未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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番外編(7) Wedding After Party

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 一希は太陽みたいなひとだ。

 一希のまわりにはいつもひとが集まってくる。親しみやすい笑顔と楽しげな笑い声に、多くのひとが引き寄せられる。
 ご両親にどんなふうに愛されて育ったんだろう。どんな子どもだったんだろう。反抗期はあったのかな。高校や大学時代はどんな感じだったの? そんなことを考えながら、わたしは会場の中央付近にいる一希を見つめていた。

 挙式、披露宴を滞りなく終えることができた。夕方からは「ダイニングレストラン・カシェット」に場所を移し、ただ今、二次会の真っ最中。

 わたしはみんなから離れ、フロアの一番端にあるソファでほっとひと息ついているところ。結婚式の間は緊張して気が張っていたけれど、二次会では学生時代や会社の女の子たちと久しぶりに楽しい時間を過ごすことができた。

 一希は朝からまったく緊張していない様子だった。楽天的なところは相変わらず。結婚式という一大イベントでも決して動じないなんて、いったいどれだけ図太い神経をしているんだろう。半分でいいからその余裕をわけてもらいたい。

「大丈夫? 疲れてない?」

 ひとの輪の中からするりと抜け出してきた一希がソファ席のわたしの隣に座る。少し前までそこにはりっちゃんが座っていたんだけれど、旦那さんが迎えにきて、ついさっき帰ったところだった。
 よく見ているなあ。わたしがひとりになったのに気づいて隣に来てくれたんだ。

「わたしなら大丈夫だよ。地元の友達とはしょっちゅう会えないんだから、戻ってもいいよ」

 一希の実家は関東にあって、都内へのアクセスはわりと便利な地域。といっても電車の場合、東京駅まで乗り換え時間も含めて2時間近くかかる。
 一希みたいに東京の会社に就職して都内に住んでいるひともいるらしいけれど、地元から足を運んでくれた友達もいるそうなので今日はみんなと思いきり楽しんでほしい。

「別にいいよ。あいつらとは正月に遊んだし」

「でも……」

「今日は俺たちの一生に一度の結婚式の日だよ。一緒にいないでどうする?」

「一希……」

「だろう?」

「うん」

 こんな胸が熱くなる言葉をもらうたびに、わたしは一希に出会えたことに感謝する。結婚できたことに喜びを感じる。

「今日はいい式だったね」

「ああ」

「たくさん感謝した日だった」

「俺も。ありがたいよな。みんな忙しいのに遠くから来てくれたり、スピーチしてくれたりして」

「余興も! すっごく楽しかったね」

「そうだな」

 自分がこの世に生まれてこうして生きているのは、両親をはじめとするたくさんのひとたちのおかげなんだと改めて思った。そんなひとたちに祝福されてこの日を迎えられたんだ。こんな幸せなことはない。
 お腹の子にも将来この気持ちを味わわせてあげたい。たったひとりの誰かを愛することで、もっとたくさんの愛を知ることができるんだよって。

「うちの両親やおじいちゃんたちもあんなに喜んでくれて、結婚式を挙げてよかったって思ったよ。それもこれも一希のおかげ。ありがとう」

「えっ、俺?」

 一希がぽかんとなる。

「わたしが結婚式はやらなくてもいいって言ったとき、一希が反対してどうしてもやりたいって言ってくれたから」

「俺はただ……」

 なんだか言いにくそう。

「何?」

「つぐみのウェディングドレス姿を見たくて言っただけ」

「えっ……」

「思ってたとおり。綺麗だったよ」

 甘く奏でられる言葉に体がとろけてしまいそうになる。ささやかれた声によって鼓動が速められ、全身から漂ってくる色気に身も心も魅了される。
 一希は普段、「綺麗」とか「可愛い」というセリフをなんの躊躇もなく口にする。しかも、なんでこのタイミング? という瞬間に言ってくることもあるので、うれしいけれどびっくりさせられることも多い。
 今もそうだ。ウェディングドレスの件は初めて聞いた。そのときに言ってよ。こんなにたくさんのひとがいるところで言わないでほしい。とんでもなく顔がにやけているはず。

「つぐみって照れ屋だよね」

「別に照れてなんか……」

「顔、赤いよ」

「……うるさい」

「そういうとこも可愛い」

「だからそういうの、やめて」

 そしてオチはたいていこんなふうにからかわれる。クスクスと笑いながら、「可愛い」を連発した。
 だけどそのうちからかい飽きたのか、一希は「ちょっと休憩」と言ってわたしに体を預けてきた。

「疲れた?」

「いや、少し飲みすぎただけ」

「ウーロン茶か何か持ってこようか?」

「今はつぐみを充電中なんだから俺から離れないでよ。あっ、そのオレンジジュース飲んでいい?」

「どうぞ」

 一希はわたしの飲みかけのグラスを手に取ると、オレンジジュースを勢いよく半分以上飲んだ。
 喉が乾いていたのかな? 声も少しかすれている。きっと今日はわたしの分もがんばってくれたんだよね。わたしに無理をさせないように。

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