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商店街
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「……色々な店がありますね」
あれから片付けを終えて昼食を取った僕たちは、三人で商店街へと移動していた。
「こっちがパン屋さんで、こっちが園芸のお店で、ここが服屋さんです!」
ここはサクラさんたちの家から歩いて十分ほどの場所にある商店街。その建物のほとんどがレンガ造りとなっており、全体的におちついた雰囲気を感じる。
「あらあらサクラちゃんこんにちは。また新作のパンが出来たら持っていくから楽しみにしていてね」
「はいっ、お姉さんの作ったパンはなんでもおいしいので楽しみにしています!」
「おっ、サクラちゃんどうしたんだい? またじょうろが壊れたって言うならまたウチで買っていきなよ。サービスするからさ」
「ありがとうございます。でも今日は別の用事なので、また今度お邪魔させてもらいます!」
「おうよ、いつでも待っているからな」
サクラさんが歩いているだけでいろんな人から声をかけられる。中には自分の作業の手を止めて店の中から出てくる人もいるくらいだ。
「サクラさん人気者ですね」
「昔はよくサクラちゃんをお使いさせていたからかみんなに覚えられちゃって。妖精ってみんな長生きだからサクラちゃんみたいな若い妖精が現れると可愛いのよ」
言われてみれば、みんなユズさんと同じくらいかそれ以上の見た目だ。ユズさんのような人ですら三桁を越えているのだから他の人は……。
「いてっ」
「こーら、女の子の年齢は気にしたらダメだよ」
頭をぽふっと叩かれる。確かに女性の年齢について色々考えるのは失礼だ。年齢のことはなんとか忘れるようにしなくては。
「――ひとまずこれで大丈夫かしら」
無事に自分の服を買うことが出来たのは良かったのだが、僕はこの身一つでこの世界へ飛ばされてきたためお金なんて持っておらず、全てユズさんに出してもらうことになってしまった。
「……何から何まですみません」
「いいのよこれくらい。元々私はそんなにお金使わないから」
ユズさんはそんなことを言うけれど、服から肌着、靴下までと生活に必要なものが一式……それもローテーションで使えるくらいには買っている。
この世界のお金の単位についてはわからないけれど、流石にこんなに買ったらかなりの金額になっているはずだ。
(この恩は必ず返さないとな……)
そんなことを思ってじっと袋を見つめていると、サクラさんが僕の前までやってきて、
「そんなに心配しなくても、どれも似合っていましたよ」
「ありがとうございます。でも、それはサクラさん達が選んでくれたので心配はしていませんよ」
「……? なにか不安そうにしていたので、わたしてっきり……」
「あー、いえ。気にしなくても大丈夫ですよ。本当に些細なことなので」
「そう、ですか?」
どこか納得のいかなさそうな表情を浮かべるサクラさんだが、こればかりは言えない。
そもそも何もかも買ってもあっている身で、そんな心配をすること自体が失礼というものだ。
「それより、サクラさんも僕の付き合ってもらってすみません」
「気にしないでください。わたしも好きでついて行っているので!」
柔らかく微笑むサクラさん。
この屈託のない笑顔が眩しい……。
「さてと、私は家に帰ろうと思うんだけど、二人はもう少し遊んでいたらどうかしら」
「え、それは悪いですよ。買ってもらっただけでも申し訳ないのに。せめて僕が家まで持ちます」
「うーん、その気持ちは嬉しいんだけど……。サクラちゃん」
「はいっ、わかりました!」
「え、えっ?」
ユズさんがサクラさんにアイコンタクトを取ると、サクラさんはビシッと敬礼をする。
「というわけで、二人で楽しんできてね~」
そう言い残しユズさんは颯爽と店から出て行ってしまう。
「はい、ではまたあとでです!」
「え、ちょっと、ユズさん!」
あとを追いかけようとするが、
「ダメですっ!」
サクラさんに抱き着くように腕にしがみ掴まれてしまう。
力こそ弱いものの、こうもしっかりとホールドされていては胸の感触が伝わってきてしまう。
「さ、サクラさんっ!?」
「肇さんはこっちです。わたしとお話ししましょう!」
「それは構わないけれど……」
(そんなことより、密着して胸が腕に!)
