未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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第3章 未練がましい元カノです

009

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「今朝、俺が宮原さんと話し込んでいただろう。それを見てやきもちを焼いたんだよ」

「やきもち?」

「そっ。それで宮原さんに話しかける口実を作った。おおかた、そんなことだろうよ」

 飯島さんがあまりにも得意げに言うので話せなかった。あれは飯島さんの女癖の悪さを一希が心配してくれていたのだと。
 わたしも最初はやきもちなのかなとチラッとは思った。だけど、わたしに気持ちが残っているなら、わたしの顔を見るたびにあんな困ったような顔をするはずがない。

 もしかして一希はわたしの気持ちを感じ取っているのかな。いまだに一希を好きでいることを。
 きっと重い女だと思っているんだろう。
 それともそんなわたしが飯島さんになびいたら自分と同じように飯島さんも苦労するだろうから、仲のいい飯島さんに対する気遣いもあったのかな。

「やきもちのはずはありません。飯島さんも見たでしょう? 一希はもう他の人を追いかけていたじゃないですか」

「奥田さんとのことは誤解だと思うよ」

「そうでしょうか」

「奥田さんにはどうも彼氏がいるらしいんだよね」

「本当ですか?」

「本人から聞いたわけじゃないんだけど」

「じゃあ誰からですか?」

「もうひとりの受付の山崎やまざきさん。信憑性しんぴょうせいが高い情報だと思うよ。だってほら、あの子って奥田さんと仲がいいだろう。そういう話も普段からしていると思うんだ」

 とはいっても、そんなのは気休めにもならない。だってわたしと別れてフリーになった一希がチャンスとばかりに奥田さんに猛プッシュしている最中なのかもしれない。
 一希の楽天的な性格からして、気になる女性に彼氏がいようがいまいがそれほど重要じゃないと思う。奥田さんだって一希ほどのスペックの男性なら口説かれても悪い気はしないだろう。彼氏がいても一希の誘いにのる可能性だってある。もしかすると、それがきっかけで今おつき合いしている彼氏と別れることもあるかもしれない。

 もしそんなことになったら、ますます一希は手の届かない人になってしまう。
 このままじゃいけない。でも一希に妊娠のことを伝える勇気がない。自分がこれほど情けない人間だとは思わなかった。

「別に一希のことなんてもうなんとも思ってないです」

「またまたそんなこと言っちゃって」

「本当です!」

「俺には宮原さんも本間に未練があるように見えるんだけど」

「考えすぎです」

 もう! しつこいんだからっ!

「せめて俺の前では素直になりなよ。意地張ってたら疲れちゃうよ。別れたことを後悔してるんだよね?」

「……してません」

 思いっきり図星なので思わず頷いてしまいそうになるけれどなんとか否定した。

「これでもふたりのことを応援してるんだよ」

 なら放っておいてください。
 悪気がないのはわかっている。でもヘタに未練ありますなんて言ってしまったら、飯島さんのことだから変な気をまわしてくれちゃいそうだ。
 一希と話をするにしても、いろいろと準備や覚悟が必要。あともう少しだけ時間がほしい。

「俺でよければ話を聞くよ。加納さんほどは頼りにならないかもしれないけど、俺も一応先輩なんだから。可愛い後輩のために何かしたいじゃん」

「飯島さん……」

 いろいろしつこいけれど飯島さんは根はいいひとだ。彼はわたしに元気がないことも見破ってここまで心配してくれている。
 本音は泣いてすがりたい気分だ。でも何をどこまで言えばいいのか悩んでしまう。わたしのこの状況は飯島さんにもさすがに重すぎるだろう。それに話せたとしても結論を出すのは自分だ。
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