初瀬さんはヤのつく方

りぃ

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私を抱いた彼はこの地方でも有名な裏社会のボスとなる初瀬組の若頭、初瀬 来樹さん。

彼と出会ったのは私の働いている居酒屋さん"ホルン"。

大学に入り一人暮らしを初めてからは学費と生活費を貯めるためにほぼ毎日のように通っているバイト先でのことだった。

迷惑な酔っ払い客に絡まれていたところ助けてくれたという漫画やアニメなどにありそうなありきたりの出会い。

お礼をしたいと申し出れば彼は「大したことないから大丈夫、困ったときはお互い様」と微笑んでくれた。

その後彼は何度か店に足を運んでくれた。

きっかけは何だったか忘れたけど連絡先を交換し、連絡を交わす仲にもなった。

さらにたまに出かけるようになった頃、同じ店で働く親友の夏木 琴葉に

「萌衣、あの人と関わるのもうやめたほうがいいよ。」

そう言われ琴葉はスマホをこちらに渡してきた。

そこには初瀬組という有名な組の名前がある記事の横に、彼の写真が載っていたのだ。

(だから名前、偽名だったんだ)

私はその事実に対してあまりショックを受けるわけでもなく、どうせ今だけの仲だ。そんな感じのことを思っていた。

だから一晩関係を持ったときも飽きたら捨てられるだろう、そう思っていた。

案の定そこから彼との連絡はない。

でも自分に子供ができたと知ったときはびっくりした。

吐き気に悩まされ病院へ行くと、症状を聞いた医者に産婦人科へ行くよう勧められ産婦人科へ通ったことにより妊娠が発覚したのだ。

私の中に墜ろすという選択はなかった。

だが両親には相談をし彼の職業は伏せて事情を話した。

もちろん止められたりもしたが、最後には生むことを了承してくれた。

お腹が目立つようになってからは大学に退学届を出し、ホルンへもバイトを辞めたいと女将さんに話した。

臨月を迎えてからは両親からの提案を受け実家へと戻った。

出産が近くなるといつもは落ち着いている父も体調は大丈夫か、無理はするなと体調を毎日のように心配してくれた。

そんな両親の支えもあり私は無事に元気な男の子を出産した。

名前は赤ちゃんのお父さん、初瀬さんから一文字もらい「海樹(かいき)」と名付けた。

両親の「2人で生活ができるようになるまでは迷惑と思わず家で世話になりなりなさい」その言葉に甘えて、子供が離乳食に変わると同時に私は外に働きに出るようになった。
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