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21.開拓団
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「あの、すみません。我々はスパヌエル帝国の開拓団なのですが……」
「ああ、そうですか」
結局彼らが船からやってきたのは7日後のことだった。
俺はあまりに遅いものだからもう来ないものと考えて絶賛サーフィンの真っ最中だった。
これからテイクオフというときに話しかけられればそりゃあ少し不機嫌にもなるさ。
もはや開き直って海の家の外に設置したバケツシャワーで軽く砂と塩水を洗い流し、使者を放っておいて服を着替える。
そっちがタイミング悪く来たんだからこのくらいは待ってくれ。
人前で着替えるのは少し恥ずかしいが、なぜか常夏の気候というのは人から羞恥心を少しだけ奪う性質がある。
前世の俺だったら見ず知らずの外国人の前で全裸になって着替えるなんてできなかっただろうが、今はなぜかそれほど気にならない。
南国は人を大らかにするな。
俺はこの世界の技術でも作れそうなベージュの七分丈パンツと地味目のアロハシャツに着替え、腰に水精の短剣を装備して使者に向き直る。
見たところ居丈高な感じもないしこちらを害そうという意図も感じない。
どうやらこの島に来たスパヌエル帝国とやらの開拓団はなかなかに理性的な奴等だったらしい。
ひとまず安心だ。
いきなり出て行かなければ殺すとか言ってくるような海賊まがいの奴等だったら異世界に転生してから初めてとなる荒事に挑戦しなければならなかっただろう。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、突然押しかけて申し訳ありません」
使者は全部で5人。
意外と少ないな。
先住民が俺だけなので舐めているのだろうか。
使者の中で腰に剣を差している人は一人のみ。
無手でも魔法やスキル、格闘技などのなんらかの戦闘手段があるのかもしれないが、それでも全員がその使い手であるとは思えない。
特に前に出ている物腰の柔らかい優男とその両脇の2人の部下っぽい人たちはどう見ても肉体労働者には見えない。
俺に話しかけてきていることからも、おそらくはネゴシエーターが彼らの開拓団内での仕事なのだろう。
命の危険は遠ざかったとはいえ、交渉を飯の種にする彼らを相手取るからには気を抜くことはできないか。
言語理解スキルはその機能を発揮しているようで、スパヌエル帝国という全く知らない国のよく分からない言語でもスラスラとしゃべることができている。
「とりあえず自己紹介をさせてください。私はスパヌエル帝国南方開拓団所属、現地折衝役のモリーと申します」
「同じくカルロスです」
「ベイカーです」
後ろのガタイのいい男たちは自己紹介をせずに周囲を警戒している。
おそらく彼らはこの3人に付けられた護衛なのだろう。
とても強そうなので正面きって戦えば素人の俺に勝ち目は無い。
なるべく下手に出るか。
「ご丁寧にどうも。私はヤマダといいます。幼い頃に父と一緒にこの島に流れついた漂流者です」
俺は彼らがこの島にやってきた日の夜からずっと温めていた設定を語った。
物心つく前に父と一緒にこの島に流れつき、以来ずっとこの島で育ってきた。
父は転生者という称号持ちでアイテムボックスや鑑定、言語理解、鍛冶、錬金、木工などの数々のスキルを持つ類稀なる人物であった。
自分も言語理解のスキルを受け継いでいるためにあなたたちと言葉が通じる。
この海の家なる建物も父が建てた。
いったいどうやって建てたのかは分からない。
父は何を言っているのか分からないことがあった。
そんな父も去年亡くなった。
父の思い出が残るこの地を離れる気はない。
できることなら海の家もこの砂浜も俺が所有権を主張したい。
そんな感じのことを情感たっぷりに訴えた。
俺には彼らが何を求めているのかはっきりとは分からない。
何が欲しいのか分からなければ利に訴えかけることは難しい。
ならば情に訴えるしかない。
