迷宮の魔王に転生したけど無人島だからダンジョンに人が来ない

兎屋亀吉

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7.生物初遭遇

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「ん?なんか白いのがいるな」

 白い砂浜から一転した黒い岩場を延々歩くこと数時間、黒い岩場になにやら白い生き物が佇んでいるのを発見した。
 四足歩行で真っ白な毛並みの生き物は地球でもたくさん存在していた。
 この世界でもおそらくそんな生き物はたくさんいるだろう。
 遠目からではどんな生き物なのかよく分からない。
 危険な生き物でなければいいのだがね。
 俺は足を止め、双眼鏡でその生き物の姿を覗き見る。

「あれは、ヤギか?」

 ウシ科ヤギ属。
 あちらの世界ならばそう分類される生き物だ。
 紙を食べてしまうことで有名だが、現代の紙には科学薬品が含まれているために動物園にはヤギに紙を与えないでくださいと張り紙がされているあのヤギだ。
 牛乳よりも栄養価に優れ消化吸収がされやすい乳を出すことで有名なあのヤギだ。
 高級毛織物のカシミアとして有名なヤギだ。
 えっと……もうない。
 岩場に佇むヤギはまだ幼いようで体長は1メートルにも満たない。
 ふわふわの毛皮に包まれていて、まるでアルプスの少女が飼っていた子ヤギのようだ。

「可愛いな。連れて帰って飼いたいけど、親はいないのか?」

 見たところ周りに他のヤギはいない。
 幼い小さなヤギが一匹ポツンと佇んでいるだけだ。
 その姿はどことなく寂しそうにも見える。
 ヤギっていうのは群れを成す生き物だったはずだ。
 そうでなくても子ヤギが1匹で生きていけるはずはない。
 おそらくあの子ヤギは群れに置いていかれてしまったのだろう。
 俺は恐る恐る子ヤギに近づく。
 
「メェ……」

「怖くない、怖くないぞ、ほら、水飲むか?冷たいぞ」

 俺は慎重に子ヤギににじり寄り、アイテムボックスの中の水を取り出して子ヤギに飲ませる。
 毛皮を持たない俺でさえ干からびそうなほど暑いのだ。
 こんなモコモコの子ヤギは相当暑いはずだ。
 手の平に注いだ水をベロベロと舐める子ヤギ。
 可愛い。

「美味しいか?」

「メェ」

 モフモフとした体毛を撫でていると孤独と不安が解けていくようだ。
 ペットを飼ったら独身を抜けられないと言われるはずだ。
 弱りきった独身の心に耐えられないからみんな強がりを捨ててなりふり構わず結婚するのだ。
 それがペットに癒されてしまったら心に余裕ができてしまう。
 ペットが心の拠り所になってしまう。
 そうなればもはや結婚なんてどうでもいいやと思ってしまっても不思議ではない。
 かくいう俺もダンジョンなんてどうでもいいやと思い始めている。
 この島にいればそうそう知的生命体と接触することも無いだろう。
 ダンジョンは今のままで何の問題もない。
 毎日入ってくる50ポイントのダンジョンポイントがあれば生活するだけならば容易い。
 
「お前俺のうちの子になるか?」

「メェ」

「そうか。なるか」

 言語理解スキルでもさすがにヤギの言葉は分からないが、なんとなく一緒に来ると言っているような気がしたので俺はこの子ヤギをダンジョンに連れて帰ることにした。
 今日の探索はここまでとし、その場にダンジョンコア(副)を置いて俺は子ヤギと一緒にダンジョンへとテレポートした。


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