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7.妖精
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「ねえねえお兄さん、なんで裸で大声で叫んでるの?」
「へ?」
全裸で人の悪口や卑猥な言葉を叫びまくることで不安をどこかに遠ざけることに成功した俺は、突如として背中に投げかけられた言葉に一瞬何も考えられなくなってしまった。
若い女の声だ。
幼いと言っても過言ではない声音だ。
まさか俺が薪拾いをしている間に拠点がもぬけの殻になっているというのはあのチャラ男大学生あたりが考えた盛大などっきりで、実はどこかに隠れていて俺の反応を見て大爆笑していたということなのだろうか。
だが俺のことをお兄さんなんて呼ぶ人はいただろうか。
俺よりも年下なのは陽キャハーレムの女子高生3人とJC、あとJDもギリギリ年下だったか。
JDは大学生のくせに場末のスナックのママ並みに酒焼けした声だったので除外しよう。
そもそも全員俺のことを完全に見下していてお兄さんどころか名前や苗字でも呼ばれた記憶がない。
声も違うし、この状況で出てくるにしてはおかしな口調だ。
どっきりを仕掛けて俺が盛大にリアクションをしてしまったのなら、もっと馬鹿にしたような半笑いだったり思い切り爆笑していたりするはずなのだ。
じゃああの集団の誰かじゃない?
それはそれで怖い。
俺は恐怖と不安と、あと裸だから色々恥ずかしくてなかなか振り返ることができない。
「お兄さん?お兄さんってば!」
業を煮やした声の主は全く音も立てることなく俺の眼前に移動した。
その姿を見て俺は驚愕で口が開きっぱなしになる。
声の主は30センチ程度の小さな女の子だった。
しかも空を飛んでいる。
背中に羽が生えている。
キラキラと光る金の髪と透き通った緑の瞳はまるで人形のように美しい。
「妖精?」
「そうだよ。私エリアーデっていうの、エリーって呼んでね?お兄さんの名前はタキガワって言うんだよね。ずっと見てたから知ってるよ」
「え、ずっと見てたの?」
「うん。他の人間たちがいたから姿は隠してたけどね。言っとくけどここは私の住処だから、タキガワたちのほうが後から現れたんだからね!」
「それは悪かった。俺たちも突然ここに放り出されて困っていたんだ」
「いいよ。見てて面白かったしね」
どうやら怒って出てきたわけではなさそうで少し安心した。
妖精と言えば物語によっていい風に書かれる場合と悪い風に書かれることがある。
たとえば気まぐれで人間の子供を身代わりと入れ替えてしまうチェンジリングが有名だろう。
何をするのかわからないというような怖いイメージを俺は妖精という存在に持っていた。
「それで、タキガワは何をしていたの?裸で。人間は服を着るって聞いたことがあるんだけど。ここにいた他の人も着てたよね。夜は脱いで抱き合ってた人もいたけど」
「ああ、まあ、その……」
「タキガワも裸で女の人と抱き合いたいの?私とする?」
「いやいやそういうわけには……」
エリアーデと名乗った妖精の姿は全体的に幼くスレンダーな体をしているが、人間サイズだったら十分に魅力的だっただろう。
妖精は服を着るという習慣が無いのか一糸纏わぬ姿も目に毒だ。
しかしやはりサイズが人形サイズなので不思議とエロさは感じず、可愛らしいという印象しか無い。
そもそもこの妖精は男女が裸で抱き合っていた意味をよくわかってはいないだろう。
