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おっさんずイフ
44.ルーガル王国潜入
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「あんたは誰?」
「私は武田義明、異世界から召喚された勇者の一人です」
「ふーん、どんな神器を持ってるの?」
「一つ目はそこのおっさんを刺してそのまま奪われたクナイ型の神器です。名前は【神の苦無威】です。能力は発動すると誰にも認識されなくなる完全隠密能力です。人に触れるとその人にだけ解除されます。あとなぜか刺突攻撃のときだけ異様に鋭くなります」
「隠密能力と刺突特攻能力ってわけね。で、次は?」
「はい、疾風の指輪はとても素早くなる指輪です」
「次は?」
「はい、軽業師の指輪はとても身軽になる指輪です」
「もう他に持ってない?」
「はい、持ってません」
黒ずくめの刺客男こと武田は死人のようなどこを見ているかわからない顔でグウェンの問いに答えていく。
いったいグウェンの部屋で何があったのだろうか。
いや、グウェンの顔がツヤツヤしていることからナニが起こったのかは大体察しがつくが。
「あんたなんでシゲちゃんの居場所がわかったのよ」
「はい、我々勇者が召喚された最初に渡された翻訳の首飾りには居場所を特定する機能が組み込まれています。それを利用してそこのおっさんがここにいることを突き止めました。三国同盟の同盟国以外に行った異世界人には全員に私のような刺客が送り込まれているはずです」
「刺客は全員あんたみたいな勇者なの?」
「いいえ。普通は勇者が来るようなことはありません。しかしおっさんがいるのはSランク冒険者の屋敷であることがわかった時点で通常の刺客では役不足との判断がなされ、私が派遣されました」
この男はなかなかに強かった。
神器も含めたその能力は暗殺に特化していると言っても過言ではない。
俺も最初の一突きが肩ではなく心臓に突き刺さっていたら死んでいたかもしれない。
たまたま虫の知らせで寝返りをうったおかげで生き延びることができたに過ぎないのだ。
こんな刺客が他の異世界人に送り込まれていたら少し心配だったが、さすがに他の人には通常の刺客しか送られていないようだ。
梶原さんは大丈夫だろうか。
俺が知っている梶原さんの神器は2つ。
一つは収納の指輪。
アイテムボックスのような神器だったはずだ。
そしてもう一つは女神様の空間で俺が選び損ねた革靴の神器。
あれの能力は聞いていないが、なんとなくあれはいい神器なような気がするんだよな。
なにせ酒やタバコ、どんぐりにアタリの神器を仕込む女神様だ。
革靴にアタリを仕込んでいてもおかしくはない。
しかしこの翻訳アイテム、発信機だったのか。
俺たち異世界人にはこれがないと言葉も通じないし、どうしたものか。
案外言葉の問題は簡単に解決した。
それというのも、首飾りを外してもなぜか言葉が分かったのだ。
推測だが、神巻きタバコによって強化された脳の働きによって無意識のうちに唇を読んで言葉を覚えてしまっていたのかもしれない。
便利な神器のおかげで助かったけど、なんだか人間離れしてきているような気もする。
しかし人間離れなんて人間本位な言葉を使ってはマルスとマルクルに怒られてしまうな。
おっさんは人間である前におっさんだ。
それを忘れないようにしたいと思う。
「何難しい顔してんのよ」
「いや、ちょっと決意を固めていた」
「なんの決意?」
「不退転の」
「なにそれ。馬鹿言ってないで行くわよ」
「はい」
薄暗い影の世界を平泳ぎで移動し、目から上だけを地上に出して外の様子を伺う。
こうしているとまるでカエルになった気分だ。
ゲロゲロ。
「この神器は結構やばいかもしれないわね。どこでも入り放題ね」
ヌルバ王国とルーガル王国の国境線には立派な関が築かれているが、そこを俺たちは影の中に入り込んで堂々と素通りしてきたのだ。
強盗も脱税も女風呂覗きだってラクチン簡単の犯罪者ご用達神器だ。
こんなアイテムがゴロゴロ転がっている世界では推定無罪の法治国家は無理だな。
可能性を潰していくような捜査では未知のアイテムや魔法による犯行の可能性が多すぎて潰しきれない。
私が法律だ、の階級社会のほうが相性はいいだろう。
「あたしはこれから実家に向かうけど、シゲちゃんはどうする?」
「どうしようかな」
グウェンの実家ってことはスクアード辺境伯の邸宅なわけだ。
グウェンを見るにそこまで堅っ苦しい家ではないような気もするけれど、それでもやはりルーガル王国四大貴族の家なわけだし多少の礼儀は求められるだろう。
この世界の礼儀作法なんぞ知らない。
日本ではとりあえず下座に座ってペコペコしてたらよかったが、さすがにそんな礼儀とも呼べないようなものは本物の上流階級相手に通用しないよな。
「作法とかそういうことを気にしているのなら別にいいのよ。パパも軍人気質だからそんなに気にしないと思うし」
「いや、やっぱり礼儀作法はちゃんとしなきゃいけない。今回は分かれて行動しよう。俺は王都のほうに潜り込んでみるよ」
「そう?シゲちゃんもパパと一緒でちょっと頑固ね」
歳をとると変なところが頑固になっていけないな。
まあ貴族の邸宅が落ち着かないのは本当のことだ。