このために演技スキルなんてものまで用意して3日ほど練習していたんだ。
ちょっとは譲歩してくれ。
「ああ、そうですか」
結局彼らが船からやってきたのは7日後のことだった。
俺はあまりに遅いものだからもう来ないものと考えて絶賛サーフィンの真っ最中だった。
これからテイクオフというときに話しかけられればそりゃあ少し不機嫌にもなるさ。
もはや開き直って海の家の外に設置したバケツシャワーで軽く砂と塩水を洗い流し、使者を放っておいて服を着替える。
そっちがタイミング悪く来たんだからこのくらいは待ってくれ。
人前で着替えるのは少し恥ずかしいが、なぜか常夏の気候というのは人から羞恥心を少しだけ奪う性質がある。
前世の俺だったら見ず知らずの外国人の前で全裸になって着替えるなんてできなかっただろうが、今はなぜかそれほど気にならない。
南国は人を大らかにするな。
俺はこの世界の技術でも作れそうなベージュの七分丈パンツと地味目のアロハシャツに着替え、腰に水精の短剣を装備して使者に向き直る。
見たところ居丈高な感じもないしこちらを害そうという意図も感じない。
どうやらこの島に来たスパヌエル帝国とやらの開拓団はなかなかに理性的な奴等だったらしい。
ひとまず安心だ。
いきなり出て行かなければ殺すとか言ってくるような海賊まがいの奴等だったら異世界に転生してから初めてとなる荒事に挑戦しなければならなかっただろう。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、突然押しかけて申し訳ありません」
使者は全部で5人。
意外と少ないな。
先住民が俺だけなので舐めているのだろうか。
使者の中で腰に剣を差している人は一人のみ。
無手でも魔法やスキル、格闘技などのなんらかの戦闘手段があるのかもしれないが、それでも全員がその使い手であるとは思えない。
特に前に出ている物腰の柔らかい優男とその両脇の2人の部下っぽい人たちはどう見ても肉体労働者には見えない。
俺に話しかけてきていることからも、おそらくはネゴシエーターが彼らの開拓団内での仕事なのだろう。
命の危険は遠ざかったとはいえ、交渉を飯の種にする彼らを相手取るからには気を抜くことはできないか。
言語理解スキルはその機能を発揮しているようで、スパヌエル帝国という全く知らない国のよく分からない言語でもスラスラとしゃべることができている。
「とりあえず自己紹介をさせてください。私はスパヌエル帝国南方開拓団所属、現地折衝役のモリーと申します」
「同じくカルロスです」
「ベイカーです」
後ろのガタイのいい男たちは自己紹介をせずに周囲を警戒している。
おそらく彼らはこの3人に付けられた護衛なのだろう。
とても強そうなので正面きって戦えば素人の俺に勝ち目は無い。
なるべく下手に出るか。
「ご丁寧にどうも。私はヤマダといいます。幼い頃に父と一緒にこの島に流れついた漂流者です」
俺は彼らがこの島にやってきた日の夜からずっと温めていた設定を語った。
物心つく前に父と一緒にこの島に流れつき、以来ずっとこの島で育ってきた。
父は転生者という称号持ちでアイテムボックスや鑑定、言語理解、鍛冶、錬金、木工などの数々のスキルを持つ類稀なる人物であった。
自分も言語理解のスキルを受け継いでいるためにあなたたちと言葉が通じる。
この海の家なる建物も父が建てた。
いったいどうやって建てたのかは分からない。
父は何を言っているのか分からないことがあった。
そんな父も去年亡くなった。
父の思い出が残るこの地を離れる気はない。
できることなら海の家もこの砂浜も俺が所有権を主張したい。
そんな感じのことを情感たっぷりに訴えた。
俺には彼らが何を求めているのかはっきりとは分からない。
何が欲しいのか分からなければ利に訴えかけることは難しい。
ならば情に訴えるしかない。
このために演技スキルなんてものまで用意して3日ほど練習していたんだ。
ちょっとは譲歩してくれ。
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