というか誰と誰のを見てたんだろう。
そのへん詳しく聞きたいものだ。
「とりあえず、服着ていい?」
「いいよ。私もその服っての着ようかな」
そうしてくれると助かる。
親戚の子供が裸で走り回っているときのような気分で落ち着かない。
俺はそこら中に散らばっていた服を回収して身に着けながら、妖精の服がどんなものかを窺い見る。
エリアーデは適当な木から葉っぱをもぎ取ると、それに息をそっと吹きかけるような仕草をする。
すると葉っぱは光輝き、エリアーデの身体を包み込んでいく。
光が収まるとエリアーデは真っ白なワンピース姿になっていた。
なんかこの世界に来てから一番ファンタジーを感じた気がする。
「えへへ、可愛い?」
「ああ、可愛いよ」
妖精みたいという言葉が思わず出そうになったが、妖精に妖精みたいと言ってどうするんだ。
しかし本当に白いワンピース姿のエリアーデはとても可愛らしかった。
「ねえねえそろそろタキガワが裸で何してたのか教えてよ」
「ああ。別に何をしてたってわけじゃないんだけど、ムカつくことがあって、とにかく叫んでただけだよ」
「ほかの人間たちが突然いなくなっちゃったから?あいつらタキガワのこと置いて自分たちだけどっか行っちゃったの?なんか笑いながら森の中歩いてたけど」
「やっぱ笑ってたか」
おそらく薪拾いに行かせてその間に全員いなくなるってのはチャラ男大学生2人組あたりが考えたんだろう。
俺に気づかれずに移動するならチャンスはいくらでもあったはずだ。
それなのにわざわざそんなことをしたのは最後に俺の間抜け面でも見てあとで笑うためなのだろう。
あのにやけ面を思い出すとまたムカついてきてしまった。
「タキガワ仲間外れにされちゃって悲しいんだね」
「悲しい?」
「だって、泣いてるよ?」
自分の頬を伝う水分が涙であると今初めて気が付いた。
視界は滲み、あとからあとから水分があふれ出してきた。
「大丈夫だよ、タキガワ。タキガワは一人じゃないよ。私がいるからね」
「エリアーデ……」
「エリーって呼んでよ。ね?タキガワと私はもう友達なんだからね。友達はずっと一緒にいるんだよ」
「エリー」
「うん」
俺の肩に座って優しく頬を撫でるエリーの小さな手が温かくて、俺の涙は止まらなくなってしまう。
こんなに泣いたのは両親が死んだとき以来だった。
「へ?」
全裸で人の悪口や卑猥な言葉を叫びまくることで不安をどこかに遠ざけることに成功した俺は、突如として背中に投げかけられた言葉に一瞬何も考えられなくなってしまった。
若い女の声だ。
幼いと言っても過言ではない声音だ。
まさか俺が薪拾いをしている間に拠点がもぬけの殻になっているというのはあのチャラ男大学生あたりが考えた盛大などっきりで、実はどこかに隠れていて俺の反応を見て大爆笑していたということなのだろうか。
だが俺のことをお兄さんなんて呼ぶ人はいただろうか。
俺よりも年下なのは陽キャハーレムの女子高生3人とJC、あとJDもギリギリ年下だったか。
JDは大学生のくせに場末のスナックのママ並みに酒焼けした声だったので除外しよう。
そもそも全員俺のことを完全に見下していてお兄さんどころか名前や苗字でも呼ばれた記憶がない。
声も違うし、この状況で出てくるにしてはおかしな口調だ。
どっきりを仕掛けて俺が盛大にリアクションをしてしまったのなら、もっと馬鹿にしたような半笑いだったり思い切り爆笑していたりするはずなのだ。
じゃああの集団の誰かじゃない?
