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閑話12(ミタケン視点、最期少しだけ静香さん視点)
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おいおい、どうなってやがるんだよ。
幽霊がスマホドロボウかよ。
そもそもあの金髪の男、なんでこんなときにスマホなんかいじってやがるんだ。
これだから最近の若い奴は。
スマホ依存症ってやつかよ。
幽霊に盗まれても文句言えねえぞ。
「なっ、し、しまった!プロット様っ、神の苦無威の能力です!やられました!神のスマホEXを奪われました!!」
「なにをしておる馬鹿者が!!」
神のスマホEX?
あのスマホも神器だったのか?
そういや、あのおっかねえ女のいた空間で若い奴らが異世界はスマホで無双が基本だとか言ってやがったな。
異世界にスマホ持って行くっていうのは若い奴の常識なのか?
一樹に聞いてみてーが、青い顔してガタガタ震えてやがる。
こんな状況じゃしかたのねえことか。
「一樹、しっかりしろ。大丈夫だ。なんとかなるって」
「ミタケン……。でも、僕たちは物語の主人公じゃないんだよ。異世界ではモブはすぐ死ぬって決まってるんだ」
「お前は空想と現実を混同しすぎなんだよ。現実はな一樹、全員が全員主役だぜ。そんでお約束なんぞ通用しねえ。クソみてえな主人公もいれば、モブキャラみてえに人生に上がり下がりのねえ主人公もいる。どいつもこいつも好き勝手に主人公しやがるから、人生っていうのはなかなか上手くいかねえんだ。要は主人公同士の戦いってのが人生なんだと俺は思ってる」
「人生が、主人公同士の戦いか。うん、なんかしっくり来た。二次元中毒の僕には分かりやすいたとえだったよ。あと思い出したよ」
「思い出した?何をだ?」
「最近はさ、おっさんが主人公の小説ってのが流行ってるってこと」
「は?」
一樹の気になる話の続きは、聞き取れなかった。
攻撃の勢いが、さっきよりもきつくなりやがったからだ。
遠距離タイプの神器がビュンビュン飛んできやがる。
厄介なのは魔法ってやつだよ。
篠原の冷蔵庫や近くの床に着弾した途端爆発しやがる。
爆風で瓦礫やらなんやらが飛んできてヒヤヒヤさせやがる。
くそが、こっちも使ったことねえ対戦車ライフルを適当にぶっ放してやるよ。
弾倉を取替え、三段変形銃を対戦車ライフルに変形させて狙いもつけずにぶっ放した。
一瞬意識が飛びそうになるほどの反動と爆音を響かせて、着弾した屋敷の壁が吹き飛んだ。
あれ、これ逃げられるんじゃねえか?
このまま屋敷を破壊して逃げ道を作れば、一樹の小枝を思い切り遠くに投げて転移することができる。
何度か繰り返せば逃げ切れるような気がするぜ。
「よし、プランBに変更だ」
「ミタケン、プランなんて決めてないじゃん」
「まあいいじゃねえか。とにかく俺が壁をぶっ壊すからお前は小枝をなるべく遠くに投げて俺達を連れて転移しろ」
「わかった」
「私は冷蔵庫の位置を動かして最後に残ります。最悪の場合は私を置いて逃げてください」
「馬鹿言ってんじゃねえ。お前がいなかったら俺達も死ぬっての」
「そうだよ篠原さん、この中で一番戦闘経験が豊富で王都に詳しい人がいなかったら僕たちたぶん王都から出られないよ」
「そうですね」
そう言って篠原は笑った。
だがその笑顔はどうにも辛気臭い。
こいつ全然わかってねえな。
ちっ、最近の若い奴はめんどくせえな。
まあいざとなったら蹴り飛ばしてでも逃げさせるぜ。
「さあ、行くぜ」
俺は対戦車ライフルを壁に向かってぶっ放した。
寝そべって撃ってんのに軽く俺もぶっ飛びそうになるほどの反動だぜ。
こりゃ絶対アザになるな。
だが壁は吹っ飛んだ。
俺はその向こう側に見えた新たな壁も、その次の壁もぶち抜いていく。
やがて外の光が見えた。
対戦車ライフルは邪魔なので消す。
「一樹!篠原!」
篠原が冷蔵庫を消し、3人で壁に空いた大穴に向かって走る。
