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(11)最後に伝えたいこと
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「謝る相手はわたしじゃないよ」
「神崎部長たちにも先日正直に話して謝りました」
「それでなにか言われた?」
「結城さんの妹さんが間違ってふたりの画像をあげたことは知っていたみたいなんですが……」
妹さんによると別の画像をあげるつもりだったそうだ。しかしすぐに間違いに気づき、削除した。
それなのにまさか誰かがコピーしていたとは思っていなかったらしい。それぐらい短い時間のことだったようで、結城さん自身も噂の拡散の原因と考えていなかったようだ。
「僕を責めることなく、逆に傷つけたことを謝られました」
それで余計に罪悪感が大きくなっていったのかな。苦しかったんだね。それでも自分を許せないって思っちゃったんだよね。だから大阪へ行くわたしとはもう会えないなんて言ったんだね。
「蓮見くんも嫉妬心をむき出しにするんだね。今回のことでそういう面を知って驚いた」
「そんなに驚くことですか?」
「いつも冷静で動じないから。イメージと違ってた」
以前、敦朗が結城さんに手を出してきたとわたしに訴えてきたときもそうだ。あのときも怒りに満ちていた。静かな迫力に圧倒され、恐怖すら感じた。人間の感情というものはとんでもないパワーがある。
「僕にだって感情はちゃんとあります。誰かを嫌いになったり、憎んだりもします。醜いんですよ」
蓮見くんは少し悲しそうに言った。それを聞いてハッとした。きっと蓮見くんはこういう人間だと決めつけられて窮屈な思いをしてきたんだ。
表には出さないけれど、心のなかではいろいろなことを考えて感じている。些細な言動に傷つくことだってあったはず。
蓮見くんは結城さんのことで深く傷ついた。表面上はクールに見えても内心はそうではない。感情のコントロールができず、敦朗たちを追いつめることをしてしまったんだ。
なにも感じないわけがない。わかっていたはずなのに勝手に決めつけていた。
「わたしも同じ」
「なにがですか?」
「噂が流れて騒動になったとき、ふたりが別れてくれたらラッキーって思ってた」
「そんなふうには見えませんでしたけど」
「隠してたもん。だけどそう思う自分がすごく嫌で、敦朗の前ではいい女ぶってアドバイスとかしちゃって……」
嫉妬まみれの醜い心は誰にも知られたくない。でも蓮見くんにだけは知られてもいいと思った。
「結城さんの相談にまで乗ってあげたの。ばかでしょう? 心とは裏腹なのにね」
「雨宮さんらしいです。親身になって結城さんのことを励ましている姿が目に浮かびます」
「でも本心じゃなかったかも」
「本心ですよ。雨宮さんは根本的にやさしいんです。自分本位になれないところ、僕は尊敬します」
「……ありがとう」
なんでだろう。急に涙が出てきた。顔を見られたくなくて下を向く。
変に思うよね。蓮見くんに引かれちゃいそう。
「恥ずかしいな。最後なのに」
「恥ずかしいのは僕のほうです。雨宮さんと顔を合わせる資格なんてないのに、最後までこうして一緒にいるんですから」
わたしは涙をぬぐい、がんばって顔をあげた。
「わたしにとって蓮見くんは救世主だった。これまでずっと一緒にいてくれて感謝してる」
だから資格がないなんて言わないで。会わないほうがいいなんて言わないでよ。
「神崎部長たちにも先日正直に話して謝りました」
「それでなにか言われた?」
「結城さんの妹さんが間違ってふたりの画像をあげたことは知っていたみたいなんですが……」
妹さんによると別の画像をあげるつもりだったそうだ。しかしすぐに間違いに気づき、削除した。
それなのにまさか誰かがコピーしていたとは思っていなかったらしい。それぐらい短い時間のことだったようで、結城さん自身も噂の拡散の原因と考えていなかったようだ。
「僕を責めることなく、逆に傷つけたことを謝られました」
それで余計に罪悪感が大きくなっていったのかな。苦しかったんだね。それでも自分を許せないって思っちゃったんだよね。だから大阪へ行くわたしとはもう会えないなんて言ったんだね。
「蓮見くんも嫉妬心をむき出しにするんだね。今回のことでそういう面を知って驚いた」
「そんなに驚くことですか?」
「いつも冷静で動じないから。イメージと違ってた」
以前、敦朗が結城さんに手を出してきたとわたしに訴えてきたときもそうだ。あのときも怒りに満ちていた。静かな迫力に圧倒され、恐怖すら感じた。人間の感情というものはとんでもないパワーがある。
「僕にだって感情はちゃんとあります。誰かを嫌いになったり、憎んだりもします。醜いんですよ」
蓮見くんは少し悲しそうに言った。それを聞いてハッとした。きっと蓮見くんはこういう人間だと決めつけられて窮屈な思いをしてきたんだ。
表には出さないけれど、心のなかではいろいろなことを考えて感じている。些細な言動に傷つくことだってあったはず。
蓮見くんは結城さんのことで深く傷ついた。表面上はクールに見えても内心はそうではない。感情のコントロールができず、敦朗たちを追いつめることをしてしまったんだ。
なにも感じないわけがない。わかっていたはずなのに勝手に決めつけていた。
「わたしも同じ」
「なにがですか?」
「噂が流れて騒動になったとき、ふたりが別れてくれたらラッキーって思ってた」
「そんなふうには見えませんでしたけど」
「隠してたもん。だけどそう思う自分がすごく嫌で、敦朗の前ではいい女ぶってアドバイスとかしちゃって……」
嫉妬まみれの醜い心は誰にも知られたくない。でも蓮見くんにだけは知られてもいいと思った。
「結城さんの相談にまで乗ってあげたの。ばかでしょう? 心とは裏腹なのにね」
「雨宮さんらしいです。親身になって結城さんのことを励ましている姿が目に浮かびます」
「でも本心じゃなかったかも」
「本心ですよ。雨宮さんは根本的にやさしいんです。自分本位になれないところ、僕は尊敬します」
「……ありがとう」
なんでだろう。急に涙が出てきた。顔を見られたくなくて下を向く。
変に思うよね。蓮見くんに引かれちゃいそう。
「恥ずかしいな。最後なのに」
「恥ずかしいのは僕のほうです。雨宮さんと顔を合わせる資格なんてないのに、最後までこうして一緒にいるんですから」
わたしは涙をぬぐい、がんばって顔をあげた。
「わたしにとって蓮見くんは救世主だった。これまでずっと一緒にいてくれて感謝してる」
だから資格がないなんて言わないで。会わないほうがいいなんて言わないでよ。
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