プリズム 〜その者は時を超えて〜

雨宮濛

文字の大きさ
1 / 1
私と貴方のプリズム

涙と目覚め。

しおりを挟む
 「ルイジュ、ちょっと買い物に出かけてくるわね。絶対に外には出ちゃ駄目よ。」

「分かってるよ…母さん、くれぐれも気をつけてね…」

ルイジュは心配そうに母を見送った。
ここ最近では、2千年前に封印されたはずの汚染型プリズムが出現するようになった。
その事で、外出が難しくなり、母は食料等を買いだめしに行ったのだ。

「ルイジュ…」

近付いてきたのは、愛のプリズム「ラヴィル」だ。
ラヴィルは数日前に私が見つけたプリズムで、話を聞くと、涙のプリズムが残っているプリズムに助けを求めたらしい。ちなみにラヴィルは涙のプリズムが最初に作り上げたプリズムらしい。
ラヴィルは、自分よりも身長が高く、まるで私が子供の様だった。ラヴィルはいつも私を軽々と持ち上げるのだ。まぁ、なんやかんやあって私達はプリズムバディになった。それはまた別の時に話すね。

「どうしたの?ラヴィル。」

ラヴィルは私を膝の上に乗せた。いつもこうやって持ち上げてくる。何となく腹立つからいつも殴っていた。

「んー、やっぱりちんまりしてて可愛い…」

私はラヴィルの顎を殴った。これもいつもの事だ。でも、ラヴィルはびくともしない。

「気安く触らないで…!」

そう、私ルイジュは体に触れられるのが大嫌いなのだ。

「やっぱり可愛いーね。」

「殺すっ…!」

「うぁあ…!」

外から唸り声が聞こえた。多分、この近くでプリズムに汚染された人が出たのだろう。
ルイジュ達はさっきの事が無かったかの様に2人共冷静な表情になり、外へ向かった。

「ラヴィル、戦闘準備。」

「了解、レイン。」

2人のキープリズムが起動し、シンクロ状態になった。
汚染された人間の元へ向かった。そこには地獄の様な風景だった。

いつも明るく挨拶してくれる肉屋の店主。
花屋のリリーお姉さん。
いつも元気に外で遊んでいる子供達。
友人で、少し気になっていたナジア。
嘘つきのリタリーおじさん。

そして、ルイジュの母マリー。

皆が汚染されていた。

周りには原因の汚染型プリズムが3体。

まだ世界には、汚染された人間を治すワクチンや薬は開発されていない。助けようがない。

汚染されたマリーを見たルイジュは立ち崩れ、戦闘どころの状態ではなく、絶望に満ち溢れていた。
ルイジュの目から光は消えていた。
ラヴィルは、後ろに3歩下がり声が出ない程、目を開き、困惑していた。

「かあ、さん…?なん、で…、あぁぁぁあああ!!!」

ルイジュは掠れた声で言い、叫んだ。
恐らく正気を失っている。

「レイン、一旦下がろう!」

ラヴィルはルイジュにそう呼びかけたが、ルイジュに声が届いていない。ルイジュはぶつぶつと何かを呟いており、段々と汚染された人に近づかれている。
ラヴィルはルイジュを運ぼうと近づくが、汚染型プリズムに近づかれて動けない状態になっている。
ラヴィルだけでこの人数を倒すとなると、力が足りず、力尽きてしまう。