「逃げる気だ!!そうはさせるか!!」
「集中攻撃だ!」
「タイミング合わせろ!!」
くそっ、あいつら自分は首輪があって逃げられないからって道連れにする気かよ。
勇者や兵士の攻撃が集中する。
やべえ、間に合わねえ。
聞きなれたズンッという地響きみたいな音がする。
後ろを振り返ると、篠原が神の冷蔵庫を具現化して攻撃を防いでいた。
「先に行ってください!」
「だがっ」
「必ず、追いかけますから……」
それは嘘だって言ってるようなものだぜ。
俺は立ち止まり、銃を具現化してアサルトライフルに変形させると冷蔵庫の陰から撃ちまくった。
だが銃弾は直線攻撃だ。
俺が銃弾を当てられるということは敵も俺に直線攻撃を当てられる。
遮蔽物に隠れて銃を撃つ訓練を受けたわけでもねえ俺の弾は全く当たらなかった。
「行ってください、ミタケンさん。一樹君も」
「でも、篠原さん……」
「俺は仲間の犠牲で生き延びるくらいならここで死んでもいい。ムカつく奴らを道連れに派手に果ててやるぜ」
「あなたは良くても一樹君はどうするんですか。一樹君も道連れにするつもりですか」
「それは……」
「僕はいいよ、ミタケンと篠原さんとここで死ぬのなら。寂しくないし」
「一樹、いや、悪かった。ダメだな。やっぱり、20にもなってねえ奴は生きなきゃならねえ」
俺はどうせつまらねえ余生を競馬やパチンコで暇つぶしをしているだけの人間だった。
だからいつ死んでもかまわねえと思っているが、一樹はダメだ。
一樹にとってこの世界はとても魅力的な世界だろう。
魔法があって、神器なんていうすげえアイテムを持たせてもらって異世界転移だ。
小説脳のこいつにとったら、ずっと待っていた展開だろう。
それを、こんなところで終わらせるわけにはいかねえ。
「篠原、俺の神器をお前に全部貸してやるよ。だからお前は俺に絶対神器を返しに来い」
「ミタケンさん……。ありがとうございます」
俺は手に持った銃を篠原に渡し、具現化した神コーヒーも渡す。
最後にかけていたメガネも、篠原に渡した。
神器の所有権が篠原に移ったのが分かるぜ。
その証拠にくっきり見えていた景色が2重3重に見えやがる。
ひどい乱視に逆戻りってわけかよ。
「俺の異世界生活が快適になるかはお前にかかっているからな、必ずメガネだけでも返しに来い」
「わかりました。必ず、お返しします」
俺は見え辛い目をしかめながら篠原に背中を向け、一樹の首根っこを掴んで走り出した。
『ぴろりろりん♪三段変形銃はシズカのものになった』
『ぴろりろりん♪神コーヒーはシズカのものになった』
『ぴろりろりん♪賢者の丸メガネはシズカのものになった』
ミタケンさん、不器用な人ですね。
神器を自分から全て差し出す人なんていませんよ、普通。
ミタケンさんにメガネを返せるかどうかは五分五分といったところですか。
私はミタケンさんから渡された丸メガネをおもむろにかけてみます。
なるほど、ミタケンさんは身体からヌルヌルしたものが出ていると言っていましたがおじさん特有の下ネタではなく本当だったんですね。
謝らなくては。
魔力の動きが見えると魔法を使うのが非常に楽です。
「え?」
今、目の端に何か人影のようなものが映った気がします。
私の口元が、何故か少しほころびます。
落ち着いて目を凝らすように部屋を見回すと、今度はぼんやりとした人の顔のようなものがメガネに映ります。
その冴えないおじさんの顔を見た私の全身の身体の力が、抜けていきます。
繁信さん……。
おじさんと透明人間の組み合わせは犯罪臭がしますよ。
幽霊がスマホドロボウかよ。
そもそもあの金髪の男、なんでこんなときにスマホなんかいじってやがるんだ。
これだから最近の若い奴は。
スマホ依存症ってやつかよ。
幽霊に盗まれても文句言えねえぞ。
「なっ、し、しまった!プロット様っ、神の苦無威の能力です!やられました!神のスマホEXを奪われました!!」
「なにをしておる馬鹿者が!!」
神のスマホEX?
