49 / 78
リスタート
第5話
しおりを挟む
「いまの私にとって、重要なのは死なないこと。それから、誰も死なせないこと!」
サクラは机の上に並べたさまざまなアイテムの中から、必要最低限のものだけをアイテム鞄に詰め込んだ。
「持っていくのは回復系のアイテムだけでいい」
装備重量は少ないほど素早く動ける。早く動くことができれば、それだけ危険を回避できる。敵の攻撃に当たらなければ、死ぬことはない。
サクラはアイテム鞄の中に入れて持っていくアイテムを、回復瓶5本と決めた。
これがもしゲームの中の話であれば、周回を重ねたサクラの現在の状態では十分すぎるほどの量と言える。
「本当はこんなになくてもこの街の攻略ぐらいできるはず。だけど、いまは攻略しにいくわけじゃないから。これが誰かの役に立てばいいの」
最後のひと瓶をアイテム鞄に詰め込んで、サクラは自室の扉を開ける。
すると、扉を開けた先に心配そうな顔をしたヴァルカが立っていた。
「まあまあ、その格好はどうされたのですか?」
「……えと、これは……」
「まさか、まさかサクラ様は流浪の民だったのですか?」
「そっか、この格好って」
この世界には「流浪の民」と呼ばれる者が存在する。
どこにも定住せず、芸や商売をすることで金を稼ぎながら諸国をまわる者たち。
旅の踊り子装備のフレーバーテキストにも書かれていたことを、サクラはヴァルカの言葉で思い出した。
「そうでしたのね。だからあまりご自分のことをお話ししてくださらなかったのですか」
流浪の民は定住しない。そのため、どこの国にも属していない。
戦時中のいまは、食料と金を奪うにはちょうどよい標的だった。
流浪の民は常に移動しながら生活をしているため、常備軍を持たないのだ。
身を守るための戦力がない流浪の民は年々数を減らし、いまではほとんどみかけない一族になってしまっている。
「色とりどりの美しい花々と共に、あたたかな季節を知らせる巡り神様の眷属。サクラ様はその生き残りだったのですね」
かつては季節の変わり目に、それを知らせる踊りを各地で披露していた美しい踊り子たち。
ゲーム開始時点のこの世界では、すっかり貴重な存在となっているのだそうだ。
『春は国を巡る
あたたかな風と
野に咲くいろとりどりの花々
踊り子は春を届ける
廻る
あなたに届くまで
鈴の音が終わらない』
サクラの頭の中に、旅の踊り子装備のフレーバーテキストの一文が浮かぶ。
「ああ、私たちに春を届けに来てくださったのですね」
ヴァルカがさめざめと涙を流しながら、サクラに向かって手を合わせてくる。
本当は流浪の民ではないのだと伝えるべきか。
いや、いまはあえて伝える必要はないだろう。
サクラが流浪の民であるという、ヴァルカの勘違い。クロビスが考えた稀人であることを隠すための嘘とも、絶妙に合っているような気がした。
ならば、このまま勘違いさせておくほうが無用なトラブルを防げるのではないか。心は痛むが、しかたがない。サクラは気持ちを割り切って、ヴァルカの手を両手で包み込んだ。
「ええ、そうなの。あたたかな季節を、平和を届けたいの。だから、クロビスのところへ行ってくるね」
サクラがそう言うと、ヴァルカは深く頭を下げてきた。
「どうかお気をつけて、いってらっしゃいませ」
サクラは机の上に並べたさまざまなアイテムの中から、必要最低限のものだけをアイテム鞄に詰め込んだ。
「持っていくのは回復系のアイテムだけでいい」
装備重量は少ないほど素早く動ける。早く動くことができれば、それだけ危険を回避できる。敵の攻撃に当たらなければ、死ぬことはない。
サクラはアイテム鞄の中に入れて持っていくアイテムを、回復瓶5本と決めた。
これがもしゲームの中の話であれば、周回を重ねたサクラの現在の状態では十分すぎるほどの量と言える。
「本当はこんなになくてもこの街の攻略ぐらいできるはず。だけど、いまは攻略しにいくわけじゃないから。これが誰かの役に立てばいいの」
最後のひと瓶をアイテム鞄に詰め込んで、サクラは自室の扉を開ける。
すると、扉を開けた先に心配そうな顔をしたヴァルカが立っていた。
「まあまあ、その格好はどうされたのですか?」
「……えと、これは……」
「まさか、まさかサクラ様は流浪の民だったのですか?」
「そっか、この格好って」
この世界には「流浪の民」と呼ばれる者が存在する。
どこにも定住せず、芸や商売をすることで金を稼ぎながら諸国をまわる者たち。
旅の踊り子装備のフレーバーテキストにも書かれていたことを、サクラはヴァルカの言葉で思い出した。
「そうでしたのね。だからあまりご自分のことをお話ししてくださらなかったのですか」
流浪の民は定住しない。そのため、どこの国にも属していない。
戦時中のいまは、食料と金を奪うにはちょうどよい標的だった。
流浪の民は常に移動しながら生活をしているため、常備軍を持たないのだ。
身を守るための戦力がない流浪の民は年々数を減らし、いまではほとんどみかけない一族になってしまっている。
「色とりどりの美しい花々と共に、あたたかな季節を知らせる巡り神様の眷属。サクラ様はその生き残りだったのですね」
かつては季節の変わり目に、それを知らせる踊りを各地で披露していた美しい踊り子たち。
ゲーム開始時点のこの世界では、すっかり貴重な存在となっているのだそうだ。
『春は国を巡る
あたたかな風と
野に咲くいろとりどりの花々
踊り子は春を届ける
廻る
あなたに届くまで
鈴の音が終わらない』
サクラの頭の中に、旅の踊り子装備のフレーバーテキストの一文が浮かぶ。
「ああ、私たちに春を届けに来てくださったのですね」
ヴァルカがさめざめと涙を流しながら、サクラに向かって手を合わせてくる。
本当は流浪の民ではないのだと伝えるべきか。
いや、いまはあえて伝える必要はないだろう。
サクラが流浪の民であるという、ヴァルカの勘違い。クロビスが考えた稀人であることを隠すための嘘とも、絶妙に合っているような気がした。
ならば、このまま勘違いさせておくほうが無用なトラブルを防げるのではないか。心は痛むが、しかたがない。サクラは気持ちを割り切って、ヴァルカの手を両手で包み込んだ。
「ええ、そうなの。あたたかな季節を、平和を届けたいの。だから、クロビスのところへ行ってくるね」
サクラがそう言うと、ヴァルカは深く頭を下げてきた。
「どうかお気をつけて、いってらっしゃいませ」
20
あなたにおすすめの小説
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します
如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい
全くもって分からない
転生した私にはその美的感覚が分からないよ
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる