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わたしは本気、ですよ
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「はぁ……疲れた……」
お風呂から上がり、僕はすぐさま自室に戻ってベッドに倒れ込む。
あの後、家に戻ってからもサクラの過剰なスキンシップは続いた。その度にアオイさんが睨んできたけれど、多分上手く凌ぎきれたと思う。
ただ、それよりも意外だったのはユズさんの方で……。
「いつも通りだったな」
アオイさんとは対照的に、僕たちのことを微笑ましく見守っているだけというか。むしろどこか楽しそうにしていた?
てっきりユズさんも僕のことは気が付いていて、アオイさんのように反対するかと思ったけど、そんな素振りはなかった。
……いや、アオイさんに全部任せただけ、とも考えられるけど。
「…………ううぅぅぅうぅぅ」
一人になるとダメだとわかっていても、サクラのことで頭がいっぱいになる。
こっちの世界に来てから毎日のように一緒にいて……。
いつから好きになったのか? と、聞かれれば多分あの時。
朦朧とした意識の中、初めてサクラを見たときだ。
「これからどうしよう……」
正直に言うと、このままサクラのスキンシップが続けば僕自身どうなるかわからない。
かと言って元の世界に戻る方法もわからないし、この世界には他に頼れる当てがない。
「はぁ~……」
大きなため息が零れる。
「(これ以上考えても無駄だろうしもういいや、今日はこのまま眠ってしまおう)」
と思っていると、
「ん?」
部屋の扉をノックする音。しかし、声は聞こえない。
「……気のせい、じゃないよな?」
一人で首をかしげていると、再び扉がノックされる。が、またしても声はない。
アオイさんはわざわざ訪ねないだろうし、サクラもユズさんも声はかけるだろう。……なら、ノックしているのは誰だ、という話になる。
不審者なんて入れる気がしないし……。
なんて考えている間にもノックがされる。
「……考えていても仕方ないか」
「はーい、ってサクラ?」
扉を開けた先にいたのは他でもないサクラだった。
だけど、ずっと俯いたままで、その顔は見えない。
「声かけてくれれば良いのに」
「…………」
「でもごめん、僕今日は疲れたからもう寝ようと思っていて、話なら明日――」
そう言いながら扉を閉めようとするが、
「――メです」
「えっ?」
閉めかけた扉を掴まれて阻止されてしまう。
「明日なんて、ダメです!」
「さ、サクラっ!?」
そしてそのままサクラは僕を部屋の中へと押し込む。
予想外の出来事に思わず気圧されてしまい、そのまま尻もちをついてしまう。
「ずっと、待っていました」
言いながらサクラは扉を閉める。それと同時にカチャリと鍵の閉まる音が聞こえた。
そして――。
「あの、サクラ……そこ離れてくれるかな……」
僕の男の子の部分が丁度サクラのお尻の下敷きになってしまっている。
感じたことのないふわふわとした柔らかさによって、下半身に熱が集まっていくのがわかる。
少しでも気を抜いたり、刺激を与えられてしまえば確実に反応してしまう。だけど、
「嫌です!」
「こうでもしないと、わたしを避けるじゃないですか!」
「それは……」
これ以上、サクラの近くに居たらこの気持ちを我慢できなくなる。
そうしたら間違いなくサクラを不幸にしてしまうから。
「わたし、肇さんのことが好き、なんです」
「ぇ……」
「出会ってからまだ全然日も経ってないですけど、それでも肇さんのことが大好きなんです!」
「朝、肇さんの顔を見ると嬉しくなります。歌を聴いてもらえるといつもより上手に歌えます」
「確かに最近はちょっとやりすぎたかなって思うところもありますけど、それでもわたしは肇さんのことがそれくらい好きなんです!」
「サクラ……」
彼女の言葉ひとつひとつに、心が強く揺さぶられる。
こんなの卑怯だ。僕だって言いたい、サクラが好きだって。
だけど、それが言えないのはほかならぬサクラのためだ。
「僕は……っ」
ダメだ、これ以上言っては。
僕の本心があふれ出しそうになってしまう。
「……わたしが妖精、だからですか?」
「っ!」
「わたしが妖精で、肇さんは人間だから、絶対に幸せになれない。そうお姉ちゃんに言われたんですか?」
「違う! ただ僕がそう思っているだけで……。それに、僕はまだ記憶が……」
「そんなの関係ないです!」
「肇さんの記憶がどうとか、種族が違うとかそんなの関係ないです。わたしは肇さんが来てからずっと幸せでした」
「それに記憶がどうであっても肇さんは肇さんなんです。わたしが大好きという気持ちは変わりませんっ!」
「んっ!?」
突然視界が真っ暗になる。
同時にふわりと石鹸の香りと、唇に柔らかいものが重なった。
「んっ、肇、さん……」
僕たちはキスをしていた。
「……わたしは本気、ですよ」
唇を離し、ぽつりと呟く。
