという間に身綺麗にされてしまう。
すると、馬車の止まる音が窓の外から聞こえ、
「誰かいらっしゃったの?」
と覇気のないままエマが聞く。
一瞬、止まった侍女の手が何事もなかったようにまた動き言葉を返す。
「……何でも旦那様に急なご要件なのだとか」
「そう、ご挨拶に伺った方が良いかしら?」
「そのような言い付けはございませんので大丈夫かと」
綺麗に編まれアップにされた髪を見つめながら、何やら下は騒がしい様子だったが、興味もなさそうにまた「そう」とだけ呟いた。
(綺麗にして貰ってもね……意味がないわ)
暫く本を開いていると、何やら階段をかけ上がる音が聞こえる。
さすがに何事かとエマが立ち上がった時、勢い良く自室のドアが開けられ「不躾よ!」と声を張りあげようとした時。
手に持つ本が床へと落ちた。
力なく揺れ動きながら笑うエマが侍女に問う。
「ねえ……私、とうとう幻を見るくらいおかしくなってしまったようね……」
「お、お嬢様!」
ふらついた主人を支えようとした時、入口に立っていた人物が持っていた立派な布表紙のフォルダーを手から離して駆け寄った。
「エマ!」
「ア、アラン……アランよね、本当に?」
「エマ、やっと迎えに来れた。君を迎えに来たんだ!」
急に現れたアランがエマを掻き抱いた。
息苦しさと温もりにやっと実感すると大粒の涙を流しながら、その胸に頬を寄せる。
「私、ずっと貴方を待っていたの……っ」
「すまない」
「いいの、もういいの」
ぼやけた視界で卒業の証明書を捉えた。
きっと無理をしたに違いない。
会ったら文句の一つでも言ってやろうと何度も思ってきたが全部吹き飛んでしまった。
もうどうでも良い。
彼が迎えに来てくれたのだから……。
するとアランが、エマにしか聞こえない声量でそっと言葉を贈る。
「エマ、結婚しよう」
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