おっさんはおっさんなりのやり方で情報収集をしてみよう。
「私は武田義明、異世界から召喚された勇者の一人です」
「ふーん、どんな神器を持ってるの?」
「一つ目はそこのおっさんを刺してそのまま奪われたクナイ型の神器です。名前は【神の苦無威】です。能力は発動すると誰にも認識されなくなる完全隠密能力です。人に触れるとその人にだけ解除されます。あとなぜか刺突攻撃のときだけ異様に鋭くなります」
「隠密能力と刺突特攻能力ってわけね。で、次は?」
「はい、疾風の指輪はとても素早くなる指輪です」
「次は?」
「はい、軽業師の指輪はとても身軽になる指輪です」
「もう他に持ってない?」
「はい、持ってません」
黒ずくめの刺客男こと武田は死人のようなどこを見ているかわからない顔でグウェンの問いに答えていく。
いったいグウェンの部屋で何があったのだろうか。
いや、グウェンの顔がツヤツヤしていることからナニが起こったのかは大体察しがつくが。
「あんたなんでシゲちゃんの居場所がわかったのよ」
「はい、我々勇者が召喚された最初に渡された翻訳の首飾りには居場所を特定する機能が組み込まれています。それを利用してそこのおっさんがここにいることを突き止めました。三国同盟の同盟国以外に行った異世界人には全員に私のような刺客が送り込まれているはずです」
「刺客は全員あんたみたいな勇者なの?」
「いいえ。普通は勇者が来るようなことはありません。しかしおっさんがいるのはSランク冒険者の屋敷であることがわかった時点で通常の刺客では役不足との判断がなされ、私が派遣されました」
この男はなかなかに強かった。
神器も含めたその能力は暗殺に特化していると言っても過言ではない。
俺も最初の一突きが肩ではなく心臓に突き刺さっていたら死んでいたかもしれない。
たまたま虫の知らせで寝返りをうったおかげで生き延びることができたに過ぎないのだ。
こんな刺客が他の異世界人に送り込まれていたら少し心配だったが、さすがに他の人には通常の刺客しか送られていないようだ。
梶原さんは大丈夫だろうか。
俺が知っている梶原さんの神器は2つ。
一つは収納の指輪。
アイテムボックスのような神器だったはずだ。
そしてもう一つは女神様の空間で俺が選び損ねた革靴の神器。
あれの能力は聞いていないが、なんとなくあれはいい神器なような気がするんだよな。
なにせ酒やタバコ、どんぐりにアタリの神器を仕込む女神様だ。
革靴にアタリを仕込んでいてもおかしくはない。
しかしこの翻訳アイテム、発信機だったのか。
俺たち異世界人にはこれがないと言葉も通じないし、どうしたものか。
案外言葉の問題は簡単に解決した。
それというのも、首飾りを外してもなぜか言葉が分かったのだ。
推測だが、神巻きタバコによって強化された脳の働きによって無意識のうちに唇を読んで言葉を覚えてしまっていたのかもしれない。
便利な神器のおかげで助かったけど、なんだか人間離れしてきているような気もする。
しかし人間離れなんて人間本位な言葉を使ってはマルスとマルクルに怒られてしまうな。
おっさんは人間である前におっさんだ。
それを忘れないようにしたいと思う。
「何難しい顔してんのよ」
「いや、ちょっと決意を固めていた」
「なんの決意?」
「不退転の」
「なにそれ。馬鹿言ってないで行くわよ」
「はい」
薄暗い影の世界を平泳ぎで移動し、目から上だけを地上に出して外の様子を伺う。
こうしているとまるでカエルになった気分だ。
ゲロゲロ。
「この神器は結構やばいかもしれないわね。どこでも入り放題ね」
ヌルバ王国とルーガル王国の国境線には立派な関が築かれているが、そこを俺たちは影の中に入り込んで堂々と素通りしてきたのだ。
強盗も脱税も女風呂覗きだってラクチン簡単の犯罪者ご用達神器だ。
こんなアイテムがゴロゴロ転がっている世界では推定無罪の法治国家は無理だな。
可能性を潰していくような捜査では未知のアイテムや魔法による犯行の可能性が多すぎて潰しきれない。
私が法律だ、の階級社会のほうが相性はいいだろう。
「あたしはこれから実家に向かうけど、シゲちゃんはどうする?」
「どうしようかな」
グウェンの実家ってことはスクアード辺境伯の邸宅なわけだ。
グウェンを見るにそこまで堅っ苦しい家ではないような気もするけれど、それでもやはりルーガル王国四大貴族の家なわけだし多少の礼儀は求められるだろう。
この世界の礼儀作法なんぞ知らない。
日本ではとりあえず下座に座ってペコペコしてたらよかったが、さすがにそんな礼儀とも呼べないようなものは本物の上流階級相手に通用しないよな。
「作法とかそういうことを気にしているのなら別にいいのよ。パパも軍人気質だからそんなに気にしないと思うし」
「いや、やっぱり礼儀作法はちゃんとしなきゃいけない。今回は分かれて行動しよう。俺は王都のほうに潜り込んでみるよ」
「そう?シゲちゃんもパパと一緒でちょっと頑固ね」
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おっさんはおっさんなりのやり方で情報収集をしてみよう。
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