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12.白米食べたい
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朝起きて、いつものように井戸に向かう。
上下水道のまだ配備されていない戦国時代の朝は、基本的に井戸から始まる。
もしくは厠。
俺は井戸から派なので、井戸に向かう。
まだ朝早い時間なこともあり、誰もいない。
この人の少ない朝の時間が好きで、昔から俺は朝早くに起きる。
時代は変わっても、人の稼働時間はそれほど変わらない。
この時代のほうが、少しだけ起きる時間が早いというくらいだ。
スマホで確認すれば時刻は朝の5時。
この季節はまだこの時間は薄暗い。
日の出と共に起き出す戦国の人々が起き出すのはもう少しだけ後になるだろう。
深く掘られた井戸の澄んだ水にロープの付いた桶を落とし、引き上げて水を汲み上げる。
桶には水が汲みやすいように縁に重りが付いているので、水が入っていなくても結構重たい。
それに水が入ればすごく重たい。
水を汲むのにもこれほど筋肉を使うのだから、戦国時代の人の身体能力が現代人よりも優れていることに納得だ。
人間は科学の力でどんどん文明を発展させていったが、身体は逆に退化していっているのかもしれない。
そんなインテリ風に見えて誰でもわかるようなことを寝ぼけた頭で考えながら、俺は桶の水で顔を洗った。
少しは目が冷めてきたかも。
なんか馬鹿が得意げに考えそうなことを考えていたような気がするが、あまり覚えていない。
今日も元気にガチャを引こう。
演出は赤。
しょんぼり。
今日はガチャ運が来てないな。
著しくテンションを下げながらも、俺はガチャの内容を確認する。
Sランク
なし
Aランク
なし
Bランク
・朱槍
Cランク
・米×10
・もち米×10
・中力粉×10
・固形ブイヨン×10
・かつお節×10
・コーヒー豆×10
・土鍋
Dランク
・ガムテープ
・孫の手
朱槍か。
Bランクということは普通の武器だな。
どうやら武器はAランクからファンタジーな武器になるらしい。
Bランクは普通の武器の域を出ないけれど、品質は最高級なのでいざというとき売って金に換えられるという意味ではAランクよりも嬉しいかもしれない。
あんな単分子ブレードみたいな刀とか売ったら大変なことになるからね。
Cランクの固形ブイヨンやコーヒー豆、土鍋なんかは地味に嬉しいな。
こちらに来てから出汁の効いた汁物とか全然食べてない。
即席であってもスープはありがたい。
コーヒーも当然飲んでないからな。
ただ、俺豆からコーヒー淹れたことない。
『よくわかる戦国時代』に載っているといいんだけど。
載っていたら載っていたで、それはもう戦国時代関係ないんじゃないかと思うけど。
あとは土鍋な。
今まで蓋のある鍋が出てくれなかったからご飯が炊けなかった。
毎日雑炊だよ。
そろそろホカホカご飯が恋しくなってくる。
どうせなら白いご飯が食べたいかな。
甘い匂い漂うモチモチ白ご飯におかか。
今日のメニューは決定だ。
しかしガチャから出る米は例外なくすべて玄米なんだ。
白いご飯が食べたければ外側の米ぬかを削って精米しなくてはいけない。
この時代でも白米が好きな人は精米して食べるのでやっているところを見たことはあるけど、実際にやるのは初めてだな。
俺は前にガチャで出た臼とスリコギを取り出し、臼に米を注ぐ。
あとはひたすらスリコギを米に突きこみ続ければいいはずだ。
俺はドスドスと米を搗き始めた。
しかし5分ほどで腕が疲れてくる。
長屋の前でよく米を突いている人は結構長い時間突き続けているんだけど、よくあんなに続くものだ。
俺は腰を伸ばし、少し休憩する。
するとガラガラと木戸を開ける音がして、お隣の善住坊さんが出てきた。
「善次郎殿、おはようございます。おや、米搗きか?顔を洗ったらワシも手伝うぞ」
「ああ、おはようございます。助かります」
ガチムキの善住坊さんが手伝ってくれるのならば心強い。
善住坊さんは井戸に向かい、手早く顔を洗って帰ってくる。
「では代わろう。これはこのくらい強く突くくらいのほうが美味い米になるのだ。そいやっ、そいやっ」
善住坊さんは米が潰れてしまうんじゃないかというくらい強い力でドスドスと突き始める。
こんなに強く突いてもいいんだ。
さすがに鍛えているだけあって、善住坊さんは10分以上も搗き続けた。
額には玉の汗が浮き、全身の筋肉が隆起している。
すごい肉体だ。
俺も少しは鍛えよう。
さすがの善住坊さんも15分くらい搗き続けると息が上がってくる。
「はぁはぁはぁ、せいやっ」
「そろそろ代わります」
俺は善住坊さんに習って、強い力で突き始めた。
しかしこれはすごい重労働だ。
玄米のまま食べる人が多いわけだ。
水車や風車という動力を用いない米搗きは、なにかと忙しい庶民には難しい。
これは俺も、毎食白米を食べるのは諦めたほうがいいかな。
「はぁはぁ、もう限界」
「善次郎殿、人数を増やしましょう。吉兵衛殿も呼んで手伝ってもらいましょう。たぶんそろそろ起きている頃でしょう」
ちょうどいいことに、吉兵衛さんの奥さんの文さんが長屋から出てくる。
「あ、文さん。おはようございます。吉兵衛さんって起きてますか?」
「おはようございます。主人なら今起きたところですよ。もう出てくると思いますけど。なにか御用でしたでしょうか」
「いえ、ちょっと米搗きを手伝ってもらおうと思いまして。もちろんタダではないです。報酬は搗いた米でも砂糖でも酒でもいいですけど」
俺はたまにこういった力仕事を長屋の人たちに手伝ってもらっている。
この人たちよりも圧倒的に身体能力が劣っている自信があるからね。
身体強化の魔法を使えばそこそこ底上げは可能だけど、あれはそんなに長時間保てない。
普段の生活で使えるほど便利な魔法じゃないんだよね。
それに長屋の生活は助け合いだ。
俺は力仕事が苦手だし、他の住人は貧乏だから食料や調味料が買えない。
ウィンウィンの関係だ。
あまり依存されたり頼りすぎたりするのは良くないとは思うけれど、適度に助け合うことはこの戦国時代を生き抜くのに大切なことだ。
「それなら、お味噌ってありますでしょうか。最近お味噌が高くて」
「ええ、ありますよ。じゃあ搗いた米と味噌でいいですかね」
「はい。ありがとうございます。主人を呼んできます」
すぐに寝ぼけ眼の吉兵衛さんが出てくる。
「おはようございます。米搗きなら某の得意とするところ。顔を洗ってすぐ手伝います」
「おはようございます。お願いします」
そこからは3人で交代で半日ほど搗き続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
まだ5月の終わりだというのに、3人とも汗だくだ。
これだけ頑張って数日分の米が5分搗きくらいの白米になっただけなのだから、割りに合わない。
「吉兵衛さん、約束の米です。あと味噌も。善住坊さんもありがとう。搗いた米持っていってよ」
「では遠慮なく」
「これはありがたい」
さて、さっそく搗いた米を炊いてみようか。
ちょうど昼飯にはいいくらいの時間だ。
この時代では贅沢だが、今日は特別にお昼ご飯を食べよう。
善住坊さんや吉兵衛さん、文さんも呼んでお疲れさん会にしよう。
俺は土鍋に搗いた米を5合入れる。
前にガチャで出た軽量カップがあるので、米と水の量を正確に量ることは可能だ。
飯炊きは水加減が命だから量っておかないとね。
ぎゅっぎゅっと米を優しく研いでいく。
水は、確か米1合あたり200ccくらいだったかな。
きっちり1リットルの水を入れ、土鍋の蓋を閉める。
あとは竈で火にかけるだけだ。
しかし飯炊きでは火加減も重要だからね。
はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな。
ぱっぱってなんだ?
強火?
最初は弱火で、途中から強火にすればいいってこと?
とにかく蓋を取らなければいいんだよね。
「あの、善次郎さん。それでは強すぎると思います」
「そ、そうなんですね。すみません、あまり経験が無いもので」
「代わりましょか?」
「すみません。お願いできますか?」
「はい。ご飯をご馳走になるのですから、このくらいはさせてください」
文さんはいい奥さんだな。
吉兵衛さんは幸せ者だ。
俺達は文さんの炊いてくれたご飯におかかを乗せて、白米を心行くまで楽しんだ。
久しぶりの白米は5分搗きくらいだし色もそこまで白くなかったけれど、不思議と現代で食べたものよりも美味しく感じた。
上下水道のまだ配備されていない戦国時代の朝は、基本的に井戸から始まる。
もしくは厠。
俺は井戸から派なので、井戸に向かう。
まだ朝早い時間なこともあり、誰もいない。
この人の少ない朝の時間が好きで、昔から俺は朝早くに起きる。
時代は変わっても、人の稼働時間はそれほど変わらない。
この時代のほうが、少しだけ起きる時間が早いというくらいだ。
スマホで確認すれば時刻は朝の5時。
この季節はまだこの時間は薄暗い。
日の出と共に起き出す戦国の人々が起き出すのはもう少しだけ後になるだろう。
深く掘られた井戸の澄んだ水にロープの付いた桶を落とし、引き上げて水を汲み上げる。
桶には水が汲みやすいように縁に重りが付いているので、水が入っていなくても結構重たい。
それに水が入ればすごく重たい。
水を汲むのにもこれほど筋肉を使うのだから、戦国時代の人の身体能力が現代人よりも優れていることに納得だ。
人間は科学の力でどんどん文明を発展させていったが、身体は逆に退化していっているのかもしれない。
そんなインテリ風に見えて誰でもわかるようなことを寝ぼけた頭で考えながら、俺は桶の水で顔を洗った。
少しは目が冷めてきたかも。
なんか馬鹿が得意げに考えそうなことを考えていたような気がするが、あまり覚えていない。
今日も元気にガチャを引こう。
演出は赤。
しょんぼり。
今日はガチャ運が来てないな。
著しくテンションを下げながらも、俺はガチャの内容を確認する。
Sランク
なし
Aランク
なし
Bランク
・朱槍
Cランク
・米×10
・もち米×10
・中力粉×10
・固形ブイヨン×10
・かつお節×10
・コーヒー豆×10
・土鍋
Dランク
・ガムテープ
・孫の手
朱槍か。
Bランクということは普通の武器だな。
どうやら武器はAランクからファンタジーな武器になるらしい。
Bランクは普通の武器の域を出ないけれど、品質は最高級なのでいざというとき売って金に換えられるという意味ではAランクよりも嬉しいかもしれない。
あんな単分子ブレードみたいな刀とか売ったら大変なことになるからね。
Cランクの固形ブイヨンやコーヒー豆、土鍋なんかは地味に嬉しいな。
こちらに来てから出汁の効いた汁物とか全然食べてない。
即席であってもスープはありがたい。
コーヒーも当然飲んでないからな。
ただ、俺豆からコーヒー淹れたことない。
『よくわかる戦国時代』に載っているといいんだけど。
載っていたら載っていたで、それはもう戦国時代関係ないんじゃないかと思うけど。
あとは土鍋な。
今まで蓋のある鍋が出てくれなかったからご飯が炊けなかった。
毎日雑炊だよ。
そろそろホカホカご飯が恋しくなってくる。
どうせなら白いご飯が食べたいかな。
甘い匂い漂うモチモチ白ご飯におかか。
今日のメニューは決定だ。
しかしガチャから出る米は例外なくすべて玄米なんだ。
白いご飯が食べたければ外側の米ぬかを削って精米しなくてはいけない。
この時代でも白米が好きな人は精米して食べるのでやっているところを見たことはあるけど、実際にやるのは初めてだな。
俺は前にガチャで出た臼とスリコギを取り出し、臼に米を注ぐ。
あとはひたすらスリコギを米に突きこみ続ければいいはずだ。
俺はドスドスと米を搗き始めた。
しかし5分ほどで腕が疲れてくる。
長屋の前でよく米を突いている人は結構長い時間突き続けているんだけど、よくあんなに続くものだ。
俺は腰を伸ばし、少し休憩する。
するとガラガラと木戸を開ける音がして、お隣の善住坊さんが出てきた。
「善次郎殿、おはようございます。おや、米搗きか?顔を洗ったらワシも手伝うぞ」
「ああ、おはようございます。助かります」
ガチムキの善住坊さんが手伝ってくれるのならば心強い。
善住坊さんは井戸に向かい、手早く顔を洗って帰ってくる。
「では代わろう。これはこのくらい強く突くくらいのほうが美味い米になるのだ。そいやっ、そいやっ」
善住坊さんは米が潰れてしまうんじゃないかというくらい強い力でドスドスと突き始める。
こんなに強く突いてもいいんだ。
さすがに鍛えているだけあって、善住坊さんは10分以上も搗き続けた。
額には玉の汗が浮き、全身の筋肉が隆起している。
すごい肉体だ。
俺も少しは鍛えよう。
さすがの善住坊さんも15分くらい搗き続けると息が上がってくる。
「はぁはぁはぁ、せいやっ」
「そろそろ代わります」
俺は善住坊さんに習って、強い力で突き始めた。
しかしこれはすごい重労働だ。
玄米のまま食べる人が多いわけだ。
水車や風車という動力を用いない米搗きは、なにかと忙しい庶民には難しい。
これは俺も、毎食白米を食べるのは諦めたほうがいいかな。
「はぁはぁ、もう限界」
「善次郎殿、人数を増やしましょう。吉兵衛殿も呼んで手伝ってもらいましょう。たぶんそろそろ起きている頃でしょう」
ちょうどいいことに、吉兵衛さんの奥さんの文さんが長屋から出てくる。
「あ、文さん。おはようございます。吉兵衛さんって起きてますか?」
「おはようございます。主人なら今起きたところですよ。もう出てくると思いますけど。なにか御用でしたでしょうか」
「いえ、ちょっと米搗きを手伝ってもらおうと思いまして。もちろんタダではないです。報酬は搗いた米でも砂糖でも酒でもいいですけど」
俺はたまにこういった力仕事を長屋の人たちに手伝ってもらっている。
この人たちよりも圧倒的に身体能力が劣っている自信があるからね。
身体強化の魔法を使えばそこそこ底上げは可能だけど、あれはそんなに長時間保てない。
普段の生活で使えるほど便利な魔法じゃないんだよね。
それに長屋の生活は助け合いだ。
俺は力仕事が苦手だし、他の住人は貧乏だから食料や調味料が買えない。
ウィンウィンの関係だ。
あまり依存されたり頼りすぎたりするのは良くないとは思うけれど、適度に助け合うことはこの戦国時代を生き抜くのに大切なことだ。
「それなら、お味噌ってありますでしょうか。最近お味噌が高くて」
「ええ、ありますよ。じゃあ搗いた米と味噌でいいですかね」
「はい。ありがとうございます。主人を呼んできます」
すぐに寝ぼけ眼の吉兵衛さんが出てくる。
「おはようございます。米搗きなら某の得意とするところ。顔を洗ってすぐ手伝います」
「おはようございます。お願いします」
そこからは3人で交代で半日ほど搗き続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
まだ5月の終わりだというのに、3人とも汗だくだ。
これだけ頑張って数日分の米が5分搗きくらいの白米になっただけなのだから、割りに合わない。
「吉兵衛さん、約束の米です。あと味噌も。善住坊さんもありがとう。搗いた米持っていってよ」
「では遠慮なく」
「これはありがたい」
さて、さっそく搗いた米を炊いてみようか。
ちょうど昼飯にはいいくらいの時間だ。
この時代では贅沢だが、今日は特別にお昼ご飯を食べよう。
善住坊さんや吉兵衛さん、文さんも呼んでお疲れさん会にしよう。
俺は土鍋に搗いた米を5合入れる。
前にガチャで出た軽量カップがあるので、米と水の量を正確に量ることは可能だ。
飯炊きは水加減が命だから量っておかないとね。
ぎゅっぎゅっと米を優しく研いでいく。
水は、確か米1合あたり200ccくらいだったかな。
きっちり1リットルの水を入れ、土鍋の蓋を閉める。
あとは竈で火にかけるだけだ。
しかし飯炊きでは火加減も重要だからね。
はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな。
ぱっぱってなんだ?
強火?
最初は弱火で、途中から強火にすればいいってこと?
とにかく蓋を取らなければいいんだよね。
「あの、善次郎さん。それでは強すぎると思います」
「そ、そうなんですね。すみません、あまり経験が無いもので」
「代わりましょか?」
「すみません。お願いできますか?」
「はい。ご飯をご馳走になるのですから、このくらいはさせてください」
文さんはいい奥さんだな。
吉兵衛さんは幸せ者だ。
俺達は文さんの炊いてくれたご飯におかかを乗せて、白米を心行くまで楽しんだ。
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