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11.ガチャ日和
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岐阜に到着した。
飴玉を献上したときの約束どおり、殿は織田信長から酒やら刀やら銭やらの大量のご褒美を貰ったらしい。
さすがにお給料アップまでは無かったようだ。
残念。
しかしこれで山内家の財政も一息つけるというもの。
俺も殿の屋敷の近くにある足軽長屋の一室を与えてもらった。
左隣が吉兵衛さんで、右隣は善住坊さんだ。
善住坊さんといえば、彼は誰かから依頼されて織田信長を狙っていたと思うのだが依頼主との関係は大丈夫なんだろうか。
殿は織田軍の武士で、俺はその家臣。
依頼主は十中八九織田軍の敵だろうに、これでは寝返ったと思われて大変なんじゃないだろうか。
まあ戦国時代ではそんなこと日常茶飯事か。
あまり気にしないようにしておこう。
俺は長屋の木戸をガラリと開けて朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
「ふぁぁあ~。今日はあまりいい天気じゃないなぁ」
5月も終わりになり寒さはなりを潜めはじめたが、空気が湿り気を帯びた日が多くなってきた。
あとひと月ふた月もすれば梅雨だからな。
まだそれほど雨は多くないが、これから増えてくるだろう。
戦国時代はシャワーとか無いから雨に濡れると気持ち悪いんだよな。
部屋干しすると洗濯物も臭くなるし。
ガチャで洗濯洗剤はなかなか出てくれない。
だから今は普通の石鹸を使って洗濯をしているのだが、最新のテクノロジーで作られた除菌力の高い洗濯洗剤が恋しくなってくる。
何気なく使っていたものが、とても恵まれていたのだと感じる今日この頃。
まあガチャがある分、戦国時代の中でも俺は恵まれているんだろうけど。
ガチャといえば、あれからスクロールが3つ出た。
サンダーランス、バリア、身体強化の3つだ。
俺は戦国時代でいったいどこに向かおうとしているのか。
勇者ヤマダにでもなればいいのだろうか。
まあ便利だから全部使ったけどね。
改めて分かったことなのだが、魔法というのは覚えれば覚えるほど強力になっていくもののようだ。
具体的には、スクロールを1つ使うごとに魔法10発分魔力が増える。
例えばスクロールを1つ使用したとする。
俺はファイアボールを覚え、ファイアボール10発分の魔力を得る。
次に2本目のスクロールを使用する。
俺はサンダーランスを覚え、魔力量はファイアボール10発とサンダーランス10発分となる。
合計でファイアボール25発分ほどだ。
更に3本目のスクロールを使用する。
俺はバリアを覚え、魔力量はファイアボール10発とサンダーランス10発、バリア10回分となる。
このようにスクロールに込められた魔法を10回使える分だけ俺の魔力量は増えていくのだ。
本当にどこに向かっているのか。
大賢者か、大賢者ヤマダなのか。
魔王とか討伐するのかな。
戦国時代で魔王といったら織田信長なんだけど。
殿の主君なんだけど。
どう考えても討伐したらまずいよね。
本能寺になっちゃうもの。
それは光秀の仕事だから。
謀反ダメ、絶対。
殿は徳川家康まで仕えなければならないんだから、謀反とかダメだよ。
今日はあまりお天気が良くないけれど、部屋干しよりはよさそうなので洗濯物を出しておくか。
作務衣だらけの俺の洗濯物を干していると、隣の長屋から吉兵衛さんの奥さんである文さんが出てくる。
俺と同い年の同僚、吉兵衛さんは妻帯者だった。
なんか、負けた気分だ。
奥さんは吉兵衛さんより3つ年下で、小柄で奥ゆかしい女性だ。
「おはようございます、善次郎さん。お早いのですね」
「おはようございます、文さん。年寄りのように早起きするのが昔から得意なもので」
「うふふ、年寄りだなんて」
文さんと軽く話して、長屋に引っ込む。
あまり人の奥さんと長く話すものじゃない。
吉兵衛さんはいい人だけれど、さすがに俺と奥さんが仲良さそうにしていたら不快に思うかもしれないからね。
それに俺はこれから、今日の分のガチャを引かなければいけないんだ。
今日はなんか、ガチャ運が来ている気がするんだよね。
俺は祈りながらガチャをタップする。
演出は虹色。
「来た!」
あまり大声を出すと隣に聞こえてしまう。
俺は口を押さえて喜びを噛み殺す。
声は抑えながらも、ニヤケながら土間で軽く踊る。
楽しい。
肝心のアイテムはどんなものかな。
Sランク
