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番外編・15
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ニコニコと笑っていたエイナルが、急に真面目な顔つきになった。
「旦那さまにお願いがあるのです」
「――っな、なんだ?」
エイナルに真剣な目でまっすぐに見つめられ、イーサンは妙に緊張してしまう。
改まって何を語り始めるのだろうかと身構える。
「私にあなたの信頼できる兵をお貸しして頂きたい」
エイナルが勢いよく頭を下げてきた。
彼のお願いは思いも寄らないことだった。イーサンは彼の言葉を頭の中で反芻する。
「私が一人で調査をするには限界を感じております。お二人の命をお守りするためにご助力いただきたい」
「だ、だが……。エイナル殿を我が領地内の揉めごとに巻き込むわけには……」
ここまで言葉を口にして、イーサンはふと首を傾げた。
――いや、揉めごとが起きているのは領地内のことだが、元をただせば妻の実家の親子喧嘩ではないか。それならば、妻の実家に関係する者が事態を収拾するのは筋なのだろうか? 親子喧嘩というには規模の大きな話になっているが……。
そう思ったが、それをエイナルに向かって口にする勇気はイーサンにはなかった。
「私は奥さまが安心して暮らせる環境を整えたいのです」
考え込んでいるイーサンに、エイナルが顔を上げてはっきりと告げた。
「この領地内のあらゆる事柄はすでに叔父上に掌握されております。圧倒的にこちらが不利なのです」
エイナルの力強い訴えに、イーサンはうろたえてしまう。
イーサンには、彼がこの部屋に来て話をしたことのほとんどが、まだ正確に理解できていないのだ。
「我々は少ない手勢で相手を出し抜かなければなりません。私ならばそれができると自負しております。どうか兵をお貸しくださいませ」
黙ったままのイーサンに、エイナルは根気強く訴えてくる。
そろそろ何かを言わなくてはと思うが、どう返答すべきか考えがまとまらない。
「し、信頼できるといっても……。正直に申し上げると、私の頼みを聞いてくれる者は少ないぞ?」
「では、奥さまへの馬を用意するよう依頼した者はどうです? 旦那さまは信頼できると思ったから相談をしたのではないのですか?」
イーサンはそう言われて、頭の中でじっくりと考えてから頷いた。
「…………そ、そうだな。彼ならきっと大丈夫だ」
「では、その者を呼んでください。私から子細を伝えます」
エイナルはイーサンに向けて、淡々とこれからのことを説明していく。
話を聞きながら、もしかしてイーサンが教会へ相談に行く前から、彼はこの件をずっと考えていたのだろうかと思った。
エイナルはイーサンが誰を頼るのかを見極めるために、贈り物の用意を自分で頼みに行けと言ったのかもしれないと勘ぐってしまう。
それくらい、エイナルはすでにイーサンが頼りにしている数少ない者について正確に把握しているのだ。
「し、しかし……。本当にエイナル殿にシーラ殿と叔父の対処をお任せしてもよいのだろうか?」
一通りの説明を受け、イーサンは不安げにエイナルに問いかけた。
すると、ソフィアが大きく溜め息をついてからエイナルについて語り始めた。
「この人、今は研究者なんてしているけれど、元はうちのお兄さまと一緒に近衛を務めていたの。軍大学も出ているし、兵の扱い方についてはそれなりに信用はできると思いますわ」
「それなりだなんて失礼ですね。私はただシーラさんに妹殺しなんて罪を犯して欲しくないと思っているだけですよ。もちろん、奥さまの身の安全が一番でございますが……」
エイナルがソフィアに向かって恭しく首を垂れた。そのわざとらしい仕草に、彼女が再び床を蹴る。
「あら、ありがとうね。私もお姉さまに罪を犯してほしくはないけれど、今のあなたはこの不利な状況をどう覆そうかと楽しんでいることがバレバレなのよ」
「――っわ、わかった! エイナル殿の経歴については理解した。頼むからあまり興奮しないでくれソフィア………………怖い」
