高難易度ゲームの世界に転生してしまったので、生き残るために最初に出会ったNPCに全力で縋ります!

黒蜜きな粉

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協力 ダンジョンボス

第14話

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「なんだその顔は。私の元にいるのは不満か?」

 アリエノールはにこりと微笑む。鋭くも温かいその目は、威圧と安心を同時に含んでいた。

「い、いいえ! 不満なんてありません……ですが、アリエノールさまからそのようにおっしゃっていただけるとは、意外でしたので」

「そうか? 王になりたい者にとって、お前ほど邪魔な存在はないだろうからな」

 アリエノールはふうと息を吐き、腕を組む。
 風に揺れる髪が光に反射し、まるでその存在感をさらに強調するかのようだった。

「きっと今ごろ、先王の息子殿がサクラの存在を他の王候補に吹聴しているだろう。そうなれば、確実に命を狙われる。私がサクラの身柄を預かっていると知れた方が、他の連中は手を出しにくくなる」

「……た、たしかに。ベルヴェイクさまのやりそうなことでございますね」

 サクラの声は震え、顔に汗と涙が混ざっていた。今や生き残るためには、アリエノールの庇護が不可欠なのだと痛感する。

「だろう? 死にたくないのなら、しばらくは私の元でおとなしくこの世界のことを学ぶといい」

 アリエノールは穏やかに微笑む。だが、その笑顔の奥には、決して甘くはない現実が透けて見える。サクラの心は一瞬で落ち着きを取り戻し、自然と背筋が伸びた。

「クロビス、お前がサクラという稀人の存在を私に隠していたことは不問にしてやろう。代わりにサクラを絶対に死なせるなよ。全力で守れ」

「かしこまりました」

 クロビスは真面目な表情で応え、深く頭を下げる。その仕草から、強い決意と覚悟が伝わってきた。
 アリエノールはクロビスの態度を確認すると、再びサクラへ向き直り、いたずらっぽく微笑んだ。

「さて、サクラ。私は暗礁の森の管理人として、異世界からやってきた者たちを導く義務がある」

「……あら、そんなお仕事もあったのですね」

「そうだ。私の元でこの世界のあり方を学び、自分がどう生きていくのか見極めるとよい」

 アリエノールは胸を張り、堂々と言い放った。彼女の声には揺るぎない自信があり、同時にその存在は大きな安心感を伴っていた。

「とはいえ、ただで面倒を見てやるつもりはない。私の元で働きながら学ぶのだ。それが嫌なら断っても構わないが、私の庇護下に置くという話はなかったことになるぞ」

 アリエノールの言葉は尊大でありながらも、どこか温かみを帯びていた。サクラは少しの間黙って考えた。選択肢は一つしかないと、心の奥で確信していた。

「働きながら学ぶ、大歓迎ですわ。なにもせず一方的に恩恵を受けるのは気が引けますから」

 サクラが答えると、クロビスが小さく肩をすくめ、少し焦ったような表情を見せた。
 その様子に気づく前に、アリエノールが口を開いた。

「そうかそうか、そう言ってもらえてなによりだ。では、お前のその馬鹿力を見込んで、この広場の守護を任せよう」

「…………はい?」

 サクラの声は素頓狂に響いた。クロビスは頭を抱え、唇を震わせている。

「まさか、わたしにロークルさまの代わりをしろとおっしゃるのですか?」

「あやつの仕事のすべてを代われとは言っていない。敵対者が現れたとき、もし街の中で進撃を止められなかった場合、。サクラがこの広場で足止めしろと言っているだけだ」

「わたしが足止めなんて……そんな! そんな重要な任務はお引き受けできません」

「そんなことはない。サクラ以上にここの守りを任せられる者はいない。ここで止められなければ、クロビスの命だって危ういのだということを忘れるな」

 アリエノールの言葉に、サクラの胸は大きくざわつく。恐怖と責任感が同時に押し寄せる。しかし、彼女はすぐに決意を固めた。

「──っわかりました! ただ飯食らいにならないよう、精一杯務めさせていただきます!」

 叫ぶように言ったその瞬間、アリエノールは満面の笑みを浮かべた。だが、サクラにはその笑顔も、無理をしているように見え、胸がぎゅっと締め付けられた。

「では、サクラは私に協力してくれるということでよいな。もちろん、きちんと世界について学ばせてやる。安心するといいぞ!」

「あ、ありがとうございます……」

 アリエノールのガハハとした豪快な笑い声が、広場に響き渡った。
 サクラは本当にこれでよいのかという不安を抱えながらも、無邪気に笑うアリエノールを温かい目で見守るのだった。
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