14 / 64
(3)心キズはごまかせない
014
しおりを挟む
お店は街中華。シンプルな木製テーブルが並んでいて家庭的な雰囲気だった。
「よく来るの?」
「学生のとき。大学が近くだったんで」
「いまも学生時代の友達と?」
「仲のいい友達はみんな地方に転勤になりました」
「わたしも大学時代の友達とはめったに会わなくなっちゃったなあ。同期もかなり辞めちゃったし」
子育てに忙しかったり、旦那さんの転勤で引っ越してしまったりして、徐々に友達が減っていった。
子どもがいればママ友ができていたのかなあ。なんて考えても仕方のないことだけど。
「蓮見くんは結城さん以外の同期のひとたちとは会ってるの?」
「いいえ。でもこの間、研修で本社に来たやつと久しぶりに飲みに行きましたけど」
「やっぱり仲いいんじゃん」
「研修終わりに商品開発部に会いに来たんですよ。そのときに誘われただけです」
「よかったね。同期って特別だよね」
「僕は雨宮さんとは違います。同期だからって仲がいいとは限りませんよ」
照れているのかな。いちいち反論してくる。
「それよりなににします? この店ってけっこうリーズナブルなんですよ。たくさん頼みましょう」
そう言われ、メニュー選びは蓮見くんにおまかせした。エビチリ、麻婆豆腐、小籠包など。おなじみのものをふたりでシェアした。
「おいしい!」
「それはよかったです」
「中華料理のお店ってひとりで入りにくいから連れて来てもらってよかった」
「常連さんばかりって感じですよね。この店は昼はサラリーマンや男子学生が多いですし」
「でもいまの時間は家族連れもいるよね。地元の方たちなのかな」
「そうみたいですね。でも雨宮さんならどんな中華料理屋でも大丈夫そうですけどね」
蓮見くんはあっさりと言って、上品にエビチリを食べる。
なんだか、ばかにされているような気がするんだけど……。
しょうがないじゃない。離婚してひとりで過ごすようになったら、それが楽になって、気がついたらおひとり様でごはんを食べることもあたり前になっていったんだよ。
あー、やだやだ。仕事に没頭して忘れていたのにまた敦朗のことを思い出しちゃったよ。
気分が沈みそうになったのでビールを頼んだ。ついでに蓮見くんの分も。おつまみは海鮮シュウマイ。グラスの半分を一気に飲む。続けて残りを飲もうとグラスに口をつけた。
「ペース早すぎですよ」
「そんなことないよ。普通だよ、普通」
半ばあきれている蓮見くんをよそにビールをグイグイ飲み、海鮮シュウマイもパクリ。どちらもおいしくて、どんどんお腹のなかに入っていく。
だけど三杯目を飲み干し、四杯目を頼もうと店員さんを呼ぼうとしたとき、すかさず阻止された。
「もうやめておきましょう」
「なんで?」
「酔っぱらいの面倒を見たくないので」
「迷惑はかけないよ。ひとりで帰れるし」
お酒は強いほうだと思う。量だってそれなりに飲めるし、酔いつぶれたこともない。
だけど蓮見くんは伝票を手に取ると席を立った。
「帰りますよ」
「はい?」
「これ以上飲んだって楽にはなりませんよ」
「はあ? なに言ってるの?」
「いいから行きましょう。先にお会計してきます」
「ちょっと待って! お会計はわたしが! あっ、その前にトイレ!」
蓮見くんがわたしを置いてさっさと席を離れてしまうので、あきらめてトイレに行くことにした。
「よく来るの?」
「学生のとき。大学が近くだったんで」
「いまも学生時代の友達と?」
「仲のいい友達はみんな地方に転勤になりました」
「わたしも大学時代の友達とはめったに会わなくなっちゃったなあ。同期もかなり辞めちゃったし」
子育てに忙しかったり、旦那さんの転勤で引っ越してしまったりして、徐々に友達が減っていった。
子どもがいればママ友ができていたのかなあ。なんて考えても仕方のないことだけど。
「蓮見くんは結城さん以外の同期のひとたちとは会ってるの?」
「いいえ。でもこの間、研修で本社に来たやつと久しぶりに飲みに行きましたけど」
「やっぱり仲いいんじゃん」
「研修終わりに商品開発部に会いに来たんですよ。そのときに誘われただけです」
「よかったね。同期って特別だよね」
「僕は雨宮さんとは違います。同期だからって仲がいいとは限りませんよ」
照れているのかな。いちいち反論してくる。
「それよりなににします? この店ってけっこうリーズナブルなんですよ。たくさん頼みましょう」
そう言われ、メニュー選びは蓮見くんにおまかせした。エビチリ、麻婆豆腐、小籠包など。おなじみのものをふたりでシェアした。
「おいしい!」
「それはよかったです」
「中華料理のお店ってひとりで入りにくいから連れて来てもらってよかった」
「常連さんばかりって感じですよね。この店は昼はサラリーマンや男子学生が多いですし」
「でもいまの時間は家族連れもいるよね。地元の方たちなのかな」
「そうみたいですね。でも雨宮さんならどんな中華料理屋でも大丈夫そうですけどね」
蓮見くんはあっさりと言って、上品にエビチリを食べる。
なんだか、ばかにされているような気がするんだけど……。
しょうがないじゃない。離婚してひとりで過ごすようになったら、それが楽になって、気がついたらおひとり様でごはんを食べることもあたり前になっていったんだよ。
あー、やだやだ。仕事に没頭して忘れていたのにまた敦朗のことを思い出しちゃったよ。
気分が沈みそうになったのでビールを頼んだ。ついでに蓮見くんの分も。おつまみは海鮮シュウマイ。グラスの半分を一気に飲む。続けて残りを飲もうとグラスに口をつけた。
「ペース早すぎですよ」
「そんなことないよ。普通だよ、普通」
半ばあきれている蓮見くんをよそにビールをグイグイ飲み、海鮮シュウマイもパクリ。どちらもおいしくて、どんどんお腹のなかに入っていく。
だけど三杯目を飲み干し、四杯目を頼もうと店員さんを呼ぼうとしたとき、すかさず阻止された。
「もうやめておきましょう」
「なんで?」
「酔っぱらいの面倒を見たくないので」
「迷惑はかけないよ。ひとりで帰れるし」
お酒は強いほうだと思う。量だってそれなりに飲めるし、酔いつぶれたこともない。
だけど蓮見くんは伝票を手に取ると席を立った。
「帰りますよ」
「はい?」
「これ以上飲んだって楽にはなりませんよ」
「はあ? なに言ってるの?」
「いいから行きましょう。先にお会計してきます」
「ちょっと待って! お会計はわたしが! あっ、その前にトイレ!」
蓮見くんがわたしを置いてさっさと席を離れてしまうので、あきらめてトイレに行くことにした。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
同期と私の、あと一歩の恋
松本ユミ
恋愛
同期の本田慧に密かに想いを寄せる広瀬紗世は、過去のトラウマから一歩踏み出せずにいた。
半年前、慧が『好きな人がいる』と言って告白を断る場面を目撃して以来、紗世は彼への想いを心の中に閉じ込めてしまう。
それでも同期として共に切磋琢磨する関係を続けていたが、慧の一言をきっかけに紗世の心が動き出す。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
その出会い、運命につき。
あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。
菊池まりな
恋愛
25歳の朱里は、同じ部署の先輩・嵩にずっと片想いをしていた。けれども不器用な朱里は、素直に「好き」と言えず、口から出るのはいつも「大嫌い」。彼女のツンデレな態度に最初は笑って受け流していた嵩も、次第に本気で嫌われていると思い込み、距離を置き始める。
そんな中、後輩の瑠奈が嵩に好意を寄せ、オープンに想いを伝えていく。朱里は心の奥で「私は本当は死ぬほど好きなのに」と叫びながらも、意地とプライドが邪魔をして一歩踏み出せない。
しかし、嵩の転勤が決まり、別れが迫ったとき、朱里はついに「大嫌い」と100回も繰り返した心の裏にある“本音”を告白する決意をする――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる