チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

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2.乱世

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「ふぁっ!?なんじゃこりゃ……」

 目が覚めたら乱世だった。
 目の前を駆け抜けていく鎧武者たち。
 あちらこちらで刀や槍を打ち合わせて戦い合う大勢の人々。
 俺はそんな様子を林の木の陰から見つめる。
 いったい何がどうしてこうなったのか。
 昨日は普通に仕事から帰って眠った記憶がある。
 うん?なんか夜中に誰かに話しかけられたような。
 ボタンがどうとか。
 え、俺一人暮らしだよね。
 なんで夜中に誰かに話しかけられてんの。
 やだ、ちょっと怖い。
 ここがどこなのかも分からないし、家に帰れるのかな。
 そもそも21世紀に刀と槍で合戦って頭おかしいでしょ。
 なんなのかなこの人たち、未開の地の蛮族とかなのだろうか。
 日本にそんな地は無いから外国かな。
 いやでもなんか日本の鎧兜みたいなの着てるんだよな。
 混乱の最中にある俺だったが、突然鳴ったティトーンというメッセージアプリの着信音に少し冷静になる。
 スマホは繋がるのか。
 なら大丈夫、きっと誰かが助けてくれるはず。
 外国であっても日本大使館とかがあればなんとかなる。
 俺はスマホを取り出した。
 ん?電波来てないな。
 なんでメッセージ来たんだ?
 というか電池の表示が無くなってる。
 バグったかな。
 とにかくメッセージを見てみよう。
 
『おはよう。戦国時代はどうかな?トリップしたばかりが一番死ぬ確率が高いから気をつけてね。君にあげるチートはこのスマホです。電池切れも無いし破壊も不可能な不思議なスマホだよ。残念ながら現代と電波を繋いであげることはできないけれど、戦国サバイバルに役立ちそうなアプリがいくつか入っています。うまく活用して、これからの人生を楽しんでね。by神』

 え、戦国時代ってなに。
 スマホでどうすればいいっての。
 ちょっと何言ってるのか分からないな。
 by神って書いてあるけど、神ってあの神かな。
 神田さんとか神谷さんの略という可能性も無くはないけれど、残念ながらこんな楽しくないいたずらをする神田さんや神谷さんが知り合いにいない。
 とりあえずそのアプリというのを確認してみようかな。
 自分が入れた覚えの無いアプリは全部で4つ。

『よくわかる戦国時代』

『漫画で分かる日本の歴史』

『武芸十八般できるかな』

『ゴッドガチャ』

 待て待て、もしここが本当に戦国時代だったとしてこんなアプリ4つで生きぬけってことか?
 無理じゃない?
 俺は別に小さい頃から古武術習ってたとかそんなことも無い、普通の人間だよ。
 高校のときは水泳部だったから泳ぎは得意だけど、それも甲冑着込んで泳げといわれたら普通に沈んで溺れちゃうと思う。
 こんな俺でも戦国時代を生き抜ける可能性のある何かが、このアプリにはあるのだろうか。
 とりあえずどんなアプリか想像できる『漫画で分かる日本の歴史』を起動してみるか。
 普通に電子書籍のリーダーのようなアプリ画面が出てきた。
 1巻をタップする。
 1巻は紀元前4万年。
 紀元前からなんだ。
 どうやら1巻は人間が日本列島に移り住んだところらしい。
 日本の歴史をどこから勉強させる気なのか。
 そもそもこれ全部で何巻あんの?
 えっと一十百千万十万、約十万三千冊。
 ふむ、どこかで聞いたことがある冊数。
 痛っ、頭が。
 ダメだ、思い出せない。
 しかしこれ、紀元前から現代まであるのだろうか。
 生きてる間に読み終わるかな。
 絵柄は今風でポップな感じなので読みやすくはあるのだろう。
 俺もこういう感じの絵は嫌いじゃないので暇があったら読んでみよう。
 次は『よく分かる戦国時代』かな。
 うん?これはなんか検索エンジンが出てきた。
 戦国時代のことを何でも検索できる検索エンジンなのかな。
 試しに戦国時代 ご飯、で検索っと。
 お、出てきた。
 画像付きだ。
 うーん、あまり美味そうじゃないな。
 公家とかはお金が無くてあまり良い物を食べてないようだし、庶民は雑穀のお粥みたいなやつが多い。
 この時代だと商人と武士が一番良い物を食べているのかな。
 でもまだ醤油とかがあまり普及していないから、味付けは塩味が多いみたいだ。
 嫌だな。
 ここが本当に戦国時代なのだとしたら、俺もそんな飯を食べなければならないのか。
 というかそれすら食べられるのかな。
 俺スマホ以外は着の身着のままなんだけど。
 お金にできそうなものが無い。
 スマホはどう考えてもこの時代を生き抜くための生命線だ。 
 売るわけにはいかない。
 服とかって売れたりするのだろうか。
 俺が着ているのは上下綿の寝巻きで、こんなもの現代の古着屋では0円買取となるだろう。
 まあ時代が本当に戦国時代ならば、めずらしい洋服として売れるかもしれない。
 代わりの服よりも高く売れるようであれば、寝巻きを売って代わりの服を買えばいい。
 まあそれもこの合戦場のような場所から、無事に人の住む町にたどり着けたらの話だ。
 残りのアプリの検証だけは先に終わらせてしまおう。
 次は『武芸十八般できるかな』だな。
 名前からして、武芸の指南補助アプリみたいなものなのかな。
 俺はアプリをタップする。
 派手な筆文字で画面にアプリ名が表示され、スタート画面が出てくる。
 巻物が18個表示されている。
 1つをタップ。
 巻物が少し開き、そこには弓術と書かれていた。
 おお、巻物が全て開くと俺にそっくりの奴が着物を着て弓を持って登場した。
 モーションキャプチャ動画で教えてくれるのかな。
 基礎から何十項目かの訓練メニューがあるみたいだ。
 俺は基礎1をタップ。
 
「うぉっ、なんだこれ!」

 画面の中の俺が動くのかと思ったら、画面の外の俺の身体が勝手に動いている。
 メチャクチャ気持ち悪い。
 手には本当に弓を持っているかのような硬い感触。
 弦は重たく、腕がプルプルする。
 なんなんだこのスマホは。
 そしてこの動きはいつ止まるんだ。
 誰か助けてぇ。
 もう、腕が限界だよぉ。

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