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おっさんずイフ
18.兄弟の決意
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おっさんと獣人の子供2人が救命ボートで海を漂い始めてからすでに10日が経過した。
朝から晩まで交代で船を漕ぎ続けた結果嵐からは遠ざかることができたみたいだ。
冷たい雨に体力を奪われ荒波に船を転覆させられる心配は減ったが、異世界の海には天気以外にも危険が蔓延っている。
「おじさん、また来たよ!!」
「君たちは船から絶対に落ちないようにね」
俺はここ数日ですっかり手足のように馴染んだ中型魔物用の大きな三又の銛を持って海に飛び込む。
海中には巨大なウツボのような魔物が2匹俺たちの船を襲おうと近づいてきていた。
こうした中型の魔物は大きな船には襲い掛からない。
だが俺たちの乗っているような小さな船だと獲物だと思って襲い掛かってくるのだ。
俺は水中で足裏を平行にして強く蹴る。
人間離れした脚力によって水を捉えた俺の身体は、魚雷のように猛スピードで海中を進んだ。
ウツボのような魔物は泳ぎはそれほど得意ではないようで水中で高速移動する俺に右往左往するばかりだ。
俺は魔物の死角から近づき、その頭部に銛を突き刺した。
この銛には返しが付いていないため、すぐに引き抜くことができる。
俺は素早く銛を引き抜き魔物から一度離れた。
びくびくと痙攣する魔物。
そろそろ息もきつくなってきたのでさっさと終わらせたいところだ。
あの痙攣している魔物はおそらくすぐに力尽きるだろう。
残るはあと1匹だけだ。
俺はまた水中を高速移動してもう1匹の頭部にも銛を突き刺した。
びくびく痙攣する2匹の魔物を放置して、海面に浮上する。
「ぶはぁっ、はぁしんどい……」
「おじさん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。2匹とも仕留めたよ。まだ生きているみたいだけど、すぐに力尽きるだろう。早くここから離れよう」
「わかった。おっさんは休んでろよ。俺たちが漕ぐから」
「ありがとう」
死んだ魔物の血の匂いでここにはたくさんの魔物がやってくることになるだろう。
その前になるべくここから距離をとっておかなくては。
だが俺はくたくただから兄弟の好意に甘えて少し休ませてもらうとしよう。
速度が足りないようだったら手伝えばいいだろう。
俺は神酒を取り出し、ゴクリと飲んで疲労を回復する。
少しだるくなっていた足の筋肉疲労が癒えていく気がする。
筋繊維のダメージまで癒せるということは、もしかしたら怪我なども治せるのではないだろうか。
神器がハイスペックすぎてたまに怖くなってくる。
どこまで身体を癒す力があるのか、一度試してみる必要がありそうだ。
「おっさんはさ、なんでそんなに強いんだ?」
木製のオールを使って船を漕ぎながら、お兄さんのマルスがそんなことを口にする。
おっさんがなんで強いかって、そりゃあチート神器のおかげだよ。
神酒のおかげでビール腹は大分へっこんだとはいえ、まだまだシックスパックには程遠いだるんだるんの身体だ。
どこからどう見ても人間離れした身体能力を有しているようには見えないだろう。
しかし兄弟にはここ数日の間にこのだるんだるんの身体で海中を高速移動する姿を何度も見せている。
さすがに不思議に思うか。
子供に対してはあまり不誠実に接したくはないが、神器のことを話せるほどこの2人を信用しているわけでもない。
「世の中のおっさんには秘密が多いものなんだよ」
「なんだよそれ……」
「おじさん、僕たちおじさんみたいに強くなりたいんだよ。強くなったら、2人だけで生きていけるでしょ?冒険者になって、世界中を回って、色々な魔物と戦ってたくさんお金を稼ぎたいんだ」
「なるほど、それで俺がどうやって強くなったのか知りたかったのか」
強くなって2人だけで生きていきたいなんて、なんか悲しくなってきてしまうな。
そりゃあいつかは自分の力だけで生きていかなければならないのだろうが、2人はまだ子供じゃないか。
そんな2人が誰にも頼ることができないから2人で生きていく決意を固めなければならないなんて。
そんな社会は間違っているような気がする。
俺には社会をどうにかする力はないけれど、この2人だけでもどうにかしてあげたいと思ってしまう。
だがここでこの2人に深入りするということは、最後まで責任を持たなくてはならないということだ。
2人が自分の力で生きていけるようになるまで、俺がこの2人を守るくらいの覚悟が必要だ。
俺にできるだろうか。
結婚経験もなく、当然子育ての経験もない。
今まで享楽的に生きてきたおっさんが、いきなり2人の子供を守り育てるなんてこと。
「おじさん?」
「どうしたんだよおっさん」
いや、そこまで重たく考える必要はないのかもしれない。
旅は道連れだ。
2人を守らなければならないとか、そんな上から目線の関係はこの2人と俺にとっては正常な関係ではない気がする。
俺と彼らとは対等だ。
旅の仲間だ。
お互いに孤独を埋め、俺に足りないものは彼らから吸収し、彼らが周りの大人から与えられなかったものを俺が与える。