見るとサクラの顔は耳まで真っ赤に染まっている。
それに僕にしがみ付いている手だって、細かく震えている。
今のキスにどれほどの覚悟を持って行ったのか。
こんなにも僕を必要としてくれる、愛おしい存在をこれ以上ただ否定できるか。
「……サクラ」
「肇さ――んっ」
二度目のキス。今度は僕から彼女の唇に重ねる。
「僕も、サクラのことが好きだ」
「……ふぇ」
「だけど、やっぱり僕たちが結ばれるのは本当に良いのかって思う」
「それはわたしと肇さんが違う種族だから、ですか?」
「もちろんそれもある。でも一番はそこじゃないんだ」
「僕はいつか元の世界に戻る」
「――っ」
僕がその言葉を口にしたとき、彼女は息をのむ。
「そうなったら多分、この世界にはもう来られないだろうし、何よりここで起きたことを覚えているかわからない」
「そんなこと!」
「ない、とは言えないよね」
「そう、ですけど……」
実際、今の僕は記憶をほとんど失っている。
これがこの世界に来たから起こったのか、はたまた別の要因があるのかはわからないけど。
「それに元の世界にサクラは連れていけないから。どんなに会いたくても、会うことはできない」
「僕はそれを八十年余り抱えるだけでいいけど、サクラはもっと長いからさ……。って、サクラがずっと僕のことを好きでいてくれるかなんてわからないけど」
「でもね、万が一でもその可能性があるとしたら怖いなって。一度起きた奇跡をずっと胸に抱いて生きていくのって、きっと辛いことだと思うから」
これが僕の……偽りのない考えだ。
確かにサクラのことは好きだ。その気持ちに嘘はない。
ただ、それ以上に怖かった。アオイさんに言われたことが。
僕だけの問題なら考える必要なんてないけど、これは大切な人……サクラにも関わることだから。
「だからさ、僕たちは好き合っているけど、それ以上先へは行かない。これがお互いのためだと思うんだ」
……納得してくれるだろうか。
いや、大丈夫だろう。サクラは見た目こそ幼いがしっかりと自分の考えを持っている。
だからここまで言えばわかってくれる。そう、思っていたのに、
「……言いたいことは、それだけ、ですか?」
「えっ?」
「わたし言いました。肇さんがどうなっても大好きだって……」
「今更そんなこと言われても、もう遅いです。遅すぎます。わたしはもうどうしようもないくらいに肇さんのことが好きになっちゃったんです」
「それに肇さんだってわたしのこと、好きって言ってくれました」
「そ、それはそうだけど……」
「だったら、もうわたし、我慢しません。というよりできません!」
「さ、サクラっ!?」
いきなり体を押し倒され、なすすべなく僕とサクラはベッドに倒れ込んだ……。
お風呂から上がり、僕はすぐさま自室に戻ってベッドに倒れ込む。
あの後、家に戻ってからもサクラの過剰なスキンシップは続いた。その度にアオイさんが睨んできたけれど、多分上手く凌ぎきれたと思う。
ただ、それよりも意外だったのはユズさんの方で……。
「いつも通りだったな」
アオイさんとは対照的に、僕たちのことを微笑ましく見守っているだけというか。むしろどこか楽しそうにしていた?
てっきりユズさんも僕のことは気が付いていて、アオイさんのように反対するかと思ったけど、そんな素振りはなかった。
……いや、アオイさんに全部任せただけ、とも考えられるけど。
「…………ううぅぅぅうぅぅ」
一人になるとダメだとわかっていても、サクラのことで頭がいっぱいになる。
こっちの世界に来てから毎日のように一緒にいて……。
いつから好きになったのか? と、聞かれれば多分あの時。
朦朧とした意識の中、初めてサクラを見たときだ。
「これからどうしよう……」
正直に言うと、このままサクラのスキンシップが続けば僕自身どうなるかわからない。
かと言って元の世界に戻る方法もわからないし、この世界には他に頼れる当てがない。
「はぁ~……」
大きなため息が零れる。
「(これ以上考えても無駄だろうしもういいや、今日はこのまま眠ってしまおう)」
と思っていると、
「ん?」
部屋の扉をノックする音。しかし、声は聞こえない。
「……気のせい、じゃないよな?」
一人で首をかしげていると、再び扉がノックされる。が、またしても声はない。
アオイさんはわざわざ訪ねないだろうし、サクラもユズさんも声はかけるだろう。……なら、ノックしているのは誰だ、という話になる。
不審者なんて入れる気がしないし……。
なんて考えている間にもノックがされる。
「……考えていても仕方ないか」
「はーい、ってサクラ?」
扉を開けた先にいたのは他でもないサクラだった。
だけど、ずっと俯いたままで、その顔は見えない。
「声かけてくれれば良いのに」
「…………」
「でもごめん、僕今日は疲れたからもう寝ようと思っていて、話なら明日――」
そう言いながら扉を閉めようとするが、
「――メです」
「えっ?」
閉めかけた扉を掴まれて阻止されてしまう。
「明日なんて、ダメです!」
「さ、サクラっ!?」
