お題に挑戦した短編・掌編集

黒蜜きな粉

文字の大きさ
16 / 63

お題:ブルーハワイ

しおりを挟む
『Lovely you And…』


 十年付き合った。
 学生のころに出会って、今年で私は30歳になる。

 結婚。
 そういう話が出てきたことは何度もある。

 しかし、そういうものはタイミングが大事だったりする。
 親戚の不幸があったり、互いの兄弟の方が先に結婚式を挙げてしまったり。

 なんとなくタイミングをつかめずにいた。
 だけど、私が30歳になるというのもひとつのタイミングではなかろうか。

 ひさしぶりに二人であわせた休暇。
 ハワイ、とまではいかなかったが沖縄旅行。

 ちょっと奮発した良いホテル。
 星空を眺めながらプールサイドのデッキチェアでのんびり過ごす。

 これはあれかな。
 プロポーズとかされちゃうかな。

 そんな期待に胸を膨らませる。
 彼が手をあげてスタッフを呼んだ。

 頼んだのはブルーハワイ。
 なるほど、プールサイドにはハワイアン音楽が流れている。

 雰囲気づくりは大事だよねと心の中で頷く。
 しばらくしてスタッフが運んできたのはかき氷。

「かき氷?」
「うん。好きだよね、ブルーハワイ」

 しゃりしゃりと音が聞こえる。
 青いシロップのかかったかき氷を食べる彼。

 カクテルかと思っていたのよ。
 このシチュエーションならカクテルだと思うじゃん。

 映画サークルで出会った彼。
 一緒に観たことがあるはずなんだよ。

 ブルーキュラソーだと思うじゃん。
 かき氷のブルーハワイって何味よ?

「……かき氷、おいしいね」
「だよなー。暑い日にはかき氷が一番だよなー」

 しゃりしゃりと音が聞こえる。
 結婚は、まだかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

バーチャル女子高生

廣瀬純七
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

花嫁

一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

マグカップ

高本 顕杜
大衆娯楽
マグカップが割れた――それは、亡くなった妻からのプレゼントだった 。 龍造は、マグカップを床に落として割ってしまった。そのマグカップは、病気で亡くなった妻の倫子が、いつかのプレゼントでくれた物だった。しかし、伸ばされた手は破片に触れることなく止まった。  ――いや、もういいか……捨てよう。

処理中です...