しかしこのままというのもサクラさんに悪い。
ここはどうするべきなのだと考えていると、
「わたし、とっておきの場所を知っているんです。ささ、早くいきましょう!」
サクラさんの方からすっと離れてくれる。
だが、ほっとしたのもつかの間、サクラさんは僕の手を取るとすぐさま走り出してしまう。
「あ、ちょ、サクラさん、そんなに引っ張らないで!」
「早くしないと日が落ちてしまいます!」
走ることについては問題ないのだが、身長差があるため僕は半ば中腰状態で走らされている。
それに先ほどから商店街の人達から注目され、僕達に向けられる視線が妙に暖かい。
「急がないといけないのは、わかったから離してくださいっ」
「わかりました! さあ行きましょう!」
そう言いながらもサクラさんの小さな手は僕の手を握ったまま離さず、むしろ握る力が少し強くなった気さえする。
「返事は良いのに何一つわかってない!」
――こうして僕は、色々な人達に見つめられながら商店街を離れることになった。
あれから片付けを終えて昼食を取った僕たちは、三人で商店街へと移動していた。
「こっちがパン屋さんで、こっちが園芸のお店で、ここが服屋さんです!」
ここはサクラさんたちの家から歩いて十分ほどの場所にある商店街。その建物のほとんどがレンガ造りとなっており、全体的におちついた雰囲気を感じる。
「あらあらサクラちゃんこんにちは。また新作のパンが出来たら持っていくから楽しみにしていてね」
「はいっ、お姉さんの作ったパンはなんでもおいしいので楽しみにしています!」
「おっ、サクラちゃんどうしたんだい? またじょうろが壊れたって言うならまたウチで買っていきなよ。サービスするからさ」
「ありがとうございます。でも今日は別の用事なので、また今度お邪魔させてもらいます!」
「おうよ、いつでも待っているからな」
サクラさんが歩いているだけでいろんな人から声をかけられる。中には自分の作業の手を止めて店の中から出てくる人もいるくらいだ。
「サクラさん人気者ですね」
「昔はよくサクラちゃんをお使いさせていたからかみんなに覚えられちゃって。妖精ってみんな長生きだからサクラちゃんみたいな若い妖精が現れると可愛いのよ」
言われてみれば、みんなユズさんと同じくらいかそれ以上の見た目だ。ユズさんのような人ですら三桁を越えているのだから他の人は……。
「いてっ」
「こーら、女の子の年齢は気にしたらダメだよ」
頭をぽふっと叩かれる。確かに女性の年齢について色々考えるのは失礼だ。年齢のことはなんとか忘れるようにしなくては。
「――ひとまずこれで大丈夫かしら」
無事に自分の服を買うことが出来たのは良かったのだが、僕はこの身一つでこの世界へ飛ばされてきたためお金なんて持っておらず、全てユズさんに出してもらうことになってしまった。
「……何から何まですみません」
「いいのよこれくらい。元々私はそんなにお金使わないから」
ユズさんはそんなことを言うけれど、服から肌着、靴下までと生活に必要なものが一式……それもローテーションで使えるくらいには買っている。
この世界のお金の単位についてはわからないけれど、流石にこんなに買ったらかなりの金額になっているはずだ。
(この恩は必ず返さないとな……)
そんなことを思ってじっと袋を見つめていると、サクラさんが僕の前までやってきて、
「そんなに心配しなくても、どれも似合っていましたよ」
「ありがとうございます。でも、それはサクラさん達が選んでくれたので心配はしていませんよ」
「……? なにか不安そうにしていたので、わたしてっきり……」
「あー、いえ。気にしなくても大丈夫ですよ。本当に些細なことなので」
「そう、ですか?」
どこか納得のいかなさそうな表情を浮かべるサクラさんだが、こればかりは言えない。
そもそも何もかも買ってもあっている身で、そんな心配をすること自体が失礼というものだ。
「それより、サクラさんも僕の付き合ってもらってすみません」
「気にしないでください。わたしも好きでついて行っているので!」
柔らかく微笑むサクラさん。
この屈託のない笑顔が眩しい……。
「さてと、私は家に帰ろうと思うんだけど、二人はもう少し遊んでいたらどうかしら」
「え、それは悪いですよ。買ってもらっただけでも申し訳ないのに。せめて僕が家まで持ちます」
「うーん、その気持ちは嬉しいんだけど……。サクラちゃん」
「はいっ、わかりました!」
「え、えっ?」
ユズさんがサクラさんにアイコンタクトを取ると、サクラさんはビシッと敬礼をする。
「というわけで、二人で楽しんできてね~」
そう言い残しユズさんは颯爽と店から出て行ってしまう。
「はい、ではまたあとでです!」
「え、ちょっと、ユズさん!」
あとを追いかけようとするが、
「ダメですっ!」
サクラさんに抱き着くように腕にしがみ掴まれてしまう。
力こそ弱いものの、こうもしっかりとホールドされていては胸の感触が伝わってきてしまう。
「さ、サクラさんっ!?」
「肇さんはこっちです。わたしとお話ししましょう!」
「それは構わないけれど……」
(そんなことより、密着して胸が腕に!)
しかしこのままというのもサクラさんに悪い。
ここはどうするべきなのだと考えていると、
「わたし、とっておきの場所を知っているんです。ささ、早くいきましょう!」
サクラさんの方からすっと離れてくれる。
だが、ほっとしたのもつかの間、サクラさんは僕の手を取るとすぐさま走り出してしまう。
「あ、ちょ、サクラさん、そんなに引っ張らないで!」
「早くしないと日が落ちてしまいます!」
走ることについては問題ないのだが、身長差があるため僕は半ば中腰状態で走らされている。
それに先ほどから商店街の人達から注目され、僕達に向けられる視線が妙に暖かい。
「急がないといけないのは、わかったから離してくださいっ」
「わかりました! さあ行きましょう!」
そう言いながらもサクラさんの小さな手は僕の手を握ったまま離さず、むしろ握る力が少し強くなった気さえする。
「返事は良いのに何一つわかってない!」
――こうして僕は、色々な人達に見つめられながら商店街を離れることになった。
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