ユークロニア 〜蒼い輝に包まれて〜

雨宮濛

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ザムキアの試練

全てを愛した君へ。

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「うーん......まぁ、私が外から何か持ってきてあげるよ。」

「別に頼んでないが。」

「でも、外に出ようとしたじゃないか。」

 彼はクスッと微笑み、私を密かにからかっていた。

「これが、人をからかっているというやつか?」

「まぁ、そんなところだな。」

 それから旅人は、様々な事を教えてくれ、私は社会性を人並みに覚える事ができた。

 数ヶ月後のとある日の夜の事、私の人生を大きく変えた。

「おい、旅人、お前の名前、教えてくれないか?」

 私は今まで、一度も彼の名を聞くことができなかった。

「私の名は、レマルス。そう言えば、お互い聞いてなかったな。君は?」

「私は───」

『ヴァルヴァーラ・ウスペンスカヤ』

「ヴァルヴァーラか、美しい名だ。君にぴったりだと思う。」

 レマルスは私の手を取り、指を絡ませた。
 急に何かと、レマルスに顔を向けると、顔を上げた瞬間に、自分の唇に、温かく、柔らかい感覚が伝わった。

 私は、キスをされたのだ。

「ヴァルヴァーラ、君が神だということは分かっている。だが、私は君のことが好きなんだ。」

 私は神という立場であり、愛を誓うのは神同士のみだと思っていた。
 まぁ、私はこの森から出られないから、他の神とも会うこともないし、このようなことは考えた事がなかった。
 よりによって私は最初に、人間に愛を告げられた。

「レマルス......?」

 愛を告げられたのは、私達が出逢って約5年くらいが経つ。
 私はずっと、レマルスの事は、人間で言う親友と思っていたが、彼は、私に恋心を持っていた。

「私が死ぬまででも、駄目かい?」

「うん......」

 私は、騙すという事を知らなかった。私はこの時、た
 だ、今起きている状況でその時だけの感情に流されただけだった。

 一言でいえば、私は、馬鹿だった。

 ❅

 5年後

「レマルス、もうこの森から出ないで。」

「急にどうしたんだ?」

 私はずっと不思議に思っていた。レマルスは旅人として生きているのに、何故ずっとこの地帯にいたのか。私達が一緒になる前、レマルスは旅に出ずに、ずっと私と居た。

 おかしい。

 だから、どうにかして普段のレマルスを見ようとし、植物の生命に、自分の精神を埋め込み、レマルスを観察した。

 なみだがでそうだった。

 森の外にいる時のレマルスは、旅人ではなく、ただの遊び人だった。

「おい、レマルス、緑神様とはもうヤッたのかぁ?」

「嗚呼、やったよ。神の身体は人よりも気持ちよかったよ。あの純粋さを分からせたのはくっそ良かった。」

「うわっ、バチが当たっても知らねぇぞ?」

 汚らわしい。

 気持ち悪い。

 泣きそう。

 ❅

 死にたい。


 でも好きだ。

 気持ち悪いのに、胸糞悪いのに、まだ好きなんだ。

 私は、何で、人間と関わってしまったのか。今まで、森を出られない理由が他にもあることに気付いた。

 母は、サティリアンテジアは、全てこの様な事態になる事を防ぐ為にしたことなのだと。

 こんな複雑な感情を持たず、純粋なまま、この地を守り続けることが私の役目だったはずなのに。
 何で、許してしまったのだろう。

「ヴァルヴァーラ、それは、何の魔法なんだい......?」

 私はこの時、死神に堕ちた。
 母の恩も知らず、ただ、愛する者の為だけに堕ちたのだ。

 ヴァルヴァーラの手が消え、腕が黒く染まった。
 レマルスの後ろから、ユークロニアの空間から、原型をやっと留めたくらいの黒い手が、レマルスの首を折った。

「レマルス、これからもずぅ~っと......」

『一緒だよ......?』

 首が折れた衝撃でレマルスは吐血し、呼吸が段々と浅くなり、遂には息が途絶えた。

 この日以来、ザムキアの森に入ったものは、緑死神に一つだけ、なんでも願いを叶えてもらえる代わり、森から出られることは無くなった。

 ❅

「あら......長女のヴァルがサバトについてしまったわね......どうしましょう。」

 ヴァルヴァーラが、死神になった事を知ったサティリアンテジアは、姉妹神として、樺湊の神を創った。

「あんた、下手に神を創ったらあんたが死ぬんだぞ。」

「ふふっ、貴女はそんなに私の事を考えてくれるの?嬉しいわ。」

「キモ......」

「そんな事言わないでよ~......」

『ナタリア』
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