それはそれで怖い。
俺は恐怖と不安と、あと裸だから色々恥ずかしくてなかなか振り返ることができない。
「お兄さん?お兄さんってば!」
業を煮やした声の主は全く音も立てることなく俺の眼前に移動した。
その姿を見て俺は驚愕で口が開きっぱなしになる。
声の主は30センチ程度の小さな女の子だった。
しかも空を飛んでいる。
背中に羽が生えている。
キラキラと光る金の髪と透き通った緑の瞳はまるで人形のように美しい。
「妖精?」
「そうだよ。私エリアーデっていうの、エリーって呼んでね?お兄さんの名前はタキガワって言うんだよね。ずっと見てたから知ってるよ」
「え、ずっと見てたの?」
「うん。他の人間たちがいたから姿は隠してたけどね。言っとくけどここは私の住処だから、タキガワたちのほうが後から現れたんだからね!」
「それは悪かった。俺たちも突然ここに放り出されて困っていたんだ」
「いいよ。見てて面白かったしね」
どうやら怒って出てきたわけではなさそうで少し安心した。
妖精と言えば物語によっていい風に書かれる場合と悪い風に書かれることがある。
たとえば気まぐれで人間の子供を身代わりと入れ替えてしまうチェンジリングが有名だろう。
何をするのかわからないというような怖いイメージを俺は妖精という存在に持っていた。
「それで、タキガワは何をしていたの?裸で。人間は服を着るって聞いたことがあるんだけど。ここにいた他の人も着てたよね。夜は脱いで抱き合ってた人もいたけど」
「ああ、まあ、その……」
「タキガワも裸で女の人と抱き合いたいの?私とする?」
「いやいやそういうわけには……」
エリアーデと名乗った妖精の姿は全体的に幼くスレンダーな体をしているが、人間サイズだったら十分に魅力的だっただろう。
妖精は服を着るという習慣が無いのか一糸纏わぬ姿も目に毒だ。
しかしやはりサイズが人形サイズなので不思議とエロさは感じず、可愛らしいという印象しか無い。
そもそもこの妖精は男女が裸で抱き合っていた意味をよくわかってはいないだろう。
というか誰と誰のを見てたんだろう。
そのへん詳しく聞きたいものだ。
「とりあえず、服着ていい?」
「いいよ。私もその服っての着ようかな」
そうしてくれると助かる。
親戚の子供が裸で走り回っているときのような気分で落ち着かない。
俺はそこら中に散らばっていた服を回収して身に着けながら、妖精の服がどんなものかを窺い見る。
エリアーデは適当な木から葉っぱをもぎ取ると、それに息をそっと吹きかけるような仕草をする。
すると葉っぱは光輝き、エリアーデの身体を包み込んでいく。
光が収まるとエリアーデは真っ白なワンピース姿になっていた。
なんかこの世界に来てから一番ファンタジーを感じた気がする。
「えへへ、可愛い?」
「ああ、可愛いよ」
妖精みたいという言葉が思わず出そうになったが、妖精に妖精みたいと言ってどうするんだ。
しかし本当に白いワンピース姿のエリアーデはとても可愛らしかった。
「ねえねえそろそろタキガワが裸で何してたのか教えてよ」
「ああ。別に何をしてたってわけじゃないんだけど、ムカつくことがあって、とにかく叫んでただけだよ」
「ほかの人間たちが突然いなくなっちゃったから?あいつらタキガワのこと置いて自分たちだけどっか行っちゃったの?なんか笑いながら森の中歩いてたけど」
「やっぱ笑ってたか」
おそらく薪拾いに行かせてその間に全員いなくなるってのはチャラ男大学生2人組あたりが考えたんだろう。
俺に気づかれずに移動するならチャンスはいくらでもあったはずだ。
それなのにわざわざそんなことをしたのは最後に俺の間抜け面でも見てあとで笑うためなのだろう。
あのにやけ面を思い出すとまたムカついてきてしまった。
「タキガワ仲間外れにされちゃって悲しいんだね」
「悲しい?」
「だって、泣いてるよ?」
自分の頬を伝う水分が涙であると今初めて気が付いた。
視界は滲み、あとからあとから水分があふれ出してきた。
「大丈夫だよ、タキガワ。タキガワは一人じゃないよ。私がいるからね」
「エリアーデ……」
「エリーって呼んでよ。ね?タキガワと私はもう友達なんだからね。友達はずっと一緒にいるんだよ」
「エリー」
「うん」
俺の肩に座って優しく頬を撫でるエリーの小さな手が温かくて、俺の涙は止まらなくなってしまう。
こんなに泣いたのは両親が死んだとき以来だった。
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