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おっさんずイフ
45.ナミコシ
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「おい新入り、こっち運んじまうぞ!」
「はい、すぐ行きます」
影潜りの腕輪の力によりまんまと王都に潜入した俺は、以前と同じように荷運びの仕事に就いていた。
前から思っていたがこの荷運びの仕事、王都内の荷物の動きを知ることができるので情報収集にはうってつけだ。
だがさすがに荷運びだけでは王宮内の情報を仕入れることはできない。
日雇いの荷運び人なんかが、王宮に運び込まれる荷物を最後まで運ぶことは許されないからだ。
だから俺はこの仕事をしながら王宮内に入ることのできる商会を探している。
おそらく一社だけではないと思う。
王宮には色々なものが必要になるだろうから、さぞ色々な商会が出入りしていることだろう。
俺が探しているのは賄賂が大好きそうな商人だ。
「今日はリース商会の荷物だからな。この商品は王宮に運び込まれるんだ。絶対落とすんじゃないぞ」
「わかりました」
早速リース商会という商会が王宮に商品を卸しているという情報を知ることができた。
あとはこのリース商会の会頭の人となりだな。
できるだけ悪徳商人が望ましい。
その道うん十年のベテランに運び人のソム爺さんにそれとなく聞いてみるとするか。
「ソム爺さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんじゃい、荷物の運び方のコツかい?いいか、絶対腰で持ち上げようとするんじゃないぞ。脚を使え。人間の身体の中で脚ってのは一番力が強……」
「いや、荷運びのコツは前に聞いたからいいよ。ちょっとこの今運んでる荷物の主のリース商会について気になっちゃって。王宮に商品を卸せるなんてすごい商会だよな」
「そうかの。ワシはあんましリース商会は好かんな」
「へぇ、なんで?」
「あの商会は裏じゃあ何をやっとるかわかったものではない。ワシも何度も見てはならんものを見てしまってひやりとした経験がある。いいか、絶対にあの商会の差し出す口止め料を断るんじゃないぞ。小銭をもらってへこへこし、大人しく口をつぐむっていうのが長生きの秘訣じゃからの」
「わかった。気を付ける」
ソム爺、俺にはめちゃくちゃペラペラしゃべっちゃってるけどいいのかな。
まあ俺への忠告のためなのだろうけど。
だがそのおかげでリース商会が悪徳商人であることがわかった。
悪徳商人はきっと賄賂が大好きだろうな。
もう少しリース商会について同僚たちから情報を集めてから、作戦を実行に移そう。
作戦実行のときはきた。
リース商会は真っ黒だ。
いや、リース商会以外の王宮に出入りしている商人たちはすべて真っ黒だった。
ルーガル王国終わってるな。
まあそれもそのはずか。
俺がこの街を出るときに出会った商人の話によれば、ルーガル王国は商人たちの財産を不当に差し押さえたり商品を安く買い叩いたりしていた。
そんなことをしていればまともな商人はいなくなってしまう。
残ったのは賄賂が大好きで貴族とのつながりが深い政治家気質の商人ばかり。
真っ黒クロスケなわけだ。
俺が王宮に入り込むためにはちょうどいいがな。
目標の商会は当初の予定通りリース商会。
リース商会に頼むのは別に難しいことでも悪いことでもない。
ただ俺を、王宮に紹介してくれること。
素性の知れない男を王宮に紹介するなんてことを普通のご用商会ならばするはずがないが、リース商会はあっさりOKだった。
「本当に王宮に紹介するだけで金貨10枚も支払うのであろうな」
「ええ、約束は守りますよ」
「一応先払いにしてくれないか」
「では半分だけ前金としてお渡しします」
金貨10枚といえば日本円にして10万円から20万円の間くらいだと思うのだが、そんなはした金で信用を切り売りしても大丈夫なのか心配になるレベルだ。
興信所に浮気調査も頼めないくらいの金額だぞ。
俺は金貨10枚の半分である5枚をリース商会の会頭に渡す。
「本気なんだな」
「ええ」
「だが紹介といっても、なんと言って紹介すればいい」
「凄腕のマッサージ師だと」
「マッサージ師?」
「ええ、申し遅れました。私マッサージ師のナミコシと申します」
「ナミコシ?変わった名前だな」
「ええ、私の故郷の神の名前なんですよ」
指圧というマッサージで奇跡を起こした神だ。
押せば命の泉湧く。
まさに神。
「ふーん、まあいいや。どんなマッサージが得意なんだ?」
「基本的には女性に施す美容関係のマッサージですかね」
男をマッサージなんてしたくないし。
「ほう、ならとりあえず私の妻にやってみせてくれないか」
「ええ、いいですよ」
「今呼んでくるよ」
会頭は妻を呼びに応接室のような部屋を出て上階の居住スペースへ向かった。
しかしあの会頭、たぶん50代くらいだよな。
なんなら60代に突入していてもおかしくない。
その妻もおそらく同じ歳くらいだ。
美魔女みたいな感じならばうれしいのだが、夫婦は似るというからな。
ちなみに会頭はお饅頭みたいにパンパンの顔をしている。
「お待たせしました。何かマッサージをしてくださるとか」
