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大型ダンジョン いいえ、普通のお城ですよ
第9話
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「先ほど出会ったばかりだというのに、ずいぶんとあいつのことがわかっているような口ぶりですね」
「……いやあ、なんとなくね」
サクラのつぶやきに、クロビスが鼻を鳴らした。不機嫌そうに腕を組み、ぎろりとサクラを睨んでくる。
「ぼんやりとそう思っただけで、べつにわかっているとかじゃないってば」
「そうですか。サクラさんがそんなに察しの良い方とは存じませんでした」
「ねえ、ちょっと。あなたにまで怒られるのは嫌なんだけど」
仮面越しでも、クロビスがむくれた表情をしているのが伝わってくる。
つい今しがた、落ち込んでいたサクラを抱きしめて慰めてくれた人物とは思えないくらい態度が悪い。
クロビスの機嫌が急降下してしまった理由はわからない。ただ、サクラはゲーム内での情報を踏まえて、ロークルという人物の感想を述べてしまっていた。その点は失言だったと認めて、猛省するべきだろう。
親衛騎士ロークルを評するというのは、あまりにも生意気な行為だった。彼は領主を守る騎士の頂点に立つ人物なのだ。領民の立場からすれば敬うべき存在の者を小娘に、それも異世界からやってきた稀人に口うるさく言われてしまえば、気分を害してしまうというのは容易に推察できたはずだ。
いくら推しに会えて興奮していたとはいえ、冷静さを欠きすぎていた。自分を落ちつかせるためにも、サクラは抱いていた疑問を解消するためにクロビスへ問いかける。
「そういえば、あなたはロークル様と親しいのね?」
実はこの部屋にやってきてから、ずっと気になっていた。
クロビスとロークルの軽快なやり取りに、胸が高鳴っていた。
サクラがからだを震わせたのは、恐怖だけではない。二人が親しく会話をしているところを見てしまったせいでもある。
「そろそろ結婚しろとかさ。そういう余計なお世話をあなたへ言っていたのもロークル様なの?」
サクラはぐいっと身を乗り出し、目を輝かせながら尋ねた。平常心を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「気安い友人というか、打ち解けているように見えたものだからね。二人のことが知りたくなっちゃったのよねえ?」
ゲーム内情報では、クロビスとロークルの繋がりが明確に語られてはいなかった。設定資料集にも記載はなかった。
だが、考えてもみれば同じ領地に住み、同一の主人に仕えているのだ。
接点があることは想像できたかもしれないが、異性を紹介しようとするほどの仲とは誰が予想できただろう。
「ねえねえ、二人は幼馴染とかなの? それともさ、軍に入った時期が一緒とか?」
サクラが次々と質問を繰り出すので、クロビスは気だるそうに舌打ちをした。
「……まったく、あなたまで面倒な話をするのですか。もういいですから、さっさと身体を調べさせていただきますよ」
クロビスがやれやれと頭を振りながら、話をはじめたときだった。
──カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン!
けたたましい音が鳴り響く。
この鐘の音を、サクラはよく知っていた。
襲撃を知らせる警報音だと気がつくのに、時間はかからなかった。
「クロビス様!」
部屋の中にいて、ずっと気配を消していた職員のひとりが声を上げた。
「わかっています。すぐに行きますから、あなた方は先に!」
クロビスの返事を聞いて、部屋の中にいた者たちが一斉に廊下へ飛び出していく。
「サクラさんはここにいてください。ノルウェット、行きますよ」
「はい! もう出れますー」
いつの間に準備をしていたのだろう。
クロビスに声をかけられたノルウェットは、大きな黒い皮の鞄を抱えていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! こんなところにひとりは嫌!」
サクラは他の者たちに続いて廊下へ飛び出そうとしているクロビスの腕を、慌てて掴んだ。
「下手に動かないほうがいいです。どうしてもここでひとりがお嫌なら、来たときとは反対側に廊下を進んでください。非戦闘員たちが避難しているはずですから、その者たちと一緒に逃げてください」
クロビスが一息に捲し立てる。
クロビスが言葉を言い終えると同時に、サクラが彼に触れていた部分から、バチンと音がする。手のひらが、熱をもってひりひりと痛みだした。
魔法で強引に手を振り払われてしまったという事実を、サクラはすぐに認識することができた。
──本当に魔法を使われていた。
