未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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番外編(6) 不安の中で

025

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「たしかに最近はケンカばかりだったけど、悪いのはお互い様だろう?」

「でも……」

「『でも』じゃない。この世の中、正しいことだけしかしない人間なんているのかな? みんな何かしら間違うんじゃないの? 俺だって間違ってばかりだよ」

「一希……」

「完璧な人間にならなくても大丈夫だよ。でも悪いとことは俺も直していく。俺のほうこそ嫌な思いをさせてごめんな。秘書課のあの子とは──」

「ううん、ちゃんとわかってるから。一希はわたしを裏切るようなことはしないって。でも頭ではわかっていても実際にふたりが一緒にいるところを見ちゃうと……」

 つぐみは秘書課の女の子と一緒にいた俺を責めるために会いたいと言ったんじゃないんだとわかった。つぐみの我儘は寂しいというサイン。とめどなくあふれてくる不安を自分ではどうにもできなくて、それで会いたいって言ったんだよな。
 ごめんな。俺が苦しめていたんだよな。

「これだけは信じてほしい。俺はつぐみだけしか見てないから。好きだよ。この気持ちは誰にも負けない」

「ありがとう。わたしも大好き。一希のこと、ずっと大切にしたいって思ってる」

 過去を清算してもいまだに不安や苛立ちを覚えさせてしまう。それは今日に限ったことではない。おまけに仕事が忙しくてなかなか会う時間も作れない。そんなときどうすればその苦しみを取り除いてやれるんだろう。なんて言ってやれば安心させてやれるんだろう。ごめんな。いまだにわからないんだ。
 だから何度でも伝えるよ。俺にとってつぐみはかけがえのないひとだってことを。絶対に失いたくない。これからもずっと一緒にいたいんだ。

「つぐみ、ちょっと痩せた?」

「そうかな?」

 もともと細いほうだけど、さらに細くなったような気がする。

「ちゃんとごはん食べてる?」

「食べてるよ」

 密着していた体を離し、つぐみの顔を覗き込む。けれど視線がほんの少し逸らされた。

「嘘だな」

「……嘘じゃないよ」

「夕飯もまだだよな。そういえば今日の昼も何も食べてないだろう?」

「……あ、うん」

「ほら、やっぱりな」

 つぐみは落ち込むと食事をしなくなる。何度注意してもいつもこんな感じだ。
 つぐみにはいつも穏やかに笑っていてほしいんだけれど、どうすればそれが叶うんだろう。最近の俺はそんなことをよく考えるようになった。

「カップラーメンのほかにおにぎりも買ってきた。食うだろう?」

「うん」

「あと、生クリームたっぷり特製プリンと濃厚プレミアムモンブラン、どっちがいい?」

 両方、つぐみが好きなコンビニスイーツだ。

「えー、迷うな」

「じゃあ、それぞれ半分こにするか」

「うん!」

 少し元気が出たつぐみが涙を拭く。ようやく笑顔になった。その顔を見て、俺は安心できた。

 つぐみは俺に嫌われることを恐れていたが、俺はつぐみに幻滅したことなんて一度もない。むしろ俺のほうがケンカのたびに不安になる。俺のほうこそ思っているよ。こんな俺でいいのかって。他の男だったらこんなに泣かせることはないんだろうなと自信がなくなるときがある。
 だけどつぐみの笑顔を見るたびに決して離すまいと強く思うんだ。そしてその笑顔を守りたい。とにかくつぐみの幸せが俺の一番の望みだ。




 番外編(6) 《完》

 ⇒番外編(7)へ続く



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