あのスマホも神器だったのか?
そういや、あのおっかねえ女のいた空間で若い奴らが異世界はスマホで無双が基本だとか言ってやがったな。
異世界にスマホ持って行くっていうのは若い奴の常識なのか?
一樹に聞いてみてーが、青い顔してガタガタ震えてやがる。
こんな状況じゃしかたのねえことか。
「一樹、しっかりしろ。大丈夫だ。なんとかなるって」
「ミタケン……。でも、僕たちは物語の主人公じゃないんだよ。異世界ではモブはすぐ死ぬって決まってるんだ」
「お前は空想と現実を混同しすぎなんだよ。現実はな一樹、全員が全員主役だぜ。そんでお約束なんぞ通用しねえ。クソみてえな主人公もいれば、モブキャラみてえに人生に上がり下がりのねえ主人公もいる。どいつもこいつも好き勝手に主人公しやがるから、人生っていうのはなかなか上手くいかねえんだ。要は主人公同士の戦いってのが人生なんだと俺は思ってる」
「人生が、主人公同士の戦いか。うん、なんかしっくり来た。二次元中毒の僕には分かりやすいたとえだったよ。あと思い出したよ」
「思い出した?何をだ?」
「最近はさ、おっさんが主人公の小説ってのが流行ってるってこと」
「は?」
一樹の気になる話の続きは、聞き取れなかった。
攻撃の勢いが、さっきよりもきつくなりやがったからだ。
遠距離タイプの神器がビュンビュン飛んできやがる。
厄介なのは魔法ってやつだよ。
篠原の冷蔵庫や近くの床に着弾した途端爆発しやがる。
爆風で瓦礫やらなんやらが飛んできてヒヤヒヤさせやがる。
くそが、こっちも使ったことねえ対戦車ライフルを適当にぶっ放してやるよ。
弾倉を取替え、三段変形銃を対戦車ライフルに変形させて狙いもつけずにぶっ放した。
一瞬意識が飛びそうになるほどの反動と爆音を響かせて、着弾した屋敷の壁が吹き飛んだ。
あれ、これ逃げられるんじゃねえか?
このまま屋敷を破壊して逃げ道を作れば、一樹の小枝を思い切り遠くに投げて転移することができる。
何度か繰り返せば逃げ切れるような気がするぜ。
「よし、プランBに変更だ」
「ミタケン、プランなんて決めてないじゃん」
「まあいいじゃねえか。とにかく俺が壁をぶっ壊すからお前は小枝をなるべく遠くに投げて俺達を連れて転移しろ」
「わかった」
「私は冷蔵庫の位置を動かして最後に残ります。最悪の場合は私を置いて逃げてください」
「馬鹿言ってんじゃねえ。お前がいなかったら俺達も死ぬっての」
「そうだよ篠原さん、この中で一番戦闘経験が豊富で王都に詳しい人がいなかったら僕たちたぶん王都から出られないよ」
「そうですね」
そう言って篠原は笑った。
だがその笑顔はどうにも辛気臭い。
こいつ全然わかってねえな。
ちっ、最近の若い奴はめんどくせえな。
まあいざとなったら蹴り飛ばしてでも逃げさせるぜ。
「さあ、行くぜ」
俺は対戦車ライフルを壁に向かってぶっ放した。
寝そべって撃ってんのに軽く俺もぶっ飛びそうになるほどの反動だぜ。
こりゃ絶対アザになるな。
だが壁は吹っ飛んだ。
俺はその向こう側に見えた新たな壁も、その次の壁もぶち抜いていく。
やがて外の光が見えた。
対戦車ライフルは邪魔なので消す。
「一樹!篠原!」
篠原が冷蔵庫を消し、3人で壁に空いた大穴に向かって走る。
「逃げる気だ!!そうはさせるか!!」
「集中攻撃だ!」
「タイミング合わせろ!!」
くそっ、あいつら自分は首輪があって逃げられないからって道連れにする気かよ。