──クロビスに拒絶された。
サクラが衝撃を受けて固まっている間に、クロビスとノルウェットは部屋を出ていってしまった。
「……いやあ、なんとなくね」
サクラのつぶやきに、クロビスが鼻を鳴らした。不機嫌そうに腕を組み、ぎろりとサクラを睨んでくる。
「ぼんやりとそう思っただけで、べつにわかっているとかじゃないってば」
「そうですか。サクラさんがそんなに察しの良い方とは存じませんでした」
「ねえ、ちょっと。あなたにまで怒られるのは嫌なんだけど」
仮面越しでも、クロビスがむくれた表情をしているのが伝わってくる。
つい今しがた、落ち込んでいたサクラを抱きしめて慰めてくれた人物とは思えないくらい態度が悪い。
クロビスの機嫌が急降下してしまった理由はわからない。ただ、サクラはゲーム内での情報を踏まえて、ロークルという人物の感想を述べてしまっていた。その点は失言だったと認めて、猛省するべきだろう。
親衛騎士ロークルを評するというのは、あまりにも生意気な行為だった。彼は領主を守る騎士の頂点に立つ人物なのだ。領民の立場からすれば敬うべき存在の者を小娘に、それも異世界からやってきた稀人に口うるさく言われてしまえば、気分を害してしまうというのは容易に推察できたはずだ。
いくら推しに会えて興奮していたとはいえ、冷静さを欠きすぎていた。自分を落ちつかせるためにも、サクラは抱いていた疑問を解消するためにクロビスへ問いかける。
「そういえば、あなたはロークル様と親しいのね?」
実はこの部屋にやってきてから、ずっと気になっていた。
クロビスとロークルの軽快なやり取りに、胸が高鳴っていた。
サクラがからだを震わせたのは、恐怖だけではない。二人が親しく会話をしているところを見てしまったせいでもある。
「そろそろ結婚しろとかさ。そういう余計なお世話をあなたへ言っていたのもロークル様なの?」
サクラはぐいっと身を乗り出し、目を輝かせながら尋ねた。平常心を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「気安い友人というか、打ち解けているように見えたものだからね。二人のことが知りたくなっちゃったのよねえ?」
ゲーム内情報では、クロビスとロークルの繋がりが明確に語られてはいなかった。設定資料集にも記載はなかった。
だが、考えてもみれば同じ領地に住み、同一の主人に仕えているのだ。
接点があることは想像できたかもしれないが、異性を紹介しようとするほどの仲とは誰が予想できただろう。
「ねえねえ、二人は幼馴染とかなの? それともさ、軍に入った時期が一緒とか?」
サクラが次々と質問を繰り出すので、クロビスは気だるそうに舌打ちをした。
「……まったく、あなたまで面倒な話をするのですか。もういいですから、さっさと身体を調べさせていただきますよ」
クロビスがやれやれと頭を振りながら、話をはじめたときだった。
──カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン!
けたたましい音が鳴り響く。
この鐘の音を、サクラはよく知っていた。
襲撃を知らせる警報音だと気がつくのに、時間はかからなかった。
「クロビス様!」
部屋の中にいて、ずっと気配を消していた職員のひとりが声を上げた。
「わかっています。すぐに行きますから、あなた方は先に!」
クロビスの返事を聞いて、部屋の中にいた者たちが一斉に廊下へ飛び出していく。
「サクラさんはここにいてください。ノルウェット、行きますよ」
「はい! もう出れますー」
いつの間に準備をしていたのだろう。
クロビスに声をかけられたノルウェットは、大きな黒い皮の鞄を抱えていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! こんなところにひとりは嫌!」
サクラは他の者たちに続いて廊下へ飛び出そうとしているクロビスの腕を、慌てて掴んだ。
「下手に動かないほうがいいです。どうしてもここでひとりがお嫌なら、来たときとは反対側に廊下を進んでください。非戦闘員たちが避難しているはずですから、その者たちと一緒に逃げてください」
クロビスが一息に捲し立てる。
クロビスが言葉を言い終えると同時に、サクラが彼に触れていた部分から、バチンと音がする。手のひらが、熱をもってひりひりと痛みだした。
魔法で強引に手を振り払われてしまったという事実を、サクラはすぐに認識することができた。
──本当に魔法を使われていた。
──クロビスに拒絶された。
サクラが衝撃を受けて固まっている間に、クロビスとノルウェットは部屋を出ていってしまった。
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