会頭の奥さんは予想通り、いや予想以上にでっぷりと肥えたキングサイズの奥様だった。
これは施術のし甲斐がありそうだ。
「はい、すぐ行きます」
影潜りの腕輪の力によりまんまと王都に潜入した俺は、以前と同じように荷運びの仕事に就いていた。
前から思っていたがこの荷運びの仕事、王都内の荷物の動きを知ることができるので情報収集にはうってつけだ。
だがさすがに荷運びだけでは王宮内の情報を仕入れることはできない。
日雇いの荷運び人なんかが、王宮に運び込まれる荷物を最後まで運ぶことは許されないからだ。
だから俺はこの仕事をしながら王宮内に入ることのできる商会を探している。
おそらく一社だけではないと思う。
王宮には色々なものが必要になるだろうから、さぞ色々な商会が出入りしていることだろう。
俺が探しているのは賄賂が大好きそうな商人だ。
「今日はリース商会の荷物だからな。この商品は王宮に運び込まれるんだ。絶対落とすんじゃないぞ」
「わかりました」
早速リース商会という商会が王宮に商品を卸しているという情報を知ることができた。
あとはこのリース商会の会頭の人となりだな。
できるだけ悪徳商人が望ましい。
その道うん十年のベテランに運び人のソム爺さんにそれとなく聞いてみるとするか。
「ソム爺さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんじゃい、荷物の運び方のコツかい?いいか、絶対腰で持ち上げようとするんじゃないぞ。脚を使え。人間の身体の中で脚ってのは一番力が強……」
「いや、荷運びのコツは前に聞いたからいいよ。ちょっとこの今運んでる荷物の主のリース商会について気になっちゃって。王宮に商品を卸せるなんてすごい商会だよな」
「そうかの。ワシはあんましリース商会は好かんな」
「へぇ、なんで?」
「あの商会は裏じゃあ何をやっとるかわかったものではない。ワシも何度も見てはならんものを見てしまってひやりとした経験がある。いいか、絶対にあの商会の差し出す口止め料を断るんじゃないぞ。小銭をもらってへこへこし、大人しく口をつぐむっていうのが長生きの秘訣じゃからの」
「わかった。気を付ける」
ソム爺、俺にはめちゃくちゃペラペラしゃべっちゃってるけどいいのかな。
まあ俺への忠告のためなのだろうけど。
だがそのおかげでリース商会が悪徳商人であることがわかった。
悪徳商人はきっと賄賂が大好きだろうな。
もう少しリース商会について同僚たちから情報を集めてから、作戦を実行に移そう。
作戦実行のときはきた。
リース商会は真っ黒だ。
いや、リース商会以外の王宮に出入りしている商人たちはすべて真っ黒だった。
ルーガル王国終わってるな。
まあそれもそのはずか。
俺がこの街を出るときに出会った商人の話によれば、ルーガル王国は商人たちの財産を不当に差し押さえたり商品を安く買い叩いたりしていた。
そんなことをしていればまともな商人はいなくなってしまう。
残ったのは賄賂が大好きで貴族とのつながりが深い政治家気質の商人ばかり。
真っ黒クロスケなわけだ。
俺が王宮に入り込むためにはちょうどいいがな。
目標の商会は当初の予定通りリース商会。
リース商会に頼むのは別に難しいことでも悪いことでもない。
ただ俺を、王宮に紹介してくれること。
素性の知れない男を王宮に紹介するなんてことを普通のご用商会ならばするはずがないが、リース商会はあっさりOKだった。
「本当に王宮に紹介するだけで金貨10枚も支払うのであろうな」
「ええ、約束は守りますよ」
「一応先払いにしてくれないか」
「では半分だけ前金としてお渡しします」
金貨10枚といえば日本円にして10万円から20万円の間くらいだと思うのだが、そんなはした金で信用を切り売りしても大丈夫なのか心配になるレベルだ。
興信所に浮気調査も頼めないくらいの金額だぞ。
俺は金貨10枚の半分である5枚をリース商会の会頭に渡す。
「本気なんだな」
「ええ」
「だが紹介といっても、なんと言って紹介すればいい」
「凄腕のマッサージ師だと」
「マッサージ師?」
「ええ、申し遅れました。私マッサージ師のナミコシと申します」
「ナミコシ?変わった名前だな」
「ええ、私の故郷の神の名前なんですよ」
指圧というマッサージで奇跡を起こした神だ。
押せば命の泉湧く。
まさに神。
「ふーん、まあいいや。どんなマッサージが得意なんだ?」
「基本的には女性に施す美容関係のマッサージですかね」
男をマッサージなんてしたくないし。
「ほう、ならとりあえず私の妻にやってみせてくれないか」
「ええ、いいですよ」
「今呼んでくるよ」
会頭は妻を呼びに応接室のような部屋を出て上階の居住スペースへ向かった。
しかしあの会頭、たぶん50代くらいだよな。
なんなら60代に突入していてもおかしくない。
その妻もおそらく同じ歳くらいだ。
美魔女みたいな感じならばうれしいのだが、夫婦は似るというからな。
ちなみに会頭はお饅頭みたいにパンパンの顔をしている。
「お待たせしました。何かマッサージをしてくださるとか」
会頭の奥さんは予想通り、いや予想以上にでっぷりと肥えたキングサイズの奥様だった。
これは施術のし甲斐がありそうだ。
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