迷宮の魔王に転生したけど無人島だからダンジョンに人が来ない

兎屋亀吉

文字の大きさ
12 / 25

12.ヤギって

しおりを挟む
 魔王に転生して無人島ダンジョンで悠々自適のリゾートライフを始めてから今日でちょうど180日、約半年が経過した。
 相変わらず人間はやってこない。
 人間がダンジョンに入るとどの程度のダンジョンポイントが入るかわからないが、ポイント効率1日50ポイントのリッチダンジョンである俺のダンジョンにはかえって人が来ないほうがいいのかもしれない。
 ダンジョンというのは人間がもたらすポイントが防衛や宝箱の設置にかかるポイントを上回らなければ黒字にはならないのだ。
 こんな無人島に大量の人がやってくるとは思えないからどうせ来ても10人くらいだろう。
 アンディがもたらすポイントが1日1ポイントなのを考慮すると、人間も同じくらいか少し多いくらいだと思う。
 その程度のポイントであればダンジョンを攻略されるリスクを侵して手に入れたいほどではない。
 だから俺の願望としては人間には俺が寿命で死ぬまでこの島には気がついて欲しくない。
 魔王の寿命がどのくらいなのかは知らないけどな。

「ほらアンディ、高級飼料だぞ。美味いか?」

「ンメェ」

「そうかそうか、美味いか」

 アンディもモリモリと餌を食べて順調に大きく育ってきている。
 すでに体格は出会った頃よりも一周りか二周りくらい成長し、短いが角も生えてきている。
 ヤギは角が無い遺伝子が優勢遺伝子だと本に書いてあったのでアンディの角も生えるかは分からなかったが、どうやらアンディは角のあるヤギの遺伝子が色濃く出ているようだ。

「しかし、これは……アンディ、お前本当にヤギだよな?」

 ヤギの角というのは確か少し曲がった一本角だった気がするのだが、アンディの角はなにやら二股に分かれている。
 この調子で角が生えてくると鹿のような枝分かれした角になってしまいそうな予感がする。
 角の先端も生き物の身体の一部とは思えないほど鋭いし、ヤギの角には全然見えない。
 角以外はまんまヤギだし、メェって鳴くし瞳はどこ見てるかわかり難い横長だしきっとヤギだと思う。
 一瞬もしかしたらヤギに似たモンスターなのかもとも思ったが、角の形が違うだけで判断するのは早計だろう。
 きっと異世界のヤギはみんなこんな角なんだ。
 そうに決まっている。

「よしよし、角の形なんて気にせずたくさん食べて大きくなるんだぞ」

「メェ」

 モシャモシャと餌箱の高級飼料を貪るアンディ。
 やがてお腹がいっぱいになったのか隣の水を少し飲み、俺が室内に作ってあげた岩場に戻っていく。
 最初に出会ったのも岩場だったし、ヤギは岩場をピョンピョンするのが好きだろうとアスレチック感覚で作ってあげたのだ。
 高さは30メートルほどあり、50センチくらいの岩棚が階段のように頂上まで続いている。
 アンディは岩場の頂上が気に入っているようで、日中のほとんどを頂上で過ごす。

「ん?おかしいな。目の錯覚かな」

 俺はアンディがピョンピョンと岩棚を飛び跳ねて頂上に向かうのかと思って見ていた。
 昨日まではそうしていたし、今日もそうするものと当然思っていたのだ。
 しかしアンディは岩棚を10段飛ばしくらいにピョンと飛び跳ね、一気に頂上まで駆け上がって行ってしまった。

「なんだよそのジャンプ力……」

 アンディは、ヤギなのだろうか。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...