魔法少年−幼馴染の死の真相を知るため、男の俺が魔法少年?になった件

神町 恵

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第1章 魔法少年

黄泉との出会い

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昼下がりの喫茶店。
窓際の席に座ると、外の街路樹が風に揺れ、カップの中の珈琲が小さく波打った。
俺はスプーンを回しながら、向かいに座る咲希の横顔をうかがった。
彼女はベレー帽を外し、黒髪のショートボブを指先で整えながら、小さく息を吐く。
どこか言葉を選ぶように、慎重な気配をまとっていた。

「……黄泉のことを話すね」

その一言で、俺は背筋を正した。

咲希は視線をカップの中に落とし、淡々と語り始めた。

「学校から帰る途中だった。急に意識がぼーっとして……気づいたら、足が勝手に神社へ向かってたの。鳥居を潜ったとき、そこに……菜月もいた」

心臓が跳ねる。
菜月。彼女の名前を聞くたびに、胸の奥の古傷が疼く。

「菜月も同じだったみたい。……導かれるように、あの場所に」

咲希の声が震えた瞬間、俺の意識は過去へと引きずり込まれた。

――回想。

境内に差し込む夕陽が、鳥居を赤く染め上げていた。
意識がはっきりした時、そこには――奇妙な存在がいた。

「君たちを呼んだのは私だよ」

聞こえたのは、少年のようにも、老人のようにも響く声。
姿は人に近いが、どこか現実から浮き上がった異質さをまとっていた。

菜月が恐る恐る口を開いた。

「どうして……私たちを呼んだの?」

「理由は単純さ。君たちに――魔法少女になってもらいたい」

その突拍子もない言葉に、咲希は眉をひそめた。

「は? 何言ってんの?」

黄泉と名乗るその存在は、どこか楽しげに肩を竦めた。

「魔法少女は、この世界に蔓延る“黒獣”を倒す使命を持つ者だよ。君たちはその適性を持っている。だから、ここに導いたんだ」

「魔法少女? 馬鹿げてる。私たちを舐めてるの?」

咲希の吐き捨てるような声に、境内の空気が少し冷え込む。
そんな中で、菜月が気を遣うように口を開いた。

「でも……困ってるんだよね? 狐さん」

その柔らかな声に、黄泉はわずかに目を細めた。
対して咲希は冷たく言い放つ。

「妙な生き物に構わなくていいでしょ」

それでも菜月は優しかった。

「あなたの名前は、なんて言うの?」

「私は――黄泉。こことは違う異世界から来た、使徒だ」

「黄泉……。よろしくね、黄泉」

笑顔で差し伸べられたその言葉に、咲希は内心で呟いた。

(……お人好しすぎるでしょ)

黄泉は再び問いかける。

「改めて聞くよ。魔法少女、どうかな?」

菜月は「うーん」と困ったように考え込む。
一方の咲希は、ため息をついて踵を返した。

「じゃあ、私は帰る。くだらない」

鳥居へと足を向けた、その瞬間――。

――ゴオォォォッ!!

低い唸り声とともに、鳥居の奥から黒い影が現れた。
異形の四肢、爛々と光る瞳。黒獣。

「なっ……何なの、あれ……!」

咲希が息を呑む。
黄泉はまるで散歩にでも来たように緊張感のない声で言った。

「どうやら私を追ってきたみたいだね」

「ど、どうすれば……」

菜月の声が震える。

「黒獣。世界に災いをもたらす者だ。……あれを倒せるのは、魔法少女だけ」

「お前……謀ったな!」

咲希の怒声が境内に響く。
しかし菜月は必死に首を振った。

「そんな……黄泉はそんなつもりじゃ……!」

黒獣が、土を抉りながら近づいてくる。
黄泉の目が、わずかに細められた。

「このままでは全員やられる。……仕方ないね。緊急で、君たちを“魔法少女”にする」

その言葉と同時に、眩い光が二人を包み込んだ。
咲希と菜月の悲鳴が、光の中に溶けて消えていく――。



「……それが、始まりだった」

珈琲の香りが、再び意識を現実に引き戻す。
咲希は淡々と語り終え、視線をカップに落としたまま、唇を噛んだ。

俺は言葉を失った。
黄泉――あいつは、最初から“偽り”で二人を絡め取ったのか。
そして、菜月は……。

胸の奥で、怒りと悔しさが渦を巻いた。
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