勇者や兵士の攻撃が集中する。
やべえ、間に合わねえ。
聞きなれたズンッという地響きみたいな音がする。
後ろを振り返ると、篠原が神の冷蔵庫を具現化して攻撃を防いでいた。
「先に行ってください!」
「だがっ」
「必ず、追いかけますから……」
それは嘘だって言ってるようなものだぜ。
俺は立ち止まり、銃を具現化してアサルトライフルに変形させると冷蔵庫の陰から撃ちまくった。
だが銃弾は直線攻撃だ。
俺が銃弾を当てられるということは敵も俺に直線攻撃を当てられる。
遮蔽物に隠れて銃を撃つ訓練を受けたわけでもねえ俺の弾は全く当たらなかった。
「行ってください、ミタケンさん。一樹君も」
「でも、篠原さん……」
「俺は仲間の犠牲で生き延びるくらいならここで死んでもいい。ムカつく奴らを道連れに派手に果ててやるぜ」
「あなたは良くても一樹君はどうするんですか。一樹君も道連れにするつもりですか」
「それは……」
「僕はいいよ、ミタケンと篠原さんとここで死ぬのなら。寂しくないし」
「一樹、いや、悪かった。ダメだな。やっぱり、20にもなってねえ奴は生きなきゃならねえ」
俺はどうせつまらねえ余生を競馬やパチンコで暇つぶしをしているだけの人間だった。
だからいつ死んでもかまわねえと思っているが、一樹はダメだ。
一樹にとってこの世界はとても魅力的な世界だろう。
魔法があって、神器なんていうすげえアイテムを持たせてもらって異世界転移だ。
小説脳のこいつにとったら、ずっと待っていた展開だろう。
それを、こんなところで終わらせるわけにはいかねえ。
「篠原、俺の神器をお前に全部貸してやるよ。だからお前は俺に絶対神器を返しに来い」
「ミタケンさん……。ありがとうございます」
俺は手に持った銃を篠原に渡し、具現化した神コーヒーも渡す。
最後にかけていたメガネも、篠原に渡した。
神器の所有権が篠原に移ったのが分かるぜ。
その証拠にくっきり見えていた景色が2重3重に見えやがる。
ひどい乱視に逆戻りってわけかよ。
「俺の異世界生活が快適になるかはお前にかかっているからな、必ずメガネだけでも返しに来い」
「わかりました。必ず、お返しします」
俺は見え辛い目をしかめながら篠原に背中を向け、一樹の首根っこを掴んで走り出した。
『ぴろりろりん♪三段変形銃はシズカのものになった』
『ぴろりろりん♪神コーヒーはシズカのものになった』
『ぴろりろりん♪賢者の丸メガネはシズカのものになった』
ミタケンさん、不器用な人ですね。
神器を自分から全て差し出す人なんていませんよ、普通。
ミタケンさんにメガネを返せるかどうかは五分五分といったところですか。
私はミタケンさんから渡された丸メガネをおもむろにかけてみます。
なるほど、ミタケンさんは身体からヌルヌルしたものが出ていると言っていましたがおじさん特有の下ネタではなく本当だったんですね。
謝らなくては。
魔力の動きが見えると魔法を使うのが非常に楽です。
「え?」
今、目の端に何か人影のようなものが映った気がします。
私の口元が、何故か少しほころびます。
落ち着いて目を凝らすように部屋を見回すと、今度はぼんやりとした人の顔のようなものがメガネに映ります。
その冴えないおじさんの顔を見た私の全身の身体の力が、抜けていきます。
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