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第3章 未練がましい元カノです
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お昼ごはんを食べ終え、会社に戻ってくると、飯島さんが外出する準備をしていた。
今もまだお昼休み中。加納さんはお手洗いに行っていて離席中だったので、わたしはその隙にと飯島さんに駆け寄った。
「これ、わたしの分です」
お店では飯島さんにお金を出してもらったが、わたしまでおごってもらうのは申し訳なくて、さっきの食事代を渡そうと思った。
「いらないよ。俺のおごりって言っただろう」
「受け取ってもらわないと困ります」
「いいんだよ。それに宮原さん、あんまり食べてなかったじゃん。だから遠慮することないって」
そう言って、飯島さんが差し出したお金を突っ返す。
「そういうわけには……」
飯島さんの言うとおり、あまり食べることができなかった。念のため生ものを避けていたというのもあるけれど、どうしても食欲がわかなかった。
「いいから、いいから。ほら、そのお金、早くしまって」
「……わかりました。ごちそうさまでした」
ここで無理にお金を渡そうとしても飯島さんは受け取ってくれなさそう。それに頑なになりすぎても逆に失礼になるような気がした。
ここはありがたく、ごちそうになっておこう。そう思い、お金をポケットにしまった。
「食欲なかったのって本間が原因?」
「え?」
「受付の奥田さん。彼女のことが気になる?」
飯島さんは気づいていたんだ。さっきロビーであのふたりが一緒にいるところを見たに違いない。
「別に。わたしたちはもう別れているんで」
「だったらどうしてそんな顔してるんだよ?」
「え……」
今のわたしって、そんなにひどい顔をしているの?
「今だけじゃないよ。お店にいたときもずっとそうだった」
心の中を悟られないように必死に笑っていたのに。飯島さんには通用しなかったんだ。
恥ずかしい。いまだに元彼に未練があることがバレバレだなんて。
「なんかごめんね。追いつめるつもりはなかったんだけど気になっちゃって」
「いいえ、いいんです」
「だけど信じられないんだよね」
「何がですか?」
「宮原さんたちが別れちゃったのが。あいつはまだ宮原さんのことを好きだと思うんだよね」
おかしなことを言うなあと思った。そんなわけないじゃない。
「飯島さんの勘違いです。フラれたのはわたしのほうなんですよ」
「嘘!? それ意外なんだけど」
「でも事実です」
「だって今日、宮原さんの気を引こうとしてたじゃん、あいつ」
「はっ?」
そんな出来事ありましたっけ?
飯島さんの言っていることの意味がわからず首を傾げた。
たしかに朝、エレベーターとこのフロアで一希と話はしたけれど。そのどちらのときも現場に飯島さんはいなかったじゃない。
「昼前に宮原さんからもらった本間の資料なんだけど、俺のパソコンにメールでも届いていたんだよね」
「同じものが?」
「そう。新規オープンする店の写真はデータでもほしいから毎回メールでもらっていたんだよ。なのに今回に限って印刷したものもよこしてきたから、どういう意味なんだろうって考えていたんだけど」
なんだそういうことだったのか、と飯島さんがひとりで納得していた。
「意味、わからない?」
ぽかんとしているわたしに飯島さんがニヤニヤした顔でたずねてくる。
「どういうことなんですか?」
今もまだお昼休み中。加納さんはお手洗いに行っていて離席中だったので、わたしはその隙にと飯島さんに駆け寄った。
「これ、わたしの分です」
お店では飯島さんにお金を出してもらったが、わたしまでおごってもらうのは申し訳なくて、さっきの食事代を渡そうと思った。
「いらないよ。俺のおごりって言っただろう」
「受け取ってもらわないと困ります」
「いいんだよ。それに宮原さん、あんまり食べてなかったじゃん。だから遠慮することないって」
そう言って、飯島さんが差し出したお金を突っ返す。
「そういうわけには……」
飯島さんの言うとおり、あまり食べることができなかった。念のため生ものを避けていたというのもあるけれど、どうしても食欲がわかなかった。
「いいから、いいから。ほら、そのお金、早くしまって」
「……わかりました。ごちそうさまでした」
ここで無理にお金を渡そうとしても飯島さんは受け取ってくれなさそう。それに頑なになりすぎても逆に失礼になるような気がした。
ここはありがたく、ごちそうになっておこう。そう思い、お金をポケットにしまった。
「食欲なかったのって本間が原因?」
「え?」
「受付の奥田さん。彼女のことが気になる?」
飯島さんは気づいていたんだ。さっきロビーであのふたりが一緒にいるところを見たに違いない。
「別に。わたしたちはもう別れているんで」
「だったらどうしてそんな顔してるんだよ?」
「え……」
今のわたしって、そんなにひどい顔をしているの?
「今だけじゃないよ。お店にいたときもずっとそうだった」
心の中を悟られないように必死に笑っていたのに。飯島さんには通用しなかったんだ。
恥ずかしい。いまだに元彼に未練があることがバレバレだなんて。
「なんかごめんね。追いつめるつもりはなかったんだけど気になっちゃって」
「いいえ、いいんです」
「だけど信じられないんだよね」
「何がですか?」
「宮原さんたちが別れちゃったのが。あいつはまだ宮原さんのことを好きだと思うんだよね」
おかしなことを言うなあと思った。そんなわけないじゃない。
「飯島さんの勘違いです。フラれたのはわたしのほうなんですよ」
「嘘!? それ意外なんだけど」
「でも事実です」
「だって今日、宮原さんの気を引こうとしてたじゃん、あいつ」
「はっ?」
そんな出来事ありましたっけ?
飯島さんの言っていることの意味がわからず首を傾げた。
たしかに朝、エレベーターとこのフロアで一希と話はしたけれど。そのどちらのときも現場に飯島さんはいなかったじゃない。
「昼前に宮原さんからもらった本間の資料なんだけど、俺のパソコンにメールでも届いていたんだよね」
「同じものが?」
「そう。新規オープンする店の写真はデータでもほしいから毎回メールでもらっていたんだよ。なのに今回に限って印刷したものもよこしてきたから、どういう意味なんだろうって考えていたんだけど」
なんだそういうことだったのか、と飯島さんがひとりで納得していた。
「意味、わからない?」
ぽかんとしているわたしに飯島さんがニヤニヤした顔でたずねてくる。
「どういうことなんですか?」
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