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23.王国騎士団と勇者
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建築中の砦に篭って早1ヶ月ほどが経過した。
状況は変わらない。
魔族軍の数は5000くらいで留まっている。
向こうは巨大な壁を攻略できないでいるし、こちらも攻撃はせずに防御に徹しているために被害は皆無だ。
一人寝ぼけて壁の階段から落ちて足を折った者がいたが、神酒の力で次の日には回復していた。
たまに魔族軍も攻城用の櫓や梯子などを持って壁に近づいてくるが、その度に燃やしている。
一人1発ファイアボールを撃つだけでも相当な火力になるために、すぐに向こうの攻城兵器は燃えて使えなくなる。
200人全員が魔法を使える軍というのはやはり強い。
打って出るには数が少ないが、守るだけならなんとかなっている。
あとは漁夫の利を得ようと食いついてくる王国陣営を待つだけだ。
さすがにここを何年も守れと言われると気が滅入ってしまうからね。
できればそろそろ来て欲しいものだ。
「お屋形様。王都から軍が派遣されてくるようです。伝令が伝えてきました」
「やっとですか。意外と遅かったですね。それで、誰が?」
「それが、どうやら王国騎士団のようです」
王国騎士団が来ちゃったのか。
まあ理解できなくもない。
この場所に砦を築くことができれば、大手柄を取ることも不可能ではないからだ。
魔族領に打って出るための橋頭堡とするつもりなのかもしれない。
そんなにうまくいくとは思えないけどな。
見たところ魔族軍はひとりひとりがかなりの強兵だ。
俺達は防御に徹しているし壁を隔てて戦っているのでそこまで影響は無いが、実際に剣を打ち合わせて戦うとなると押し負けるイメージしか湧いてこない。
王国騎士団には多くの異世界人が所属しているので、神器の力をあてにしているのか?
そういえばあのきつめの顔したOLさんは元気に女騎士しているだろうか。
あの人の神器はひとつだけ知っている。
冷蔵庫だ。
あの神器はいったいどんな能力の神器なんだろうな。
たぶん冷蔵庫の機能から大きく逸脱した能力ではないと思うが。
「王国騎士団はいつごろ到着すると?」
「明日の昼ごろ到着予定でございます。指揮官はマリステラ卿だそうです」
「マリステラ卿か。少しは話が分かりそうだ」
マリステラ卿という人が王国騎士団を指揮している人なのだという。
男爵も知っている人のようで、悪い人ではなさそうだ。
たぶん良い人でもないけどね。
また酒の量が増えそうだ。
神酒じゃなかったら身体を壊していたかもしれない。
「指揮官のグレイス・マリステラだ。一応陛下からは子爵の地位もいただいている」
子爵で一応だったら男爵はどうなるんだ。
たぶん悪気があって言ったわけではないのだろう。
自分の立場はあくまでも王国騎士団の士官であって、貴族の地位のほうは自分の本意ではないんだよといいうことを伝えたかっただけなのかもしれない。
しかしとても空気の読めなさそうな人が来たな。
男爵情報では指揮官としては結構有能な人らしいけど、肝心なところで融通が利かないのが玉に瑕なのだという。
「短期間でこれだけの砦を建設するとは、素晴らしいじゃないかリザウェル男爵。中央では貴殿のことを田舎貴族だと謗る者も多いが、私は以前からやるときはやる男だと思っていたぞ」
「はは、ありがとうございます……」
男爵も苦笑いだ。
「すごいね。これってぇ、おじさんの神器の力なの?」
そう俺に尋ねてくるのは、王国騎士団に付いてきた勇者の一人である木村かえでさんだ。
少しウェーブした明るい髪色をした今時の女子高生といった感じの女の子だ。
あまり神器のことを詮索しないで欲しい。
木村さん自身は何も考えずに聞いているのだろうが、王国騎士団の人がめちゃくちゃ耳を澄ましているから。
「おいかえで、あまり人の神器のことを聞くもんじゃねえぞ」
「えぇ~、なんでぇ?」
「バッカおまえ、神器っつったら俺達地球人の秘密兵器だろうが。秘密にしとかなきゃならねえんだよ」
「ふーん。そうなんだぁ」
木村さんの暴走を止めてくれたのは、同じく王国騎士団所属の勇者市村隼人くんだ。
彼も高校生で、かえでさんとは彼氏彼女の関係なのだという。
隼人くんはなんというか、たぶん野球部だね。
坊主頭だし。
ふたりともどこにでもいるバカップルという感じだ。
「君たち、そのへんにしておきなさい。木崎さんが困っているじゃないか」
そして最後に、彼女は篠原静香さん。
何を隠そう冷蔵庫のOLさんだ。
もう一度くらい会いたいとは思っていたけれど、こんなに早く再会するとは思っていなかった。
彼女はピカピカの甲冑を着込んでいて、まさに女騎士といった風貌だ。
「すんませんっす、静香さん」
「ごめんなさい」
2人の高校生は静香さんに謝る。
素直で真っ直ぐなのは好感が持てる。
「木崎さん、すみません。2人がご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、ちょっとだけ返答に困っただけですから」
「その節はどうもありがとうございました。神器を先に選ばせていただいたおかげで、私は素晴らしい力を得ることができました」
「い、いえ、そんな……」
冷蔵庫はよほどいい神器だったとみえる。
俺も残り物の木の実がすごい神器だっただけに、なんとも言えない。
「よろしければ、お近づきのしるしを差し上げたいのですが……」
そう言って篠原さんは冷蔵庫を具現化し、扉を開いた。
そこに入っていたのは生ハムやソーセージ、タマゴに牛乳などの様々な食材。
篠原さんはさらに下の段の引き出しを開ける。
