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最初の街
第1話
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たったいま、サクラがクロビスと出会ったのは薄暗い森の中だ。
サクラは頭の中で、ゲーム内のマップを思い浮かべる。
──ここはおそらく、ゲームにログインしたときに主人公が最初に目覚める森であっているはず、だよね。
プレイヤーが熊に追いかけられて崖から落ちた場所は「暗礁の森」とゲーム内マップには記されていた。
クロビスがいるのだからその場所で間違いはないはずと、サクラは確信する。
現在地を自覚することができて安心する一方、サクラはかつて抱いていた疑問が脳裏をよぎり顔を曇らせる。
ここは森の中なのに、暗礁とはどういうことなのか。
初めてログインしてプレイしたときにはそう不思議に思ったのだが、サクラはその名称について深く掘り下げて考えたことはなかった。
──もしかして、稀人が流れ着く先だからって感じのネーミングなのかな。暗礁に乗り上げる、とかいうもんね。
時空という海を漂い、異世界人が打ち上げられる土地。
頭をひねってみたものの、サクラには誰でも思いつけるような感想しかでてこなかった。
サクラは新しいゲームをプレイするときには、ネタバレが嫌でしばらくSNSを見ないようにするタイプだ。
攻略系のサイトこそ煮詰まったときには参考にしたりもするが、今ばかりは積極的にゲーム考察に触れてこなかったことを悔やむ。
この世界で死なずに生き抜くためには、わずかな可能性であっても考慮して動くことがこれから重要になるだろう。
「……ところでクロビスさん。もうずいぶんと森の中を歩いたと思うのだけど、まだ街には着かないの?」
サクラはクロビスと一時間ほど森の中をさまよっている。
街へ向かっているはずなのだが、いっこうに目的地に着く気配が感じられない。
森の中で過ごした時間の中で、サクラとクロビスは何度もモンスターの襲撃を受けていた。
今までモニター越しで見ていたモンスターたち。
見覚えのあるそれらの生き物を目の前にしたとき、サクラの心に喜びはなかった。
ただただ恐ろしく、動けないでいた。
サクラが怯えて震えている間に、クロビスが行く手に立ち塞がるモンスターを切り捨てていく。
「もう少しで着きますが、お疲れになったのなら休みますか?」
「私はぼんやりしているだけだから疲れてはいないけどさ。あなたが一人で戦ってくれているから、体調はどうなのかなって気になっているだけよ」
サクラはクロビスが戦闘能力のあるキャラクターであることは知っている。
しかし、実際にこうして目の前で戦われると、モニターを通して見ていた姿とはまるで違う印象になる。
現実では見たことのない異形の化け物に立ち向かっていく姿。
その背中がとてつもなく頼もしくて、目を奪われてしまう瞬間が何度もあった。
「私のことならご心配なさらないでください。この森にいる獣であれば、問題なく始末できます」
「あなたが問題ないのなら、それでいいけれど……」
ゲーム内では、クロビスと出会った暗礁の森から、最初の街までの移動は10分もかかっていないはずだ。
地図上の距離と実際の距離の感じ方が違うことは理解できる。
しかしながら、ゲームと現実ではこうも違うのかと気持ちが落ち込んでしまうのだ。
「……なんだかね。あなたと出会った場所は、こんなにも街から遠いんだなと思って……」
「本当にすぐ着きますよ。さあ、行きましょう」
余計なことを考えるなと念じても、どうしても頭の中がゲーム内情報であふれてしまう。絶対に死にたくはないから、ああでもないこうでもないと、未来の選択肢を広げるために思いを巡らせてしまう。
そうして、ここが死にゲーの世界なのだと意識が深まって、ますます気が滅入ってしまうのだった。
サクラは頭の中で、ゲーム内のマップを思い浮かべる。
──ここはおそらく、ゲームにログインしたときに主人公が最初に目覚める森であっているはず、だよね。
プレイヤーが熊に追いかけられて崖から落ちた場所は「暗礁の森」とゲーム内マップには記されていた。
クロビスがいるのだからその場所で間違いはないはずと、サクラは確信する。
現在地を自覚することができて安心する一方、サクラはかつて抱いていた疑問が脳裏をよぎり顔を曇らせる。
ここは森の中なのに、暗礁とはどういうことなのか。
初めてログインしてプレイしたときにはそう不思議に思ったのだが、サクラはその名称について深く掘り下げて考えたことはなかった。
──もしかして、稀人が流れ着く先だからって感じのネーミングなのかな。暗礁に乗り上げる、とかいうもんね。
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頭をひねってみたものの、サクラには誰でも思いつけるような感想しかでてこなかった。
サクラは新しいゲームをプレイするときには、ネタバレが嫌でしばらくSNSを見ないようにするタイプだ。
攻略系のサイトこそ煮詰まったときには参考にしたりもするが、今ばかりは積極的にゲーム考察に触れてこなかったことを悔やむ。
この世界で死なずに生き抜くためには、わずかな可能性であっても考慮して動くことがこれから重要になるだろう。
「……ところでクロビスさん。もうずいぶんと森の中を歩いたと思うのだけど、まだ街には着かないの?」
サクラはクロビスと一時間ほど森の中をさまよっている。
街へ向かっているはずなのだが、いっこうに目的地に着く気配が感じられない。
森の中で過ごした時間の中で、サクラとクロビスは何度もモンスターの襲撃を受けていた。
今までモニター越しで見ていたモンスターたち。
見覚えのあるそれらの生き物を目の前にしたとき、サクラの心に喜びはなかった。
ただただ恐ろしく、動けないでいた。
サクラが怯えて震えている間に、クロビスが行く手に立ち塞がるモンスターを切り捨てていく。
「もう少しで着きますが、お疲れになったのなら休みますか?」
「私はぼんやりしているだけだから疲れてはいないけどさ。あなたが一人で戦ってくれているから、体調はどうなのかなって気になっているだけよ」
サクラはクロビスが戦闘能力のあるキャラクターであることは知っている。
しかし、実際にこうして目の前で戦われると、モニターを通して見ていた姿とはまるで違う印象になる。
現実では見たことのない異形の化け物に立ち向かっていく姿。
その背中がとてつもなく頼もしくて、目を奪われてしまう瞬間が何度もあった。
「私のことならご心配なさらないでください。この森にいる獣であれば、問題なく始末できます」
「あなたが問題ないのなら、それでいいけれど……」
ゲーム内では、クロビスと出会った暗礁の森から、最初の街までの移動は10分もかかっていないはずだ。
地図上の距離と実際の距離の感じ方が違うことは理解できる。
しかしながら、ゲームと現実ではこうも違うのかと気持ちが落ち込んでしまうのだ。
「……なんだかね。あなたと出会った場所は、こんなにも街から遠いんだなと思って……」
「本当にすぐ着きますよ。さあ、行きましょう」
余計なことを考えるなと念じても、どうしても頭の中がゲーム内情報であふれてしまう。絶対に死にたくはないから、ああでもないこうでもないと、未来の選択肢を広げるために思いを巡らせてしまう。
そうして、ここが死にゲーの世界なのだと意識が深まって、ますます気が滅入ってしまうのだった。
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