・神獣の卵(フェンリル)
Aランク
・拳銃(9ミリ口径)
Bランク
・万能薬×10
・湿布×10
Cランク
・海苔×10
・昆布×10
・りんごジュース×10
・一味唐辛子×10
Dランク
・歯ブラシ
・飴玉×10
おお、SランクだけでなくAランクもある。
やはり今日はガチャ運が来ていたようだ。
Aランクの拳銃も色々いじってみたいが、まずはなんといっても神獣の卵だろう。
端的に言って、なにこれ。
カッコ書きでフェンリルと書いてあることから、この卵を温めればフェンリルが生まれるということだと思うんだけど。
ペットにでもしろってことなのかな。
神獣ってしつけとか大変そうだな。
まずは長屋がペットOKかどうか確認しないといけないし。
めんどうなのでとりあえず収納の指輪に入れておく。
収納の指輪の中は時が止まっているようなので勝手に生まれてくることは無いだろう。
さて、あとは拳銃か。
前々からガチャにAランク9ミリパラベラム弾×1000とかがちょいちょい出ていたから、おそらくあるのだろうとは思っていた。
ついに本体が出たな。
本体はオートマチックの拳銃で、黒く塗装されたオーソドックスなタイプだ。
しかし取り説とか付いてないから、使い方がわからないんだけど。
なんという不親切設計。
こういうときは『よくわかる戦国時代』だな。
オートマチック拳銃の使い方とか、もはやなにが戦国時代なのか分からないが。
アプリは、ご丁寧に画像解説付きで拳銃の使い方を教えてくれる。
グリップの横の部分のボタンを押すと、弾倉が外れて下に落ちる。
「へー、こうなってるのか」
俺は以前出た銃弾を取り出し、弾倉に込めていく。
カチリカチリと1発ずつ嵌っていくのが、少し楽しい。
こういう地味な作業が昔から好きなんだよな。
拳銃の弾倉は、100発を悠に越えても銃弾を吸い込み続ける。
「やっぱり、普通の拳銃とは違うんだな」
この小さな弾倉に100発以上の銃弾が入るなんて、明らかに普通じゃない。
Aランクの武器というのはこういうのが多いな。
最初普通の武器だと思っていたら、意外にファンタジーな武器だったみたいな。
でも俺、アクション映画とかで素早く弾倉を交換したりするシーンが結構好きなんだけどな。
これでは弾倉を交換するような事態が起こるとは思えない。
弾倉は500発の銃弾を込めたら入らなくなった。
世界一不運なニューヨーク市警でも拳銃はそんなに撃たないよ。
飴玉を献上したときの約束どおり、殿は織田信長から酒やら刀やら銭やらの大量のご褒美を貰ったらしい。
さすがにお給料アップまでは無かったようだ。
残念。
しかしこれで山内家の財政も一息つけるというもの。
俺も殿の屋敷の近くにある足軽長屋の一室を与えてもらった。
左隣が吉兵衛さんで、右隣は善住坊さんだ。
善住坊さんといえば、彼は誰かから依頼されて織田信長を狙っていたと思うのだが依頼主との関係は大丈夫なんだろうか。
殿は織田軍の武士で、俺はその家臣。
依頼主は十中八九織田軍の敵だろうに、これでは寝返ったと思われて大変なんじゃないだろうか。
まあ戦国時代ではそんなこと日常茶飯事か。
あまり気にしないようにしておこう。
俺は長屋の木戸をガラリと開けて朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
「ふぁぁあ~。今日はあまりいい天気じゃないなぁ」
5月も終わりになり寒さはなりを潜めはじめたが、空気が湿り気を帯びた日が多くなってきた。
あとひと月ふた月もすれば梅雨だからな。
まだそれほど雨は多くないが、これから増えてくるだろう。
戦国時代はシャワーとか無いから雨に濡れると気持ち悪いんだよな。
部屋干しすると洗濯物も臭くなるし。
ガチャで洗濯洗剤はなかなか出てくれない。
だから今は普通の石鹸を使って洗濯をしているのだが、最新のテクノロジーで作られた除菌力の高い洗濯洗剤が恋しくなってくる。
何気なく使っていたものが、とても恵まれていたのだと感じる今日この頃。
まあガチャがある分、戦国時代の中でも俺は恵まれているんだろうけど。
ガチャといえば、あれからスクロールが3つ出た。
サンダーランス、バリア、身体強化の3つだ。
俺は戦国時代でいったいどこに向かおうとしているのか。
勇者ヤマダにでもなればいいのだろうか。
まあ便利だから全部使ったけどね。
改めて分かったことなのだが、魔法というのは覚えれば覚えるほど強力になっていくもののようだ。
具体的には、スクロールを1つ使うごとに魔法10発分魔力が増える。
例えばスクロールを1つ使用したとする。