そこに鎮座していたのは二度と食べることはできないだろうと思っていたもの。
雪見だ〇ふくだった。
状況は変わらない。
魔族軍の数は5000くらいで留まっている。
向こうは巨大な壁を攻略できないでいるし、こちらも攻撃はせずに防御に徹しているために被害は皆無だ。
一人寝ぼけて壁の階段から落ちて足を折った者がいたが、神酒の力で次の日には回復していた。
たまに魔族軍も攻城用の櫓や梯子などを持って壁に近づいてくるが、その度に燃やしている。
一人1発ファイアボールを撃つだけでも相当な火力になるために、すぐに向こうの攻城兵器は燃えて使えなくなる。
200人全員が魔法を使える軍というのはやはり強い。
打って出るには数が少ないが、守るだけならなんとかなっている。
あとは漁夫の利を得ようと食いついてくる王国陣営を待つだけだ。
さすがにここを何年も守れと言われると気が滅入ってしまうからね。
できればそろそろ来て欲しいものだ。
「お屋形様。王都から軍が派遣されてくるようです。伝令が伝えてきました」
「やっとですか。意外と遅かったですね。それで、誰が?」
「それが、どうやら王国騎士団のようです」
王国騎士団が来ちゃったのか。
まあ理解できなくもない。
この場所に砦を築くことができれば、大手柄を取ることも不可能ではないからだ。
魔族領に打って出るための橋頭堡とするつもりなのかもしれない。
そんなにうまくいくとは思えないけどな。
見たところ魔族軍はひとりひとりがかなりの強兵だ。
俺達は防御に徹しているし壁を隔てて戦っているのでそこまで影響は無いが、実際に剣を打ち合わせて戦うとなると押し負けるイメージしか湧いてこない。
王国騎士団には多くの異世界人が所属しているので、神器の力をあてにしているのか?
そういえばあのきつめの顔したOLさんは元気に女騎士しているだろうか。
あの人の神器はひとつだけ知っている。
冷蔵庫だ。
あの神器はいったいどんな能力の神器なんだろうな。
たぶん冷蔵庫の機能から大きく逸脱した能力ではないと思うが。
「王国騎士団はいつごろ到着すると?」
「明日の昼ごろ到着予定でございます。指揮官はマリステラ卿だそうです」
「マリステラ卿か。少しは話が分かりそうだ」
マリステラ卿という人が王国騎士団を指揮している人なのだという。
男爵も知っている人のようで、悪い人ではなさそうだ。
たぶん良い人でもないけどね。
また酒の量が増えそうだ。
神酒じゃなかったら身体を壊していたかもしれない。
「指揮官のグレイス・マリステラだ。一応陛下からは子爵の地位もいただいている」
子爵で一応だったら男爵はどうなるんだ。
たぶん悪気があって言ったわけではないのだろう。
自分の立場はあくまでも王国騎士団の士官であって、貴族の地位のほうは自分の本意ではないんだよといいうことを伝えたかっただけなのかもしれない。
しかしとても空気の読めなさそうな人が来たな。
男爵情報では指揮官としては結構有能な人らしいけど、肝心なところで融通が利かないのが玉に瑕なのだという。
「短期間でこれだけの砦を建設するとは、素晴らしいじゃないかリザウェル男爵。中央では貴殿のことを田舎貴族だと謗る者も多いが、私は以前からやるときはやる男だと思っていたぞ」
「はは、ありがとうございます……」
男爵も苦笑いだ。
「すごいね。これってぇ、おじさんの神器の力なの?」
そう俺に尋ねてくるのは、王国騎士団に付いてきた勇者の一人である木村かえでさんだ。
少しウェーブした明るい髪色をした今時の女子高生といった感じの女の子だ。
あまり神器のことを詮索しないで欲しい。
木村さん自身は何も考えずに聞いているのだろうが、王国騎士団の人がめちゃくちゃ耳を澄ましているから。
「おいかえで、あまり人の神器のことを聞くもんじゃねえぞ」
「えぇ~、なんでぇ?」
「バッカおまえ、神器っつったら俺達地球人の秘密兵器だろうが。秘密にしとかなきゃならねえんだよ」
「ふーん。そうなんだぁ」
木村さんの暴走を止めてくれたのは、同じく王国騎士団所属の勇者市村隼人くんだ。
彼も高校生で、かえでさんとは彼氏彼女の関係なのだという。
隼人くんはなんというか、たぶん野球部だね。
坊主頭だし。
ふたりともどこにでもいるバカップルという感じだ。
「君たち、そのへんにしておきなさい。木崎さんが困っているじゃないか」
そして最後に、彼女は篠原静香さん。
何を隠そう冷蔵庫のOLさんだ。
もう一度くらい会いたいとは思っていたけれど、こんなに早く再会するとは思っていなかった。
彼女はピカピカの甲冑を着込んでいて、まさに女騎士といった風貌だ。
「すんませんっす、静香さん」
「ごめんなさい」
2人の高校生は静香さんに謝る。
素直で真っ直ぐなのは好感が持てる。
「木崎さん、すみません。2人がご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、ちょっとだけ返答に困っただけですから」
「その節はどうもありがとうございました。神器を先に選ばせていただいたおかげで、私は素晴らしい力を得ることができました」
「い、いえ、そんな……」
冷蔵庫はよほどいい神器だったとみえる。
俺も残り物の木の実がすごい神器だっただけに、なんとも言えない。
「よろしければ、お近づきのしるしを差し上げたいのですが……」
そう言って篠原さんは冷蔵庫を具現化し、扉を開いた。
そこに入っていたのは生ハムやソーセージ、タマゴに牛乳などの様々な食材。
篠原さんはさらに下の段の引き出しを開ける。
そこに鎮座していたのは二度と食べることはできないだろうと思っていたもの。
雪見だ〇ふくだった。
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