旅先で少しだけお互いの袖が触れ合ったような関係。
そんな関係が望ましい。
今の俺には袖がないがな。
全裸だから。
朝から晩まで交代で船を漕ぎ続けた結果嵐からは遠ざかることができたみたいだ。
冷たい雨に体力を奪われ荒波に船を転覆させられる心配は減ったが、異世界の海には天気以外にも危険が蔓延っている。
「おじさん、また来たよ!!」
「君たちは船から絶対に落ちないようにね」
俺はここ数日ですっかり手足のように馴染んだ中型魔物用の大きな三又の銛を持って海に飛び込む。
海中には巨大なウツボのような魔物が2匹俺たちの船を襲おうと近づいてきていた。
こうした中型の魔物は大きな船には襲い掛からない。
だが俺たちの乗っているような小さな船だと獲物だと思って襲い掛かってくるのだ。
俺は水中で足裏を平行にして強く蹴る。
人間離れした脚力によって水を捉えた俺の身体は、魚雷のように猛スピードで海中を進んだ。
ウツボのような魔物は泳ぎはそれほど得意ではないようで水中で高速移動する俺に右往左往するばかりだ。
俺は魔物の死角から近づき、その頭部に銛を突き刺した。
この銛には返しが付いていないため、すぐに引き抜くことができる。
俺は素早く銛を引き抜き魔物から一度離れた。
びくびくと痙攣する魔物。
そろそろ息もきつくなってきたのでさっさと終わらせたいところだ。
あの痙攣している魔物はおそらくすぐに力尽きるだろう。
残るはあと1匹だけだ。
俺はまた水中を高速移動してもう1匹の頭部にも銛を突き刺した。
びくびく痙攣する2匹の魔物を放置して、海面に浮上する。
「ぶはぁっ、はぁしんどい……」
「おじさん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。2匹とも仕留めたよ。まだ生きているみたいだけど、すぐに力尽きるだろう。早くここから離れよう」
「わかった。おっさんは休んでろよ。俺たちが漕ぐから」
「ありがとう」
死んだ魔物の血の匂いでここにはたくさんの魔物がやってくることになるだろう。
その前になるべくここから距離をとっておかなくては。
だが俺はくたくただから兄弟の好意に甘えて少し休ませてもらうとしよう。
速度が足りないようだったら手伝えばいいだろう。
俺は神酒を取り出し、ゴクリと飲んで疲労を回復する。
少しだるくなっていた足の筋肉疲労が癒えていく気がする。
筋繊維のダメージまで癒せるということは、もしかしたら怪我なども治せるのではないだろうか。
神器がハイスペックすぎてたまに怖くなってくる。
どこまで身体を癒す力があるのか、一度試してみる必要がありそうだ。
「おっさんはさ、なんでそんなに強いんだ?」
木製のオールを使って船を漕ぎながら、お兄さんのマルスがそんなことを口にする。
おっさんがなんで強いかって、そりゃあチート神器のおかげだよ。
神酒のおかげでビール腹は大分へっこんだとはいえ、まだまだシックスパックには程遠いだるんだるんの身体だ。
どこからどう見ても人間離れした身体能力を有しているようには見えないだろう。
しかし兄弟にはここ数日の間にこのだるんだるんの身体で海中を高速移動する姿を何度も見せている。
さすがに不思議に思うか。
子供に対してはあまり不誠実に接したくはないが、神器のことを話せるほどこの2人を信用しているわけでもない。
「世の中のおっさんには秘密が多いものなんだよ」
「なんだよそれ……」
「おじさん、僕たちおじさんみたいに強くなりたいんだよ。強くなったら、2人だけで生きていけるでしょ?冒険者になって、世界中を回って、色々な魔物と戦ってたくさんお金を稼ぎたいんだ」
「なるほど、それで俺がどうやって強くなったのか知りたかったのか」
強くなって2人だけで生きていきたいなんて、なんか悲しくなってきてしまうな。
そりゃあいつかは自分の力だけで生きていかなければならないのだろうが、2人はまだ子供じゃないか。
そんな2人が誰にも頼ることができないから2人で生きていく決意を固めなければならないなんて。
そんな社会は間違っているような気がする。
俺には社会をどうにかする力はないけれど、この2人だけでもどうにかしてあげたいと思ってしまう。
だがここでこの2人に深入りするということは、最後まで責任を持たなくてはならないということだ。
2人が自分の力で生きていけるようになるまで、俺がこの2人を守るくらいの覚悟が必要だ。
俺にできるだろうか。
結婚経験もなく、当然子育ての経験もない。
今まで享楽的に生きてきたおっさんが、いきなり2人の子供を守り育てるなんてこと。
「おじさん?」
「どうしたんだよおっさん」
いや、そこまで重たく考える必要はないのかもしれない。
旅は道連れだ。
2人を守らなければならないとか、そんな上から目線の関係はこの2人と俺にとっては正常な関係ではない気がする。
俺と彼らとは対等だ。
旅の仲間だ。
お互いに孤独を埋め、俺に足りないものは彼らから吸収し、彼らが周りの大人から与えられなかったものを俺が与える。
旅先で少しだけお互いの袖が触れ合ったような関係。
そんな関係が望ましい。
今の俺には袖がないがな。
全裸だから。
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