俺はファイアボールを覚え、ファイアボール10発分の魔力を得る。
次に2本目のスクロールを使用する。
俺はサンダーランスを覚え、魔力量はファイアボール10発とサンダーランス10発分となる。
合計でファイアボール25発分ほどだ。
更に3本目のスクロールを使用する。
俺はバリアを覚え、魔力量はファイアボール10発とサンダーランス10発、バリア10回分となる。
このようにスクロールに込められた魔法を10回使える分だけ俺の魔力量は増えていくのだ。
本当にどこに向かっているのか。
大賢者か、大賢者ヤマダなのか。
魔王とか討伐するのかな。
戦国時代で魔王といったら織田信長なんだけど。
殿の主君なんだけど。
どう考えても討伐したらまずいよね。
本能寺になっちゃうもの。
それは光秀の仕事だから。
謀反ダメ、絶対。
殿は徳川家康まで仕えなければならないんだから、謀反とかダメだよ。
今日はあまりお天気が良くないけれど、部屋干しよりはよさそうなので洗濯物を出しておくか。
作務衣だらけの俺の洗濯物を干していると、隣の長屋から吉兵衛さんの奥さんである文さんが出てくる。
俺と同い年の同僚、吉兵衛さんは妻帯者だった。
なんか、負けた気分だ。
奥さんは吉兵衛さんより3つ年下で、小柄で奥ゆかしい女性だ。
「おはようございます、善次郎さん。お早いのですね」
「おはようございます、文さん。年寄りのように早起きするのが昔から得意なもので」
「うふふ、年寄りだなんて」
文さんと軽く話して、長屋に引っ込む。
あまり人の奥さんと長く話すものじゃない。
吉兵衛さんはいい人だけれど、さすがに俺と奥さんが仲良さそうにしていたら不快に思うかもしれないからね。
それに俺はこれから、今日の分のガチャを引かなければいけないんだ。
今日はなんか、ガチャ運が来ている気がするんだよね。
俺は祈りながらガチャをタップする。
演出は虹色。
「来た!」
あまり大声を出すと隣に聞こえてしまう。
俺は口を押さえて喜びを噛み殺す。
声は抑えながらも、ニヤケながら土間で軽く踊る。
楽しい。
肝心のアイテムはどんなものかな。
Sランク
・神獣の卵(フェンリル)
Aランク
・拳銃(9ミリ口径)
Bランク
・万能薬×10
・湿布×10
Cランク
・海苔×10
・昆布×10
・りんごジュース×10
・一味唐辛子×10
Dランク
・歯ブラシ
・飴玉×10
おお、SランクだけでなくAランクもある。
やはり今日はガチャ運が来ていたようだ。
Aランクの拳銃も色々いじってみたいが、まずはなんといっても神獣の卵だろう。
端的に言って、なにこれ。
カッコ書きでフェンリルと書いてあることから、この卵を温めればフェンリルが生まれるということだと思うんだけど。
ペットにでもしろってことなのかな。
神獣ってしつけとか大変そうだな。
まずは長屋がペットOKかどうか確認しないといけないし。
めんどうなのでとりあえず収納の指輪に入れておく。
収納の指輪の中は時が止まっているようなので勝手に生まれてくることは無いだろう。
さて、あとは拳銃か。
前々からガチャにAランク9ミリパラベラム弾×1000とかがちょいちょい出ていたから、おそらくあるのだろうとは思っていた。
ついに本体が出たな。
本体はオートマチックの拳銃で、黒く塗装されたオーソドックスなタイプだ。
しかし取り説とか付いてないから、使い方がわからないんだけど。
なんという不親切設計。
こういうときは『よくわかる戦国時代』だな。
オートマチック拳銃の使い方とか、もはやなにが戦国時代なのか分からないが。
アプリは、ご丁寧に画像解説付きで拳銃の使い方を教えてくれる。
グリップの横の部分のボタンを押すと、弾倉が外れて下に落ちる。
「へー、こうなってるのか」
俺は以前出た銃弾を取り出し、弾倉に込めていく。
カチリカチリと1発ずつ嵌っていくのが、少し楽しい。
こういう地味な作業が昔から好きなんだよな。
拳銃の弾倉は、100発を悠に越えても銃弾を吸い込み続ける。
「やっぱり、普通の拳銃とは違うんだな」
この小さな弾倉に100発以上の銃弾が入るなんて、明らかに普通じゃない。
Aランクの武器というのはこういうのが多いな。
最初普通の武器だと思っていたら、意外にファンタジーな武器だったみたいな。
でも俺、アクション映画とかで素早く弾倉を交換したりするシーンが結構好きなんだけどな。
これでは弾倉を交換するような事態が起こるとは思えない。
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