「あらやだ。私ったらまた取り乱してしまいましたわ」
おほほとソフィアの笑い声が室内に響く。
「旦那さまにお願いがあるのです」
「――っな、なんだ?」
エイナルに真剣な目でまっすぐに見つめられ、イーサンは妙に緊張してしまう。
改まって何を語り始めるのだろうかと身構える。
「私にあなたの信頼できる兵をお貸しして頂きたい」
エイナルが勢いよく頭を下げてきた。
彼のお願いは思いも寄らないことだった。イーサンは彼の言葉を頭の中で反芻する。
「私が一人で調査をするには限界を感じております。お二人の命をお守りするためにご助力いただきたい」
「だ、だが……。エイナル殿を我が領地内の揉めごとに巻き込むわけには……」
ここまで言葉を口にして、イーサンはふと首を傾げた。
――いや、揉めごとが起きているのは領地内のことだが、元をただせば妻の実家の親子喧嘩ではないか。それならば、妻の実家に関係する者が事態を収拾するのは筋なのだろうか? 親子喧嘩というには規模の大きな話になっているが……。
そう思ったが、それをエイナルに向かって口にする勇気はイーサンにはなかった。
「私は奥さまが安心して暮らせる環境を整えたいのです」
考え込んでいるイーサンに、エイナルが顔を上げてはっきりと告げた。
「この領地内のあらゆる事柄はすでに叔父上に掌握されております。圧倒的にこちらが不利なのです」
エイナルの力強い訴えに、イーサンはうろたえてしまう。
イーサンには、彼がこの部屋に来て話をしたことのほとんどが、まだ正確に理解できていないのだ。
「我々は少ない手勢で相手を出し抜かなければなりません。私ならばそれができると自負しております。どうか兵をお貸しくださいませ」
黙ったままのイーサンに、エイナルは根気強く訴えてくる。
そろそろ何かを言わなくてはと思うが、どう返答すべきか考えがまとまらない。
「し、信頼できるといっても……。正直に申し上げると、私の頼みを聞いてくれる者は少ないぞ?」
「では、奥さまへの馬を用意するよう依頼した者はどうです? 旦那さまは信頼できると思ったから相談をしたのではないのですか?」
イーサンはそう言われて、頭の中でじっくりと考えてから頷いた。
「…………そ、そうだな。彼ならきっと大丈夫だ」
「では、その者を呼んでください。私から子細を伝えます」
エイナルはイーサンに向けて、淡々とこれからのことを説明していく。
話を聞きながら、もしかしてイーサンが教会へ相談に行く前から、彼はこの件をずっと考えていたのだろうかと思った。
エイナルはイーサンが誰を頼るのかを見極めるために、贈り物の用意を自分で頼みに行けと言ったのかもしれないと勘ぐってしまう。
それくらい、エイナルはすでにイーサンが頼りにしている数少ない者について正確に把握しているのだ。
「し、しかし……。本当にエイナル殿にシーラ殿と叔父の対処をお任せしてもよいのだろうか?」
一通りの説明を受け、イーサンは不安げにエイナルに問いかけた。
すると、ソフィアが大きく溜め息をついてからエイナルについて語り始めた。
「この人、今は研究者なんてしているけれど、元はうちのお兄さまと一緒に近衛を務めていたの。軍大学も出ているし、兵の扱い方についてはそれなりに信用はできると思いますわ」
「それなりだなんて失礼ですね。私はただシーラさんに妹殺しなんて罪を犯して欲しくないと思っているだけですよ。もちろん、奥さまの身の安全が一番でございますが……」
エイナルがソフィアに向かって恭しく首を垂れた。そのわざとらしい仕草に、彼女が再び床を蹴る。
「あら、ありがとうね。私もお姉さまに罪を犯してほしくはないけれど、今のあなたはこの不利な状況をどう覆そうかと楽しんでいることがバレバレなのよ」
「――っわ、わかった! エイナル殿の経歴については理解した。頼むからあまり興奮しないでくれソフィア………………怖い」
「あらやだ。私ったらまた取り乱してしまいましたわ」
おほほとソフィアの笑い声が室内に響く。
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