姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉

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番外編・14

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 厳しい顔つきをしているソフィアとエイナルに向かって、イーサンは恐る恐る声をかけた。

「……シーラ殿の目的が本当にそのようなことだったとしたら、今のこの状況は耐えがたいものなのでは?」
 
 策略をめぐらせたというのに、シーラが得られたものは何もないに等しい。
 ソフィアの父は以前と変わらずに務めを果たしているし、叔父にしても爵位を手に入れたわけではない。

 ソフィアはイーサンの質問に頷いてみせてから、エイナルに問いかけた。

「すでに調べ上げているのでしょう? お姉さまが叔父さまのところに身を寄せているのはどうしてなのよ」

 エイナルはソフィアの問いかけに、目を伏せて気まずそうに口を開いた。

「大変に申し上げにくいのですが、シーラさんはご自分の代わりの花嫁が奥さまだったことが大変に気に入らないようでして……」

「――っソフィアの命を狙っているのか⁉」

 イーサンはエイナルの話の途中で声を上げた。嫌な考えが頭をよぎり、おもわずソファから立ちあがっていた。
 
「あれほどプライドの高い女が、自分の代わりを誰かが務めたなど許せるはずがない! くそ、どうして気が付かなかった⁉」

 イーサンが声を張り上げたので、ソフィアが驚いてこちらを見上げてくる。

「……お、お姉さまが、私を? まさか、そんな……」

 困惑したソフィアの声を聞いて、イーサンは自分一人が興奮していることに気が付いて途端に恥ずかしくなった。
 おずおずとソファに座りなおすと、それを見ていたエイナルが苦笑する。

「よくお気づきになられましたね。まったくその通りでございます」

 エイナルはごほんと咳払いをすると、また目を伏せて話を続けた。

「我が子が争い片方が命を落とすのです。それが親にとってどれだけ残酷なことかは想像がつくでしょう?」

「…………そう。今度はお父さまのお心を深く傷つけようとしているのね。ついでに私という邪魔者を消せて、お姉さまにとっても良いことづくめなわけね」

 ソフィアが悲痛に顔を歪める。
 イーサンは彼女の肩に手を置いた。慰めてやりたいが、気の利いた言葉が思いつかない。
 イーサンがおろおろとしている間も、エイナルは話を続ける。

「シーラさんは叔父上をうまく操って、この地で反乱を起こさせるつもりのようです」

「お、叔父が反乱を? まさかそんな……。この地で戦が起きれば隣国が黙っているはずがないぞ」

「ええ、大惨事になるでしょうねえ」

 エイナルが何故かけらけらと笑い出すが、それどころではないとイーサンは慌ててしまう。

「わ、私から爵位を奪えても、そんなことになれば叔父だって無事で済むわけがない。考えれば簡単にわかることなのに、どうしてそんな馬鹿なことをしようとお考えになるのだ?」

 叔父は父が存命の頃、その右腕としてよく仕えていた。
 聡明な人物だと思っていたが、いつからそのようなことを考えるようになってしまったのだろうか。
 さっぱり理解できないとイーサンが混乱していると、ソフィアが淡々と話だした。
 
「この地が混乱すれば隣国が介入しやすくする。それが好待遇で迎えてくれる隣国への手土産ということなのでしょう。まったく我が姉ながら狡猾な立ちまわりですこと」

 ソフィアの身体がガタガタと震えだす。彼女は苛立たし気に床を蹴ってから話を続けた。

「戦の混乱に乗じてイーサン様と私の命を奪う。そして自分は隣国へ逃れ、反乱の罪は全て叔父さまになすりつけるおつもりなのね。…………ふざけんじゃないわよ。何なのよもう!」

「ソ、ソフィア? あまり興奮するのはよくないぞ……」

 イーサンはソフィアの取り乱しぶりに驚きつつ、背中をさすってなんとか落ち着かせようと試みる。
 彼女はしばらくの間、身体を震わせていたが、イーサンが根気強く声かけをしていたらようやく落ち着いた。

 ソフィアはゆっくりと深呼吸してからエイナルに視線を向ける。

「…………それにしても、よくここまで調べ上げたわね」

「優しい魔術師の先生には皆さん口が軽くなるようです。いやあ、信頼を得るって大事ですよねえ」

 にっこりとエイナルが満面の笑みを浮かべた。

「自然に聞きだしたのでしょうね? お兄さまのことだから催眠術でも使ったのかと疑ってしまうわ」

 ソフィアのこの言葉に、エイナルはニコニコと笑いながら何も答えなかった。
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