そしてそのままサクラは僕を部屋の中へと押し込む。
予想外の出来事に思わず気圧されてしまい、そのまま尻もちをついてしまう。
「ずっと、待っていました」
言いながらサクラは扉を閉める。それと同時にカチャリと鍵の閉まる音が聞こえた。
そして――。
「あの、サクラ……そこ離れてくれるかな……」
僕の男の子の部分が丁度サクラのお尻の下敷きになってしまっている。
感じたことのないふわふわとした柔らかさによって、下半身に熱が集まっていくのがわかる。
少しでも気を抜いたり、刺激を与えられてしまえば確実に反応してしまう。だけど、
「嫌です!」
「こうでもしないと、わたしを避けるじゃないですか!」
「それは……」
これ以上、サクラの近くに居たらこの気持ちを我慢できなくなる。
そうしたら間違いなくサクラを不幸にしてしまうから。
「わたし、肇さんのことが好き、なんです」
「ぇ……」
「出会ってからまだ全然日も経ってないですけど、それでも肇さんのことが大好きなんです!」
「朝、肇さんの顔を見ると嬉しくなります。歌を聴いてもらえるといつもより上手に歌えます」
「確かに最近はちょっとやりすぎたかなって思うところもありますけど、それでもわたしは肇さんのことがそれくらい好きなんです!」
「サクラ……」
彼女の言葉ひとつひとつに、心が強く揺さぶられる。
こんなの卑怯だ。僕だって言いたい、サクラが好きだって。
だけど、それが言えないのはほかならぬサクラのためだ。
「僕は……っ」
ダメだ、これ以上言っては。
僕の本心があふれ出しそうになってしまう。
「……わたしが妖精、だからですか?」
「っ!」
「わたしが妖精で、肇さんは人間だから、絶対に幸せになれない。そうお姉ちゃんに言われたんですか?」
「違う! ただ僕がそう思っているだけで……。それに、僕はまだ記憶が……」
「そんなの関係ないです!」
「肇さんの記憶がどうとか、種族が違うとかそんなの関係ないです。わたしは肇さんが来てからずっと幸せでした」
「それに記憶がどうであっても肇さんは肇さんなんです。わたしが大好きという気持ちは変わりませんっ!」
「んっ!?」
突然視界が真っ暗になる。
同時にふわりと石鹸の香りと、唇に柔らかいものが重なった。
「んっ、肇、さん……」
僕たちはキスをしていた。
「……わたしは本気、ですよ」
唇を離し、ぽつりと呟く。
見るとサクラの顔は耳まで真っ赤に染まっている。
それに僕にしがみ付いている手だって、細かく震えている。
今のキスにどれほどの覚悟を持って行ったのか。
こんなにも僕を必要としてくれる、愛おしい存在をこれ以上ただ否定できるか。
「……サクラ」
「肇さ――んっ」
二度目のキス。今度は僕から彼女の唇に重ねる。
「僕も、サクラのことが好きだ」
「……ふぇ」
「だけど、やっぱり僕たちが結ばれるのは本当に良いのかって思う」
「それはわたしと肇さんが違う種族だから、ですか?」
「もちろんそれもある。でも一番はそこじゃないんだ」
「僕はいつか元の世界に戻る」
「――っ」
僕がその言葉を口にしたとき、彼女は息をのむ。
「そうなったら多分、この世界にはもう来られないだろうし、何よりここで起きたことを覚えているかわからない」
「そんなこと!」
「ない、とは言えないよね」
「そう、ですけど……」
実際、今の僕は記憶をほとんど失っている。
これがこの世界に来たから起こったのか、はたまた別の要因があるのかはわからないけど。
「それに元の世界にサクラは連れていけないから。どんなに会いたくても、会うことはできない」
「僕はそれを八十年余り抱えるだけでいいけど、サクラはもっと長いからさ……。って、サクラがずっと僕のことを好きでいてくれるかなんてわからないけど」
「でもね、万が一でもその可能性があるとしたら怖いなって。一度起きた奇跡をずっと胸に抱いて生きていくのって、きっと辛いことだと思うから」
これが僕の……偽りのない考えだ。
確かにサクラのことは好きだ。その気持ちに嘘はない。
ただ、それ以上に怖かった。アオイさんに言われたことが。
僕だけの問題なら考える必要なんてないけど、これは大切な人……サクラにも関わることだから。
「だからさ、僕たちは好き合っているけど、それ以上先へは行かない。これがお互いのためだと思うんだ」
……納得してくれるだろうか。
いや、大丈夫だろう。サクラは見た目こそ幼いがしっかりと自分の考えを持っている。
だからここまで言えばわかってくれる。そう、思っていたのに、
「……言いたいことは、それだけ、ですか?」
「えっ?」
「わたし言いました。肇さんがどうなっても大好きだって……」
「今更そんなこと言われても、もう遅いです。遅すぎます。わたしはもうどうしようもないくらいに肇さんのことが好きになっちゃったんです」
「それに肇さんだってわたしのこと、好きって言ってくれました」
「そ、それはそうだけど……」
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