未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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番外編(7) Wedding After Party

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「おいおい、こんなところでふたりだけの世界かよ。俺もまーぜて!」

 ご機嫌な声が聞こえてきたと思ったら、さっきまで女の子たちと戯れていた飯島さんだった。
 その手には瓶ビールと空のグラスが2つある。
 飯島さんは一希の隣に腰を下ろすと、「一緒に飲もうぜ」とグラスをテーブルに置いた。

「酒はもういい」

「おまえ、俺の酒が飲めないっていうのかよ?」

 完全にできあがった状態の飯島さんがグラスからあふれそうなくらいにビールを注ぎ、「飲め、飲め」とけしかける。それを見た一希が慌てて瓶ビールを取り上げた。飯島さんはそれが気に入らないらしく、「返せー」と一希にもたれかかった。

「おまえ、うざい。飲み足りないんなら向こうで飲んでればよかっただろう。ほら、あそこに飯島狙いの女の子がふて腐れてるぞ」

「ああ……。でもあの子は俺じゃなくてっ──」

 飯島さんは途中まで言いかけたが、焦ったように言葉を止めた。
 けれどわたしはその先の言葉がなんなのか想像がついてしまった。あの女性は総務のひとだ。そっか。あのひとは一希のことを好きだったのか。いったい、どんな思いで今日の二次会に参加したんだろう。
 二次会には結婚式に招待できなかったひとたちにも幹事が声をかけている。おそらく総務の女性も幹事か他の仲のいい子にでも誘われたんだろう。

 誰かの幸せは他の誰かの不幸の上に成り立っていることもある。そのことをまざまざと思い知った瞬間だった。そんなつもりはなくても、ひとは知らず知らずのうちに誰かを傷つけていることがあって、まさにわたしは傷つける側に立っているんだ。
 だからといって一希を諦めることはできない。でも覚えておこう。それがわたしに唯一できることだから。

 一希は特に表情を変えることがなかったので、たぶん気づいていない。いつもは勘が鋭くて洞察力もあるほうなのに。もしかして自分の興味がないことになると鈍感になるのかな。
 わたしも気づかないふりをして何も言わなかった。すると飯島さんはほっとしたような顔になる。それから仕切り直しとばかりに、さっきより声のボリュームを上げた。

「とにかく俺は本間と飲みたいんだよ。ありがたく思え」

「なんか気持ち悪いなあ」

「なんだってぇ? どの口がそんなことを言っているのかな、一希くーん?」

 飯島さんはおちゃらけた口調で言っていたが、その手は一希のほっぺたを強くつまんで引っ張っていた。

「ちょっ、やめろって!」

 一希は痛がりながら力ずくでその手を引き離した。

「わかったから。ありがたくいただくから、おとなしく座ってろって」

 酔っ払い相手にムキになってもしょうがないと思ったのだろう。諦めたように言う。

「なら最初からそう言えよ、バーカ」

「バカは余計だ。飯島こそ、言いたいことがあるんならさっさと言えよ」

「そんなもんねーよ」

「嘘つけ。さっきから何か言いたげな顔してるくせに」

「おまえ、なんか勘違いしてるんじゃないか? 俺はただ……」

 飯島さんは何か言おうとしていたみたいだけど、口をつぐんだ。

「なんだよ?」

「なんでもねーよっ!」

「遠慮すんなって。俺だってこれまで飯島の気持ちは考えてなかったわけじゃないんだ」

「だからなんでもねーって言ってるだろう! 勝手に深読みすんな!」

 なんだかいつもの飯島さんじゃないような気がする。飯島さんはアルコールが入ると、いつもの陽気さに加えてさらに輪をかけて陽気になるのに、今日はやけに一希に絡んでくる。

「飯島さん、大丈夫ですか? ちょっと飲みすぎですよ」

 心配になり声をかけるが、飯島さんは「大丈夫」と言って手酌したビールをあおった。

「何かあったのかな?」

 一希に耳打ちすると、「さあな」という素っ気ない返事。おまけにビールを飲む顔は仏頂面で、さっきまでわたしたちの間にあったほんわかとした空気はもうどこにもない。

「もう、一希まで……」

 普段はこんなことでは怒らないのに。

「料理、取ってくるね。ふたりともお酒ばかり飲んで、なんにも食べてないからお腹が空いてるんじゃない?」

 お腹を満たせば場の雰囲気も和むんじゃないかと思い、言ってみる。
 ビュッフェ形式の料理はローストビーフ、チキンのトマト煮込み、スモークサーモン、パスタ、サラダ、デザート等、充実したメニューだ。

 わたしは料理を取りにいこうと席を立った。

 まずはお肉だ! そう思い、数種類のお肉料理をお皿にのせる。それからイライラにはカルシウムだよね。チーズたっぷりのピザとクリームドリアにしよう。そうそう、野菜も忘れずに。質より量。でも彩りと栄養バランスも考えて……。
 結局、3往復して任務完了。どうぞ召し上がれ、とふたりにフォークを持たせた。

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