親愛なる後輩くん

さとう涼

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(13)ふたりの距離

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 終電がなくなり、タクシーで蓮見くんのマンションに行くことになった。

 わたしが泊まるホテルにふたりで行くわけにもいかないので当然の流れではあるのだけれど、いきなりの展開でかなりテンパっている。

 だけどいざ部屋に入ると想像とは違っていて……。

「……汚くてすみません。最近忙しくて」

 ソファを勧められて座ると、蓮見くんは床に正座をした。

「ううん。わたしも似たようなものだよ」

「嘘……ですよね?」

「う、うん。ごめん。一番だらしないときのわたしよりひどい」

 脱ぎ捨てた服が点在していてキッチンの床にはゴミ袋が何個か転がっている。シンクには洗い物が山盛り状態。リビングには洗濯物が干しっぱなしだった。たぶんクローゼットにしまわないで干してあるものをそのまま着ているんだろう。

「食事もカップラーメンばかりなの?」

 食べ終わった容器がテーブルに置いたままだ。

「最近はそんな感じです」

「そんなに仕事が大変なの?」

「ええ、まあ。でもがんばらないと雨宮さんに追いつけませんから」

「なんでわたし? 比べる対象にもならないのに」

「プライドってやつです。でも駅で雨宮さんに会ったとき、そんなものはどうでもいいって思えました」

 蓮見くんが照れくさそうに言う。

 わたしから見たら商品開発部の仕事は異次元だ。新商品を考えて形にするなんて格好いい仕事に思えるけれど、苦労だって半端ないはず。想像することしかできないけれど、わたしが知らないところで蓮見くんはたくさん努力をしてきたんだ。

「雨宮さん、なんで東京に来るって教えてくれなかったんですか? わかってたら、部屋をきれいに掃除してたのに」

「……な、なんとなく言いにくくて」

 蓮見くんったら、なにげにすごいことを言っているような気がするんだけど。

「どうしてですか? 柳橋さんの結婚式のときは連絡くれたじゃないですか」

「そうなんだけど……」

 だってあのときは東京に行く理由ができて、うれしくてテンションがあがってしまっていたからで……。今回もかなり浮かれていたのだけれど、あれからだいぶ時間が経過してしまって、わたしたちの関係に自信がなくなってしまった。

 会社の先輩後輩の関係よりも親密。だけど恋人とは違う。

 蓮見くんがわたしを慕ってくれていることはわかるけれど、どういう関係を求めているのかまではわからなくて、年上のわたしはどうしても先に進めずにいた。

 わたしがもう少し若かったら。蓮見くんとの年の差が少なかったら。もっと思い切って自分から行動に移せたのかな。

 だけど悩み続けているわけにいかないと思った。はっきりさせたくてぎりぎりまで悩んだ末に会おうと決めた。それが予想外にトラブルに見舞われ、いまに至る。
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