そんな時、2つの人影が空から見えた。
空から2人が飛び降り、地面に着いた。その勢いで周りは砂埃で周りがよく見えない。
人影から2つ、男性の声が聞こえた。

「クローラ、戦闘準備。」

「了解…マスター…」

この合図はプリズムバディだ。マスター、それはプリズムマスターレインだ。

「君、この子を安全な場所に連れて行ってくれ。」

マスターと名乗る人物がラヴィルに指示した。

「了解!」

ラヴィルはルイジュの元へ走り、ルイジュを背負い、少し離れた場所に連れて行った。
後ろからは2人が汚染型プリズムと汚染された人と戦っている戦闘音が町中に鳴り響く。

「か、ぁさん…」

「ルイジュ、落ち着け。」

1人呟くルイジュをラヴィルは落ち着ける様になだめた。

「ルイジュ、ごめんな…」

ラヴィルからは涙が1滴零れ落ちた。

戦闘音が止まり、2人がこちらへと向かってくる。

「2人共、大丈夫か?」

マスターレインが心配に声をかけた。

「俺は無事だが、ルイジュが…」

「この子は多分、正気を戻すのには時間がかなりかかると思う。なので、こちらで治療を行わせていただく。そう言えば、君達もプリズムバディなのかい?」

マスターレインはルイジュの状態を見て、2人の関係に質問をした。

「…治療は任せました。それで…俺達も、プリズムバディです。」

「そうか…では君達もこちらへ来てもらうよ。そうだ、まだ名を名乗っていなかったね。僕は見た通り、プリズムマスターレインの1人、ジセアだ。こっちはバディのプリズムは闇のプリズム、クローラだ。」

「宜しく…」

2人はマスタープリズムの証にプリズムエンブレムが付いている。

「それでは、着いてきてもらえるかな?」

「はい…」

ラヴィルは、ルイジュを担いでジセアに言われるまま着いて言った。

そして、ジセアが立ち止まると、目の前には大きなビル「レインズタワー」があった。
ここは誰もがしっている場所で、世界平和の為に政府とプリズムレイン達が協力し、作り上げた団体なのだ。

「着いたよ、では、医療部隊に向かおうか。」

医療部隊に着いた。そこは普通の病院かの様に構造されていた。

「あらあら~?イイ男が1、2、3、3人もいるじゃな~い!あら~?後ろには可愛らしい大人しめのお嬢さんがいるじゃな~い!あらぁ?なんだか元気なさそうねぇ、こんなにも可愛らしいんだから3人がこの子を取り合って疲れちゃったのかしら~?」

スタイルの良い医者の女性が興奮して言った。

「ジーナさん、やめてください。うるさいですよ。それと、この子はルイジュと言って、先程、汚染型プリズムの感染によりルイジュの母が死亡し、精神が不安定です。」

「そう…可哀想に…それで、ルイジュちゃんの診察を?」

ジーナはルイジュをベッドに移し、診察した。ルイジュは、何の抵抗もせずに、唸ったり、独り言を呟いたりしていた。
そして、診察が終了した。

「診察は終わったわ。この子、体に問題は無いけれど、精神には問題がありすぎる…これを全て回復できるか分からないわ…でも、私もできる限り最善は尽くすわ。」

ジーナは深刻そうに言った。
ルイジュはずっと独り言を呟き続け、それ程、家族を愛していた事がラヴィルには伝わった。心優しい少女が、こんな不幸を受けるなんて許せなかった。
マリーを殺したプリズム、ルイジュを狂わしたプリズム、絶対、絶対に許さない。
ラヴィルは恨みと憎しみを持った。それと、あの時に何もできなかった自分に、怒りを感じた。

『ねぇ、ラヴィル…あなたは愛そのもの。あの子を愛してあげて…』

どこからか、涙の声が聞こえた。

母様…?

『ラヴィル、貴方は愛。恨まず、憎まず、怒らず、ただ、あの子を愛してあげて…』

でも、俺は、何もできなかった自分がルイジュを愛せるとは思えない。俺は、レインに仕えるプリズムバディ失格だ…ルイジュがある程度回復したら、去るつもりだ。

『だからこそ、あの子の傍に居てあげて。あの子がまた、寂しくならない様に…』

母様…分かりました。できる限りの事はやってみます…

『うんうん、それでいいのよ…!それと、少し話がずれるけれど、あの子、実は嬉しかったみたいよ…』

え…?何を…?

『ふふっ、それは自分の目でこれから確かめなさい…それじゃぁ、私はこれでおいとまするわね…ラヴィル、できる限り早く、この世界を救う事も忘れないでね…』

涙の声が途切れた。

「…ィル…」

「ラヴィル!」

「はっ…!」

目が覚めた。涙と話していたからか、気絶していた。
目覚めて最初に見た物は…誰だ…?見覚えの無い人物だが、何故か懐かしいと感じる。

「やっと起きた…!」

この子は一体…?
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...